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13.三人でお茶会を

 


 マリエラの懇願を、王子は渋々受け入れた。

 ダリアが一緒でなければもう自分とは会えないとまで言われてしまっては、致し方ないといったところだろう。


 マリエラは、王子の単純さに感謝した。


 普通に考えて王太子妃の座を狙っている令嬢が、王子との逢瀬の席に同じく王子を狙っているはずの令嬢を呼びたがるわけがないだろうに。しかも相手は、王族からの信頼も厚く婚約者候補ナンバーワンと目されていたあのダリアなのだ。最も有力なライバルを同席させるものなど、いるわけがない。


(王子じゃなかったら絶対疑われるか、さっさと候補から外されてるわ、私。さすが王子……。今回ばかりはバカが功を奏したわね)


 その清々しいまでの単純さに、マリエラは王子にうっすら好感すら抱き始めていた。当然それは恋愛とかそういったものではなくあくまで珍獣の生態に感心するような感情だけれど。


「では次からは、ダリアにも声をかけるとしよう。……おい、ダリアはきっと母上の所だろう。見たら伝えておいてくれ」


 渋々といった様子ながら、すぐに側にいた護衛に伝言を言いつける。

 そして護衛の行動もまた、早かった。


「ダリア様は、先ほど王妃様との謁見を終えられましてお帰りになっている頃かと」


 それを聞いて、マリエラはすくっと立ち上がった。ダリアが王宮に来ているのならば、今すぐに探しに行けばいい。そうすれば、王子と無駄な時間を過ごさなくて済むではないか。


 すぐにダリアを探しに行こうとするマリエラを、王子が引き止める。


「マリエラ……、何も今日すぐにダリアを同席させなくても。今日くらいは二人で、というのもだめなのか……?」


 すがるような目でこちらを見てくる王子に、にっこり笑って手を取る。


「さ、王子。参りましょう。せっかくダリア様がいらしているなら、ご一緒にお茶にいたしましょう。ね?」


 ちょこんと首をかわいく傾げて見せれば、王子はデレデレと頬を緩ませてあとを付いてくる。

 王子の扱い方がだんだんわかってきたマリエラである。


 王宮の中はさすがに広い。王妃との会ったのなら帰りはこの回廊を通るはずだろうと王子に言われて、王子と二人ダリアが通りがかるのを待つ。

 護衛やメイドに任せてもいいのだが、あの部屋に二人でいることにこれ以上耐えられなかったのだ。暇つぶしにはちょうどいい。


(ダリア様も王宮にいらしてるなんて、やっぱり伯爵家は王族の方々とずいぶん懇意になさっているのね。でもこれでダリア様にもハンカチをお渡しできるし、王宮にきたのも無駄じゃないわ)


 最推しに会える嬉しさに、胸のときめきを抑えきれない。先日の庭園散歩では、緊張のあまり顔をあまり見ることができず、何を話したのかもよく覚えていない。お見合いでするような質問を投げかけていたことだけは、記憶にあるが。


(早くいらっしゃらないかしら。そろそろ通りがかる頃なのだけれど)


 回廊の先へ目を向けたまま、マリエラは推しが姿を現すのをただひたすらに待った。そこにようやく、ダリアが姿を見せたのだ。


 先に王子がダリアに声をかけた。格下である男爵家のマリエラが、いくら王子が一緒にいるからといって格上の伯爵令嬢であるダリアに先に声をかけるのは、失礼に当たるのだ。

 王子に声をかけられ、驚いたふうのダリアの視線がマリエラに向く。


「ダリア様、ごきげんよう。先日お会いしたマリエラでございます。覚えておいでですか?」

「ええ、もちろん。今日は王子とお茶会だと伺っていますけれど、こんなところでどうなさったのですか」


 怪訝そうな表情を浮かべるダリアに、マリエラは内心悶えつつもいつもの外向きの笑顔で答える。


「実は、王子にお願いしたのです。王子にお誘いくださる折には、ぜひダリア様にもご同席いただきたいと」


 マリエラの言葉に、ダリアの目がわずかだけれど驚いたように見開かれた。それも当然だ。というより、これが普通の反応だろう。


「えぇ……でも。しかし、それでは。なぜ私がお二人とご一緒に?」


 王子とマリエラの顔を交互に見ながら、ダリアは困惑の表情を浮かべている。なぜそんなことを私が言い出したのか、その理由が分からず疑問を抱いているのだろう。


「男の方と二人きりなんて、私慣れていなくて。もし同じ年頃の女性が一緒にいてくださったら、きっと殿下ともうまくお話ができると思いましたの。ダリア様ならば殿下ともお親しいですしとてもお優しい方ですから、きっと承知くださるかと……。でも、わがまま過ぎるでしょうか」


 マリエラはダリアに、というよりは王子が口添えしてくれるはずとの目論見で、王子にちらちらと視線を送りながら、懇願して見せた。案の定、王子はマリエラのためとダリアを説得してくれ、無事王子と二人きりの時間を阻止することに成功したのだった。


 



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