第1章 5話 ガラム王国軍元帥登場
アヤトはいきなりの紅白戦で指揮を執り圧勝してしまった。
そこに声をかけてくる一人の男。
さぁアヤトはどうなるのか!!
男は鎧をまといひげを蓄えていた。顔の見た目は50歳前後くらいだろうか。穏やかな笑みを浮かべているが鋭い目をしていた。
その男はある部屋へと俺を案内した。部屋には大きな窓があり、窓からは中庭なのか、花壇やらが見える。あとは長机が2台並べて置いてあった。そこに椅子が向い合せで4脚。そのうちの一つに俺が座っている。本棚もなく殺風景な部屋だったが一つだけ興味の引くものが飾ってあった。たぶんこの世界の地図だと思われた。全く見たことのない大陸があり大陸自体は一つしかなかった。 これは興味深い。
「わしはガラム王国軍元帥を務めますスピカルと申します。名前を伺っても?」
と鎧の男は俺の名前を聞いてきた。
「あ、すみません。こちらから名乗るべきでした。わたし、佐藤アヤトと言います。諸国を旅してまわっておりまして、軍事学を独学ですが勉強をしており、作戦の立案や兵器の開発などを得意としております」
少し嘘を混ぜた。軍事学なんてほとんど知らない。少しかじった程度だ。
「若いのにとても礼儀がいい。育ちがいいのがわかりますな。
さて本題に入らせてもらいたい。今ガラム王国は隣国のカイエン帝国と緊張状態にある。
作戦を考えるのはわしの仕事ではあるんだが、いかんせん最近まで戦争のセの字も無かったのでな、一人で考えるにはちょっと手を焼いていたのだ。ぜひアヤト殿にも一緒に考えてほしい」
「ぜひよろしくお願いします!」
スピカルの顔が少し弛んだ。
「おぉ!そう言ってもらえると嬉しいぞ。そういえば、アヤト殿先ほど兵器の開発と言っておったが、兵器というのはどういうものになるだろうか?実は前回の戦争、まぁ何十年も前になるのだが、その戦争の時は、魔法士が主に戦っておったのだ。今回もそうなるだろうとは思うのだが、戦える魔法士が今我が国にはほとんどおらんのだ。魔法が使えない兵士たちをどうにかして主戦力に引き上げたいと考えておるのだが、そういった兵器はあるだろうか?」
なるほどそういうことなのか。兵士たちを上手く使う方法と兵器…
「投石器や、大砲なんかどうでしょうか?」
「大砲…。大砲とはどんなものなのだ?」
「あ、そうか…。」
大砲っていうものないのか…
「大砲っていうのは、火薬を使って砲弾、鉄の玉のことなんですけどそれを思いっきり放つ道具ですね。遠距離攻撃が可能となります。投石器なんかも遠距離攻撃が可能になる兵器の一つです。これはテコの原理を使い大きな石を投げるものになります。石だけではなく火のついた玉なんかも投げることができるので敵に大きな損害を与えることができると思います。ただ、魔法士の特性をあまり私は知らないのでそこがちょっと心配ですが…」
「なるほど、それは今回の戦争も勝てるかもしれん。そういえばあの紅白戦で壁を作った魔法士への指示もアヤト殿か?」
「はい。一応プシペィさん、というかあの時にいた魔法士の能力はある程度聞いてから作戦を立てました」
「ふむ。そのプシペィという魔法士、そうそういない能力だぞ。正直バケモノ級の能力だ。話を聞いてみないとわからないが、地形を変えてしまうという魔法は初めて見た。あのとき出した壁の大きさ、魔法の発動の速さ、戦争になったら相当な戦力になるだろう」
「魔法士が全員ああいった大規模な魔法が使えるというわけではないんですね…」
「その通りだ。まぁ魔法についてはこの城の図書室でも使って調べてみるのもいいだろう。で、どうだ?わしと一緒に作戦を考えてはもらえないか?」
願ってもない言葉だった。
「はい!こちらこそよろしくお願いします!」
こうしてスピカルに認められ指揮官に就くことになった。スピカルに俺の事情を説明し、家が無いこと、金がないことを伝えると城内にある兵舎で一緒に暮らすこととなった。
兵舎は男女が別れていて、食堂もあった。食事も金のかからないメニューもあり俺としては非常に助かった。
この兵舎に暮らし始めて初めての仕事はスピカルの部屋で兵器の説明と開発のための図面を引いていた。
「さてアヤト殿、魔法士のことがよくわからないと言っておったが、本などは読んだかね?」
スピカルが口を開いた。
「いえ、ちょっとこの生活にまだ慣れていなく忙しくてまだ何も調べてないんです」
「なるほど。それでは少し魔法士のところに顔を出しに行きましょうか。」
と言ってスピカルが部屋を出ていく。思い立ったら行動が早い。俺も付いて行く。
「魔法士さんたちは今何をしているのでしょうか?」
ふと疑問が出る。
「ふむ。魔法も兵士の技と同じで訓練次第でその能力が上がることがある。だからその魔法士の訓練場に行こうと思っての。たぶん面白いのが見れるぞ」
そう言いながら初めて見たときの穏やかな笑顔を見せてくれた。
「たまには部屋の中にいるより外に出たほうが気分転換なるだろう」
訓練場では30人くらいの魔法士が何やら訓練をしていたようだった。地面には円が描いてありなにやら円の中に模様も描いてあった。
「魔法陣とかいうやつですか?」
素直に疑問を口にしてしまった。
「そうです。魔法陣を必要とする魔法があったり、魔法陣を使わずに発動できる魔法もあります。わたしの魔法も魔法陣を使わないですね」
そう説明してくれたのはプシペィだった。
「どうもあの日振りですねプシペィさん。プシペィさんも何か練習してるんですか?」
「私は地形を変えてしまう魔法の規模が大きすぎるのであまりちゃんと訓練ができないんです。だからいろんな人の訓練を見て何かできないかな? って思って」
と笑いながら応えてくれた。
「ほぅ。君があの魔法を使った子か。わしはスピカル。よろしくね」
「あ、はい! よろしくお願いします。プシペィといいます」
「さて、アヤト殿。魔法についてはプシペィさんに聞けばいいね。二人とも後でわしの部屋に来なさい。もうすぐ昼だ。わしは下町に出てくる。」
そういってスピカルが訓練場から出て行った。優しさで俺をここに連れてきたのだろうか?不思議な暖かさがある人だ。
昼食をとりに食堂に行くと兵士や魔法士が仲良くにぎやかにごはんを食べていた。俺はいつもの無料の食べ物を注文し、プシペィはまた見たことも無いものを食べていた。
「それは何?」
「これはイシヴィア鳥のソテーをパンに乗せたやつよ。結構おいしいわよ?」
「イシヴィア鳥…それは魔物なの?」
「え?そうよ?あなた知らないの?」
「あ、あぁ俺は魔物に縁が無い場所で育ったからよく知らないんだ」
「そうなの…。意外ね。あなた変わってるわね」
他愛のない話も終わり話は魔法士の能力になった。
プシペィの話をまとめると魔法士には固有の能力が備わっており、火を使う者や風を使う者、プシペィのように土の魔法を使う者などがいた。
基本的には、火、水、土、空気という四大元素からなるということだった。
その能力の規模、強さも個人個人によって違うが基本的にはこの世界の人は全員使えるという話だった。
そしてプシペィのような大きな規模の魔法を使える人はなかなかいないということだった。
ということはチェリオさんは火を使って料理してみせた。コカさんが部屋を掃除した魔法は空気の魔法で風でも使ったということだろう。
今までの経験を思い出すと色々と納得できるようになった。
「いろいろとありがとう。また聞かせてもらってもいいかな?」
「えぇ、いつでも。あ、スピカル様が部屋に来いとおっしゃっていたので行かないと」
「あ、そうだね、そろそろ行こうか」
スピカルの部屋に行くと扉は開けっ放しだった。
「スピカルさん、用心しないんですか?」
と聞くと
「わしのところに盗みを働くような命知らずがいるのならその度胸を兵士として買おう」
と大笑いして答えてくれた。どうもスピカルの人柄がつかめない。優しく豪快な人というのしかわからないな。
「おぉ、プシペィさんも来てくれたんだね。ありがとう。さてじゃあお二人早速だが戦争の話だ。あまりいい気はしないがね」
戦争という言葉を言われると空気がピリっとしまった。この二人と出会ったのも戦争という話があったからだ。否応にも力が入る。
「そんなに力を入れていてはこの先持たんぞアヤト殿。いきなりで申し訳ないが、プシペィさん今から君は魔法士の指揮官になってもらう。指揮のとりかたなんかはアヤト殿が教えてくれるだろう。二人とも頑張ってくれ」
「はい!!」
二人の声が重なった。
「良い返事だ。若いと元気があっていいな。さて、実はな、カイエン帝国が兵を挙げてこちらに向かってきているらしいのだ。遅くても10日後には全軍がこのガラム王国に接近するだろう。時間が無いだろうが最低限の準備をしてくれ。アヤト殿は作戦をわしと考えてほしいのと、兵器…そうさなぁ投石器なんかは割とすぐできそうだな。投石器を数台作ってもらいたい」
といつもの穏やかな笑顔を携えながら目を鋭くしながら俺に言ってきた。スピカル
の手には俺が考えた投石器の図案を見ながら言った。
「わかりました。がんばります」
緊張した状態だからだろうか時間が経つのが遅いのか早いのかわからなくなる。時間が経過するとともに俺はもしかしたら死ぬかもしれないという言いようもない不安が広がりつつあった。
死ぬ恐怖、不安そういった負の感情がイライラを募らせていく。今まで仲良くしてくれた人たちも死ぬかもしれないそれを守りたい。俺は生き残って元の世界に帰る!!その二つの思いだけが俺を動かしていた。
最後まで読んでいただきましてありがとうございます。
今回の話から徐々に物語は動き出していきます。
期待をあまりせずにご覧になってくれたらうれしいです。




