プロローグ
ピーピーと、アラームが鳴り響く。
あまりのうるささで、目が覚めた。
「う、うるさい、なに?」
俺、三条奏多は、アラームを止め、スマホを確認した。
日付は12月25日。
時刻は13時00分。
「やばい!!!」
速攻で起き上がり、家を出る準備をした。
なぜ俺が焦っているのか。
それは、今日遊ぶ約束をしているから。
待ち合わせはこの5分後。
そして、相手は幼馴染。
その相手とは喧嘩中。
今日は仲直りするためのおでかけ!
これを、遅刻すれば……わかるよね。
絶縁待ったなしだろう。
俺は無駄に広い家を、走り回った。
諸々の準備が終わり、パンを焼いた。
ちなみに、残り時間3分。
パンを咥えて、家を出る。
「行ってきます!!!」
いってらっしゃい。という言葉はこない。
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いけな〜い!
遅刻遅刻ぅ〜。
なんて思いつつ。
家のすぐ近くの公園が集合場所。
そこに、ギリギリ間に合い到着した。
「アンタ、寝起きじゃないでしょうね」
開口一番のセリフがそれだった。
彼女の名前は愛河ルル。
喧嘩してたから、こんなに刺々しい言葉ってわけじゃない。
これが正常運転である。
きっと、怒ってはない……はず。
「いや、ちがうよ! 楽しみだったよ!」
「あ、あっそ!? 別に私は楽しみなんかじゃなかったけどねぇ!?」
腕を組み、顔を赤くし、声量を上げて喋り出した。
ラノベをたくさん読んでるオタクの俺からすると、これは俗に言うツンデレ。
な訳がない。
ツンデレが現実にいるわけがない。
きっと、本当に俺のことがムカつくんだろう。
ルルは、他の人に対しては、優しい喋り方だし。
……でも、俺は彼女が好きだ。
もちろん幼馴染として。
些細なことで喧嘩してしまうことが多いけれど、ずっと1人の俺に愛想尽かさずいてくれるから。
そう考えると、これからも、仲良くしていきたいな。
「じゃ行こうか」
「ふ、ふん!」
ルルは、反抗的な声音で返事をしつつも、しっかり後ろをついてきていた。
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俺たちは、とにかく、はしゃぎまくった。
遊園地で遊んだり、
ルルの買い物に付き合ったり、
俺が好きなラノベをお勧めしまくったり。
そして、今は夕方だ。
高校一年生の俺たちには門限がある。
正確には俺たちではなく、ルルの家に門限がある。
彼女は遊び足りなそうに、しょぼくれていたけど、「また行こう」と言うと、元気を取り戻していた。
見た感じ、仲直りはできたと思う。
そして、もうすぐルルの家に着く。
今待ってる、この信号を渡れば解散だ。
青になるのを待っている間、隣のルルが口を開いた。
「まったく、私たちがカップルなんてね!」
「あぁ、あれね」
今日赴いたとある店でパフェを注文したら、カップル割引が適応されていた。
そのことを、何故か上機嫌に彼女が喋っている。
「奏多はどうおもった?」
ニッコニコの笑顔で聞いてくる。
「どうって……やめてって思ったかな」
「……」
ルルは美人。
スタイルも良いし、すれ違う人達が、振り返って二度見するくらいだ。
それに比べて、俺は平凡なモブ。
顔も普通で、身長も普通。
そこら辺にいる男子。
ルルからすると、俺なんかとカップルと間違われるのは死ぬほど嫌なことだろう。
彼女は、将来、俳優みたいな彼氏ができてそうだ。
う、想像したら、めっちゃ虚しくなってきた。
……自分の平凡さに。
「てか、信号長くない?」
あまりの遅さに、そう言った。
返事がこないルルの方を見てみると、
いつしか、先までの笑顔が消えていた。
「え、ルル? 大丈夫?」
体調でも悪くなったのだろうか。
「……い」
なにか呟いた。
「え? ごめん、なんて言った?」
聞き返すと、彼女は思いっきり息を吸い、俺に顔を向けて、
「アンタなんか、大っ嫌い!!!!!」
と、大声を出して走っていった。
……こういうことはたまにある。
突然の暴言。
まぁ、慣れてるから、
いつもなら追いかけず、メールで話す。
しかし、追いかけるしかなかった。
――信号が赤だったから。
トラックがきていたから。
「ルル!!!!!!!!」
俺は彼女の名を叫んだ。
今まで出したことがないような力で、突き飛ばした。
ギリギリ、トラックには轢かれずに済んだ。
ほっとしたその瞬間、
バンっ!!!!
と、ものすごい近くで音が聞こえた。
痛い。
痛い痛い痛い痛い、激痛だ。
……あ、痛くなくなってきた。
頭がふわふわとする。
「か、奏多!!!!」
走ってくる足音と、ルルの声が聞こえる。
けれど、そちらへ顔を動かせそうにない。
多分動かしたら、また痛くなる。
痛いのは、怖い。
ふぅ、大丈夫。
俺は死んでない。
そう、伝えよう。
「……」
喋れん。
終わったな。
死んだ。
絶対に死んだ。
近くで泣き声が聞こえる。
多分、幼馴染の泣き声。
あー。
悔いがあるな。
ラノベもっと読みたかった。
ルルの試合に応援に行きたかった。
あと…………。
両親が俺のことをどう思ってるのか、知りたかった。
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俺は、12月25日。
――死亡した。




