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7.乙女たちの聖戦 波及



「お聞きになった?この間の侯爵夫人のパーティでの話」


「すごかったんですってね!ダリア様がマリエラ様のドレスの裾を引き破ったんですって」


「違うわよ。ダリア様がマリエラ様の頬を平手打ちにしたって聞いたわ。マリエラ様ったら、ショックの余りその場に泣き崩れたそうよ」


「あら、私はダリア様が殿下は私のもの宣言をしたって聞いたけれど?それを聞いたマリエラ様が、私も殿下をお慕いしているんですって涙を流されてたって」


 あっという間に、ノルデア侯爵夫人主催のパーティでの一件は貴族界に広がった。

 しかも予想だにしない内容で。


(何をどう聞き違えたら、そんな話に聞こえるのかしら。根も葉もないどころか、完全な創作じゃないの)


 マリエラは、げっそりとしながら誰もいない王宮の庭園を歩いていた。

 偽の婚約者候補とはいえ、周囲の目を欺く為に連日王妃教育をこなしていたマリエラはほんの数日でうんざりしていた。

 王妃教育のその難しさたるや。それは、はるかにマリエラの想像を超えていた。


 男爵の悪事に加担するにあたって、令嬢としての振る舞い方やマナーなどは最低限叩き込まれた。それだって、孤児院育ちのマリエラには大変だったのに。


(あぁ、もうなんだか疲れた。こんな時に、ダリア様のお菓子があったら……。なんでダリア様はあんなに涼しげなお顔で王妃教育をすんなりこなせるのかしら。さすがだわ。私の最推しすごい)


 ただでさえ連日のハードワークで疲れ切っているというのに、先日のパーティでのお芝居の噂を聞いて、マリエラはさらに消耗していた。

   

 あのパーティで、ダリアとマリエラはが王子の婚約者を巡るバチバチのバトルを繰り広げた。


 そう、例えばこんな風に。


 ダリアが私の胸元を強調したドレスに対して、


「あら、マリエラ様。少々胸元が空きすぎているのではなくて。そんな媚びるような格好をするなんて、淑女として慎ましさに欠けますわ」


 と言えば。


 私はその棘のある言葉に、


「そんな……私は決してそんなつもりでは。あんまりですわ、ダリア様」


 よよよ、と涙を浮かべて見せれば。


「そのように人前で涙を見せるものではありません。もう少し、貴族に相応しい振る舞いについてお勉強なさったほうがよろしくてよ。それで王子のおそばに立とうだなんて、どういうおつもりかしら」


 とダリアがぴしゃりと言い放つ。


 とこんな程度のやりとりである。


 が、当然言葉の応酬だけで、手荒な真似はしていない。互いに指一本触れてもいないし、ただ睨み合って話をしただけである。マリエラはともかく、ダリアは仮にも伯爵令嬢なのだ。公衆の面前で他人に手をあげるなど、そんな振る舞いをするわけがない。


 なのに気が付けば、小突いただのドレスを引き破っただのと、大分攻撃的な内容にすり替わっている。

 

(噂って怖いわね。おかげで男爵は怒り心頭だし、王子はダリア様と口も聞かなくなってしまったし……)


 そしてこんな噂も、ワンセットで流れ始めていた。


「この間私、殿下とマリエラ様が一緒に王宮内の庭園をお散歩していらっしゃるのをお見かけしましたわ。それはもうお二人とも、一瞬たりともお互いから目を離されなくて」


「あら、私は手を握り合って見つめ合っていたと聞きましたわよ」


「違いますわ。お二人は熱く抱き合ってましたのよ」


 それを聞いたマリエラとダリアは、さすがに顔を見合わせて苦笑するしかなかった。

 まだ正式な婚約者でもないのに、至る所に一目のある王宮内で抱き合ったりするものか。もしそんなことが国王や王妃の耳に入ったら、一大事である。


 とはいえ、その噂のおかげでより一層この婚約者レースの行方は注目を集めることとなった。


 そしてそれは、ダリアが流したある情報によってさらに熱を増すことになった。




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