第1章 4話 ガラム王国・王都リック
ビターサン夫婦と別れたアヤト。
行商人と一緒に王都へ!
さぁアヤトはどうなるのか!!
ゆらりゆらり、ゴトンゴトンと馬車に揺られてひたすら舗装のされていない道を行く。
踏み固められた土が硬くなっているこの道はそんなに人は歩いているようには思えないが、馬車の往来は多かった。
「次でやっと王都のリックだ。ずいぶん長くかかったな。」
行商人は言う。聞くと今回の行商の旅はいつもより寄り道をしていたらしい。その分珍しい作物を手に入れられたらしいのだが、俺にとってはあまり関係のない話だった。
「あ、そうなんですね。マサラ村を出てから結構かかりましたね。」
行商人との旅は今日で2週間ほどとなっていた。次というのは明日のことだろう。今日はもう日も傾いてきていた。
「じゃあ今夜はお前さんとも最後の夜になるから、豪華な野宿でもしようか。」
豪華なのに野宿。この矛盾したような言葉にも2週間も行商人の仕事を手伝って同じ生活をしていれば当たり前の感覚になっていた。
「ここで今日は泊まろう。」
少し広くなった場所でテントを張る。そしてテントの近くで火を起こす。食べ物は売り物になるはずだった作物や畜産物に手を付けていた。
「寄り道して多めに商品を買っといたんだ。たまにはこれを食べても大丈夫だろう。さぁ食べようか。」
行商人の好意に甘え男二人の宴が開かれた。
「アヤト君にはこの2週間ちゃんと働いてもらったからね。これ、少ないけどお給料だよ。」
そういわれて小さな小袋をもらった。中にはコインが入っているようだ。
「ありがとうございます。あぁ、明日で最後なんすね。」
「あぁ、そうだ。この2週間はかなり助かったよ。いつも俺が一人でやってるからね。そんなに若くもないからもう体力がなくてきつかった。」
行商人さんはそう笑いながら話してくれた。
「そういえば、最後の夜にこんなことを聞くのはおかしいかもしれないんですけど、今この国ってどこかの国と戦争になりそうという話をマサラ村のビターサン夫妻に聞いたんですけど今の状況ってどうなっているのでしょうか?」
「ふむ。まぁ旅人のアヤト君には情報が回ってこないのも無理はないね。実は俺も行商でいろんなところへ行くときにガラム王国の外にも出ていって情報も集めたりするんだけどね。そこで聞いた話を俺なりに分析した結果でいいかな?」
そう言って行商人は教えてくれた。
今、ガラム王国と戦争をしそう国の名前はカイエン帝国。もともとこの世界の国々は平和にそれぞれの国を尊重しつつ暮らしていた。だが、カイエン帝国で何かがあったらしくカイエン帝国側からガラム王国に仕掛けているらしいということだった。
「何があったのか俺は知らんがカイエン帝国側で何かがあったみたいだな。俺もカイエン帝国の方まで買い付けに行ったりするが帝国の都の中には入れなかったよ。かなりピリピリしているみたいだね。」
と行商人は締めくくった。
「もう一つ疑問があるんですけど、かなり長い間平和だったということは軍隊とかってどうなっているんですか?」
「ガラム帝国のことしか俺にはわからないんだけど、もともと王族を守る衛兵がいただけでこの国には兵士というものがいないんだよ。だから各地の若い男や魔法を使えるものを呼んで急造の軍隊を作っている状況らしい。まぁ俺の考えをいうのであればそんな急造の軍隊で何ができるんだ?って話だよな。」
そう言って行商人は酒をあおっていた。
「ん~もしかして今のガラム王国軍ってちゃんとした作戦、指示を出せる人がいないんじゃないですか?そもそも兵器だってないんじゃないですか?わたしがそれをできるってなったらガラム王国は歓迎してくれますかね?」
「お、アヤト君ってそんなことできるの?若そうなのに。確かに頭よさそうだもんなぁ。できるんじゃない?俺も詳しくはわからないけど。まぁ王都についたら何かわかると思うよ。とりあえず今日は飲もう!」
そう行商人は言ってこの日は難しい話は無しにして二人で大いに飲んで食った。
次の日、眠い目をこすりつつ二人で王都のリックに馬車を走らせていた。
さて、王都でどうやって元の世界に帰る情報を集めよう。やはり王国のトップ連中と話せるような地位にならないと難しいだろうか。
まず金もそんなに無いからやはり軍隊に入り込んでみるのもいいかもしれないな。魔法使えないがまぁどうにかなるだろう。
そんなことを考えていると大きな塀に囲まれた場所が出てきた。中には大きな城がある。
西洋の城のような、ノイシュヴァンシュタイン城のような感じの大きくきれいな城が遠くからでも確認ができる。
「あれが王都リックだ。中のあの大きくて綺麗な白い城がターメ城だ。お前さんの目指す場所はわからんが城に行くには王族とかえらい人しか行けないらしいぞ。」
と行商人が言った。
「いやぁ、長かった旅も終わっちゃいますね。遠くまで有難うございました。」
「いやいやこちらこそだ。ほれ門をくぐる前に兵士に挨拶してから入るんだ。」
と言いながら兵士と行商人だと話し、中に入れてくれた。
道も石畳になり人通りも多くなった。王都といわれるだけある。ただ、道のところどころに兵士募集の張り紙が貼ってあり緊急事態なんだということが分かる。
「さぁ、じゃあここでお別れだな。」
と行商人が王都の噴水がある広場で馬車から降ろしてくれた。
「なんだ、この数日間楽しかったぞ。ありがとうな。なんかさみしくなるな。」
「アハハ。この前のビターサンご夫妻も同じような事をおっしゃってましたよ。別れはさみしいものですが、また会えますよ!行商人さんも無理せず頑張ってください。」
「おう!男同士の別れに涙はいらねぇな!またな!」
「はい!本当にありがとうございました!またお会いしましょう!!」
行商人としばらく別れ噴水のある広場を眺めていた。これまで見てきたこの世界の建物よりもずっと高く基本的に2階建て以上の建物が多かった。どの建物もほとんどくっ付いているような感じに見える。屋根伝いに歩けそうだった。どの建物も屋根から煙突が生えていてモクモクと煙を上げている。太陽もかなり高い位置にある。もうお昼なんだろう。広場のわきには露店が出ているいろんな食べ物が売っているようで多くの人が買い物に出ていてにぎわっていた。
さて、兵士募集も大事だがまずは腹ごしらえだ。露店に近寄ってみると色々なおいしそうな匂いがまじりあっていた。
「さぁ、いっらっしゃいいらっしゃい!昼飯なら俺の店だ!どうだいどうだい!お、そこの兄ちゃん変わった服着てるな!さぁどうだい!名物グルックの串焼きだ!」
威勢のいい声が俺のことを引き留めた。グルックってなんだ?でもこの匂い…絶対に美味い。
「一つください!あ、この大き目のやつください!おいくらですか?」
「おう兄ちゃん!この大きい奴か!よしよしいいぞ!ほれこのままもってけ!10クーロンだ!あ、食い終わったら鉄のクシはそこの入れておいてくれよ!」
そういって露店のおじさんは食べ終わったクシが入っている容器を指さした。この容器、竹っぽいな。さて、10クーロンとはどれくらいなのだろうか、ビターサン夫婦と行商人にもらったお金はどれくらいの価値なのか・・・
「ちょっとこの国のお金にうといんですが、これで足りますか?」
袋の中から銅色のコインを1枚出した。
「おう兄ちゃん!この国は初めてかい?じゃあ教えておくぜ!この国の金、クーロンはな、1クーロンコイン、100クーロンコイン、1000クーロンコインってのがある。銅色のコインが1クーロン。これが10枚で1クーロンだ!ちなみに、銀貨が100クーロン、金貨が1000クーロン。勉強になったな!んじゃあ10クーロンよろしく!」
「ありがとうございました!それじゃこれでお願いします!」
銅貨10枚を渡しグルックの串焼きを一本もらった。
「いただきます。」
匂いでわかる。胡椒がかかっているな。ということは…塩コショウか?口に入れてみる。
ビンゴ!塩コショウだ!肉に脂はのっていないものの赤身のうまさが際立っている。牛肉のみたいだ。ただ塩コショウをかけただけなのにこの肉が美味いんだ!
「美味い!これはめちゃくちゃ美味い!!おじさん!グルックって何ですか?めちゃくちゃ美味いっすよこれ!」
「兄ちゃんグルックを知らないのかい?本当にこの国初めてなんだな。よっしゃ教えてやる!グルックっていうのはこの国の東にいる魔物の種類の一つだ。おいしい肉なんだけどね凶暴な魔物なんだこれがまぁ一匹仕留めたらしばらく飯に困らないくらい肉付きがいいんだ。そして美味い!」
「ありがとうございます!もう一本もらいます!」
「おうサンキューな!美味い美味いって言ってもらえて気分がいいや!7クーロンで大丈夫だ!」
「ありがとうございます!いただきます。」
腹ごしらえも済んだ。さて兵士はどこで募集してるんだろうか。張り紙張り紙…
広場を見渡すとやはりいろいろなところに張り紙が貼ってあった。ターメ城前に受付があるようだ。さてどうやって軍に入り込んでやろうか。鉄のクシもさっき見たしたぶん鉄の加工ができるのかもしれない。大砲なんか作れるのではないか?歴史学を学んできた俺だ。もしかしたら何かできるかもしれない。ターメ城に行ってみるか。
ターメ城はとてつもなく大きな城だった。広場からも見える。近そうだったので歩いて向かってみるが全く近づいてる様子はなかった。それでもひたすら歩いていると城の門が見えてきた。人だかりができている場所があり屈強そうな男やいかにも魔法を使うであろう長い杖を持った人が集まっていた。
さてどうやって売り込んでいこうか…
受付には少し長い列ができていた。俺も並んで待っていた。自分の番が迫ってくる中、いまだに自分の売り込み方を悩んでいた。ん~悩みすぎるのもあまりよくないか…。よし。
自分の受付の番が来た。
「次の方どうぞ」
受付の女性が俺を促す。
「はい」
「ではまず魔法士か兵士か教えてください」
「兵士です」
「ありがとうございます。それではこちらに名前を記入していただき、こちらの広場でお待ちください」
用紙に名前を書き広場で待っていた。
「それではみなさん兵士募集に応募してくださってありがとうございます。では訓練場にご案内いたします。いきなりではありますが、今回の応募者と昨日の応募者で紅白戦を行っていただきます」
おいおいいきなりかよ…。全然自信ないぞ…。会場も少しざわついていた。不安がる者、楽しみにしている者、三者三葉だった。もちろん俺は不安がる者だ。
ここでみんなを統率して紅白戦に勝てれば何か上手いこといかないか?
「みんな!ちょっと聞いてくれ」
訓練場に行く道中歩きながらではあるが応募者の注目を得ることに成功した。
「いきなりの紅白戦だ。連携取れないところに昨日の応募者と対決。どういうルールかわからないけど、みんなの得意な攻撃方法を聞いておきたいんだけどいいかな?」
この声かけに快く応じてくれた。今日の応募者の内訳はこうだった。
魔法士5人兵士40人。魔法士は遠距離攻撃ができる者が5人中3人、地形を変えてしまう魔法を使える者が1人、傷の治癒が出来る者が1人。
兵士は40人すべてが何らかの武器での近接攻撃ができる者たちだった。
「じゃあいきなりで申し訳ないんだけど俺の言うことに従ってくれないかな?少しは勝てる可能性を上げたいんだ」
快く応じてくれた…とは言えないかもしれないが、みんな勝ちたいという気持ちがあったようだった。ありがたい。
「よし。じゃあ配置はこうしよう。兵士20人は前衛、もう20人が真ん中、後衛で魔法士全員。最初は全員で防御に徹する。そして魔法士の、地形を変えてしまう…すまない、名前を教えてもらえないか?」
「あ、あたしのことはプシペィって呼んで」
女の子だった。あまりコミュニケーションをとるのは得意じゃないのかもしれない。
「うん。ありがとうプシペィさん。プシペィさんに地形を変えてもらいたい。僕たちと相手を一切見えなくするくらいの壁を作ってもらいたい。できるだろうか?」
「うん。それくらいは簡単。まかせて」
「ありがたい。よし、そしたら次の作戦はこうだ。たぶん相手も同じく後衛に遠距離系の魔法士や治癒能力を持つ人たちがいるはずだからそこを叩いてほしい。魔法士の遠距離攻撃は壁の向こうに攻撃することは可能ですか?」
全員が出来る人だった。
「ありがとう。じゃあ最後。これで相手は混乱すると思うから混乱に乗じて前衛が一気に壁の左右から一気に叩く。そして真ん中は前衛のフォローと後衛のフォロー。一番大事なのは傷ついた兵士を後ろに運んで傷の治癒してもらいたい。勝とうこの紅白戦!!」
紅白戦のルールは特になく武器が木製だった。
結果は圧勝だった。相手の兵士たちは連携が取れているとは言えなかった。そして作戦を考えている者がいないようだった。加えて、魔法士がいなかった。
俺たちはある程度ではあるけど連携が取れていた。そしてプシペィさんの魔法が大きかった。あの壁の存在で相手は完全に混乱し魔法士の遠距離でもう心が折れていたようだった。
「指揮官は誰だ?」
訓練場から意気揚々と引き上げる形になっていた俺たちに声をかけてきた男がいた。
最後まで読んでくださってありがとうございます。
なかなか話が進まないと思いますが…
これから面白くなるかもしれないよ!!




