第3章 2話 カイエン帝国到着!
前回の「玄関を開けたら異世界でした」は、スピカルの父親に会うことになったアヤト。
魔法の力を存分に揮うアヤトは今回はどうなるのか。
「じゃあ指揮官殿と話をしたいときはこのお札に話しかければいいってことっすね?」
レタゲドは俺が渡したお札を不思議そうに見ていた。
「あぁ、そういうことだ。緊急用に使ってほしい」
「なるほど…ちょっと失礼します」
レタゲドは俺が渡したお札を持ったまま兵舎の隅に行った。
(指揮官殿聞こえますか?聞こえたら答えてください)
(あぁ、聞こえてるよ。戻ってこい)
(了解っす!)
レタゲドは不思議そうにお札を見ていた。
「これは便利っすね! 遠く離れても出来るんすか?」
「あぁ、まだ試してはないけど出来るみたいだよ。パップに貸してもらった本に書いてあったんだ」
「なるほど…伝説の魔法使いに、ですか…」
パップの名前を出すともっと不思議そうにお札を見始めた。
「まぁ、そういうことだ。んじゃ、頼んだぞ兵士指揮官代行! 俺とプシペィ、スピカルさんはカイエン帝国に行ってちょっとお話してくるから」
「いつ行くんすか?」
「あ、もう行くよ?」
レタゲドは不思議そうに俺を見た。
「そう何度も不思議そうに俺を見たりお札を見たりするな。一応パップに魔法を教えてもらっているからいろんなことができるんだ。とりあえず行ってくるからみんなをよろしくな」
「わかりました!!!」
レタゲドは俺に向かい敬礼をした。俺も敬礼をし、腕を戻すとレタゲドも腕を戻す。こういうところは律儀なやつだ。
それから俺はプシペィ、スピカルが待つ王都城門前に向かった。そこには大勢の捕虜たちも一緒にいた。
「おぉ!アヤト殿、少し考えたのですが、捕虜の者たちの頭の中を読むと言ってしまったら向こうの兵士たちは不安がるんじゃなかろうか?」
「どういうことでしょうか?」
と俺が聞くとスピカルは難しい顔で話し始めた。
「やはりこっちは敵国だ。敵国に頭の中を覗かれて自国を危険にさらすことになると考えると思うのだが…どうだろうか?」
「なるほど…確かにその通りですね。説得が必要かもしれませんね。カイエン帝国との同盟の話を出して説得してみるのも手かもしれませんね。やってみます。
あ、誰かカイエン帝国の場所を鮮明にイメージ出来る人いましたか?」
「アンタ、カイエン帝国軍の兵士たちの前よ?全員イメージできるに決まってるでしょ」
「あぁ、確かにそうですね。んじゃあ誰でもいいので一人ちょっと来てください。一瞬でカイエン帝国に行きますので」
俺は捕虜たち問いかけた。やはり俺の言っていることは真実味を帯びていないのか不安がって顔を見合わせていた。
「あぁ、じゃあ指揮官のネクターさん、いらっしゃいましたよね?ネクターさん?」
ネクターとはカイエン帝国軍の指揮官をしていた女だった。呼ばれてすごすごとネクターは出てきた。
「はい…お呼びでしょうか?」
「あぁ、そんなにビクビクしないでください。これからカイエン帝国に行って帝王と話をするだけです。もちろん捕虜の皆さんも一緒に帰ります。ただ、そのためにはカイエン帝国の場所と風景などの記憶がある人が必要なんです」
「な…なるほど…わたしでいいのでしたら…ただ、わたしに何かあっても兵士たちには手出しはしないでください」
「そんなことにはなりませんよ。大丈夫です安心してください」
「わかりました…」
「それではカイエン帝国のことを強くイメージしてみてください」
「はい…」
(ネクターさん。今あなたの頭の中に直接話しかけています。話したい内容を心の中で念じていただければ俺に伝わるのでまず何か念じてみてください)
(念じる…念じる…)
(今、念じる念じると考えていましたね?)
(あ!考えるだけでいいんですね)
(はい。その通りです。単刀直入に申します。今回カイエン帝国に行くにあたり、いくつか話したいのですがいいでしょうか?)
(はい。お願いします)
(まず、今回カイエン帝国に行くにあたり、俺と後二人しかいないというのは、争うつもりは一切ないということです。もちろんカイエン帝国で敵意をもって迫った来たときは応戦しますが…)
(はい…)
(たぶん不安だと思います。敵国が自国に来るというのは怖いことだと思います。ただ、今回は争うつもりはなくて、カイエン帝国とガラム王国の同盟を結びに行くつもりです。ただ、これはほかの人には絶対に内密にしてほしいんですが…)
(同盟ですか?)
(そうです。同盟です!この両国間で人の往来が自由となり、輸入輸出も自由とします!するとどうなるか?人、国、街が活気付くと考えています。今も活気にあふれる街がもっと活気付いて人々はもっと元気になる。素晴らしいと思いませんか?)
(それは…それが実現したら凄いことになりますね!)
ネクターの不安が徐々にとけ、この考えに賛同してくれているように感じた。
(そうです!そのために俺たちは今からカイエン帝国に向かうつもりです。どうか、協力してもらいたい。いかがでしょうか?)
(わかりました。協力します!ただ、何かあっても兵士たちには何もしないようお願いしたいです…)
(なるべくそうするようにします。ただ、こちらも敵国の真ん中に三人で入り込むことになるのでどうなるかわからないというのが本音です)
(そう…ですよね)
(ただ、絶対に傷つけないようにします。必ず)
(お願いします…)
(それではカイエン帝国のことをイメージしてみてください)
ネクターは目を閉じイメージをしていた。やはり怖がっている。イメージが少し雑だ。ちょうどテレビの砂嵐と帝国のイメージが交互に出てくるようなそんな感じだった。
「まぁ、大丈夫でしょう!帝国の近くに行けると思います。ネクターさん、もう大丈夫です」
「おぉ、さすがアヤト殿」
「ありがとうございます。それでは行きましょう!」
俺はスピカルの実家に行った時より大きな球をイメージした。大人数だ大きな球のほうがいいだろう。
ブーーーンという低い音がして城門よりも大きな黒い球が現れた。
「これで行けると思います。僕が先に行きますので僕が戻ってきたら一緒に行きましょう!」
俺は先に黒い球に入って行った。暗いトンネルのような場所に出た。少し遠い場所だとこうなるのか…奥を見ると光が見える。光の方向に歩いていくと徐々に見えてきた。草原…だな。見たことあるようで見たことのない草原。とても広い。少しガラム王国より暖かい気候のようだ。たぶんどこかに…
球の後ろ側に回ってみると遠くに大きな城が見えた。ちょうどインドのタージマハルのような形の屋根をしていた。とてもきれいな真っ白な城だった。
「あれが…カイエン帝国の都かな?もどるか!」
俺は黒い球のトンネルに戻った。球から顔を出すとプシペィ、スピカル以外の捕虜たちは不思議そうな顔で俺を見ていた。レタゲドと同じ反応だな…
「あ、たぶんこれで大丈夫だと思います!皆さん、お早く!」
この黒い球はいつまで存在するのかわからないので急いでもらいたかった。俺の言葉はやはり不思議なんだろう。捕虜たちは顔を見合わせて戸惑っていた。
「ネクター殿、先に行ってみてはどうか?指揮官が行くと兵士はついて行くぞ?」
「はい…わかりました…」
ネクターはスピカルに言われ一歩黒い球に足を踏み入れた。
「それではネクターさんあの光に向かって行ってください。あなたのイメージの場所とはいきませんでしたが、近い場所だと思いますよ」
「はい…」
ここまで来たら不安ではあるだろうが観念したのだろう。俺の言う通り光のほうに向かって行った。俺はトンネルに残り残りの兵士たちが来るのを待っていた。
ネクターがトンネルを抜けた後にほかの兵士たちにそのことを言うとすんなりと黒い球のトンネルを通ってくれた。スピカル、プシペィも通り俺もトンネルから抜けた。
(聞こえるっすか? 指揮官殿、無事着いたっすか?)
(あぁ、よく聞こえるかなり離れているはずだが大丈夫だな。よし、それではあとは任せたぞ)
(わかったっす!このレタゲド頑張るっす!)
(おう!)
レタゲドから通信が入り応じたが、どこかで黒い球に入るところを見ていたのだろう。
「レタゲドと連絡は取れるようにしたので問題は無いと思います。さて、たぶんあれがカイエン帝国の都ですかね?」
「あぁ、たぶんそうだろうアヤト殿。さてどうしようかね」
とスピカル
「ここまで来たはいいけどそのあとの計画はどうなっているのですか?」
とプシペィが聞いてきた。
「あぁ、この捕虜たちを出汁にちょっとお話をさせてもらうだけだよ」
俺は今悪い顔をしてるだろうなぁと思いながら自分の計画をザックリと説明した。まぁ相手の頭の中を読みながら交渉したらどうにか出来るだろう。
「あんたずいぶん悪役が身についてるじゃない」
「はっはっはアヤト殿は悪役も得意か! 交渉も任せてよいのか?」
「できれば任せてほしいです。たぶん、上手くいくかと思います」
「よし! それでは捕虜の兵士諸君!カイエン帝国に向かうとしよう!」
スピカルが捕虜たちに一声かけた。
それから全員でぞろぞろと帝国に向けて歩いて行った。先頭はスピカル、最後尾はプシペィ、俺は真ん中あたりで兵士たちに目を配りながら歩いて行った。
兵士たちは脱走することはなかったし特に逆らうことも無かった。俺とプシペィの魔法士と老兵と言えど剣を振るうと老いを感じさせない動きを見せるスピカルがいる以上身動きも取れないのだろう。
道なき道をしばらく歩くと家が点々と建っていた。カイエン帝国領土内の村だろう。そのまま立ち寄ることもなくぞろぞろと城に向かう。その時に村人からは
「おかえり」
と兵士たちの帰りを待っていた村人が多かった。たぶん、この村はのんびりとした気質の人が多いのだろう。そして戦争とはあまり縁がない村だったのだろう。
「そういえば、スピカルさん、カイエン帝国は今回の戦争の前にあった戦争に参加していたのですか?」
「ん?ないはずですぞ。カイエン帝国はガラム王国よりもかなり後に出来た国でな、先の戦争の際にはまだ国として機能して無かったはずです」
「そうなんですね…やっぱり本当に騙されて戦争仕掛けてきたんですね…」
「そうですな。まぁ捕虜と呼んでますが、この兵士たちもそれに従うしかなかったのでしょう。かわいそうな兵士だとわしは思いますよ」
スピカルは捕虜たちを見て悲しそうなさみしそうな顔をしていた。昔に何かあったのだろうか… 聞くのは今の仕事の後にしよう。
それから一行はカイエン帝国の城門前まで歩いた。時間が思った以上にかかり夕方になってしまった。
「何者か! この先に行くは許可なく入れないことになっている」
城門前の兵士が道をふさいできた。
「ふむ。許可は無いが、ガラム王国の使者が来たと中の者にお伝えいただきたい」
スピカルは冷静に兵士に伝えた。スピカルの言葉を聞いた兵士は顔の色を変えて中に入って行った。いよいよカイエン帝国帝王に会うことになるのか…気を引き締めねば。
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