第2章 最終話 王との接見
もう一人の転移者との闘いが終わり気を失ってしまったアヤト
魔法は解けたがプシペィ、レタゲド、スピカルはアヤトを探し出せるのか!?
そして福岡はどうなったのか!?
アヤトはどうなってしまうのか!?
目を覚ますと兵舎の自分のベッドにいた。心配そうな顔をしているプシペィ、レタゲドがこちらを見ていた。
「お、目が覚めたっすね!よかったっす!」
「アナタが飛んで行ってすぐにアナタがいなくなってどれだけ探したと思ってるのよ!?時間止めるなら一言くらい言いなさい!」
「はい…すみません…」
「でもあれっすね!敵の指揮官一人でやっつけちゃったんすね!さすがっす!!その隣でゲロまみれで倒れてたっすけど…」
レタゲドはそう言ったあとずっと笑っていた。
「あぁ、やっぱり夢じゃなかったのか。あいつを殺したのは俺か…てかなんで笑ってるんだよ」
「だって…本当に顔中ゲロまみれだったんすもん。笑わないほうが無理っすよ」
ゲロまみれ…嘔吐したその上に気絶し倒れた感じだろうか…悲惨な現場だったろう。敵の指揮官の首を刎ねた隣で自分の吐しゃ物まみれの自軍の指揮官。訳が分からん場面だろうな。
「俺はどれくらい眠っていたんだ?」
「アナタはあの場所からこっちに移動してきて水を頭からかけてゲロを落とし、それでも起きないからレタゲドに服を変えさせてベッドに置いて30分もしないうちに起きたわよ?」
「結構すぐだな…それにしても水掛けても起きれないとは相当だな…」
「何言ってるのよ。あんな大規模な魔法を使ったのだからしょうがないじゃない。少し疲れただけよ。寝たら元に戻ってるはずよ。」
それは初耳だぞ…魔法を使うと体力を消耗するのか…パップめ…大事なことを教え忘れてるじゃないか!
「なるほど。それは知らなかった。魔法は無尽蔵に使っちゃいけないんだな…」
「教わってなかったの!?私の魔法でも少しは疲れるけどあなたのやる魔法は規模が大きすぎるの。しかも何日も連続で大規模な魔法を仕掛けて…倒れるのも当たり前よ」
「そうだったんだな…うかつだった」
「レタゲド、スピカルやみんなはどうしてる?」
「はい!落とし穴に落ちた敵を説得してるっす!」
「説得?」
「そうっす!指揮官殿が打ち取った相手側の指揮官のことを伝えると観念した人もいたっすけど、戦う意思のある人もいるみたいっす。それで説得をしてるみたいっす。こればっかりは俺っちは難しいから居ても意味ないからこうしてここにいるわけっす」
「なるほど。ありがとうな。じゃあそこに行ってみよう」
と言うなり俺は掛布団をずらしベッドから出る。が、妙に涼しい。
「キャッ!ちょっとアンタ!」
と言って俺に背を向けるプシペィ。
「どうしたんだ?いったい何が…」
「あんた今裸よ!」
プシペィが背を向けたを教えてくれた。横顔から顔が赤くなっているのが見えた。
「すいません指揮官殿、服を着せないほうが楽かなぁと思って裸のまんま寝かせてました」
「まじか…」
俺はすぐに布団に戻り身体を隠した。
「そうしてくれるとありがたいわ。何よりそのぶら下がっているお粗末なものはもう見せないで!それと服はそこに置いてあったはずよ?」
お粗末な物って…俺はプシペィが指さす方法に目をやると確かに服が有ったが俺のではなかった。
「お、これが服か!誰のだ?」
「俺のっす!大きいと思うっすけど着といてください!」
「ありがとう」
服に身を包みベッドから出る。まだ足がプルプルと震えているが歩けないほどではないな。ズボンの裾を踏みながら手は袖から出ないでまるで小さい子のような服装で立つと二人はまた笑っていた。
「それじゃあ…まぁ行くか…」
その恰好のまま二人に笑われながら現場に行くとスピカルは困った顔をしながら説得を続けていた。
「だから!こっちとしてはカイエン帝国を襲うことはしない!そっちが攻めてきたから防衛措置として剣を振るったまでだ!」
巨大な穴の下に向かって怒鳴っていた。
「お疲れ様ですスピカルさん」
俺が一声かけると困った顔をしながらふり返った。
「おぉ!アヤト殿!もう大丈夫かね?ゲロまみれで倒れてたとレタゲドから笑いなら報告が上がっておったぞ!」
「あぁ、少し疲労感はありますが大丈夫ですよ。レタゲドには後で焼き入れと来ます」
「まぁまぁ、あいつなりに心配もしてたぞ?」
「それなら焼きは少しにしときます。それで状況はどうですか?」
俺が聞くと困った顔から呆れた顔になったように思えた。
「うむ。何か思い違いというかの。ガラム王国軍側から戦争を吹っ掛けてきてると向こうは言うんじゃ。どうしたらいいもんか困っておってな」
「なるほど。ちょっと向こうの大将の頭の中覗いてみましょう。それでわかると思います」
「おぉ!それは助かる。ありがとう! 早速頼むよ」
そういうと俺は穴の淵まで来た。
「どれが向こうの総司令官でしょうか?」
「うむ。あの一番偉そうにしている奴なんだが…なかなか頑固でな。ちょっとやってみてくれ」
「わかりました」
偉そうにしている人の頭の中を覗くと理由はすぐにわかった。
福岡という男に騙されていたんだ。そして催眠術のような感じで魔法がかけられているように思えた。これは解除しなければならない。周りの兵士たちを見てみても特に魔法がかけられている人はいないようだった。総大将だけ魔法で操ってた人がいた…。たぶんかけたのも福岡という男だろう。
あの男、死んでしまったが相当心に掛ける魔法が強かったと見える。なぜ俺に使ってこなかったのだろうか…。
なにかを隠していたような知っていたようなそんな気さえしてくる。
「アヤト殿どうですかな?」
頭をのぞくよりも考え事のほうが多くなってしまったようだ。スピカルが心配になって聞いてきたのだろう。
「あ、すみません。大丈夫です。向こうは俺が殺した男に騙されて、そして魔法をかけられている感じですね。魔法もあるのに、騙すこともするという用意周到というか狡猾というか…なかなか凄い洗脳のような気がします」
「なるほど。魔法はアヤト殿の得意分野だろう。お願いしてもいいか?」
「もちろんです」
「あ!いつからあんたの得意分野になったのよ!あたしだっているわよ?」
プシペィが口を出してきた。魔法が得意分野というところが少し気に食わないのだろう。
「得意分野って公言してるわけじゃないし、プシペィの魔法だって凄いじゃないか」
「おぉ、これはプシペィさん。申し訳ないな。うちの魔法士指揮官はおぬしだった。ただ、今回はアヤト殿に頼んでもよろしいか?」
「はい…ちょっと口出しはしたのですがうちの魔法士たちに彼よりも凄い精神魔法を使える人は…悔しいけどいないですから」
悔しさか怒りか情けなさか複雑な表情のままプシペィは退いた。
「では…」
俺は目を閉じ敵総大将に掛けられている魔法を解除した。あとは騙されている誤解を解けば問題ないだろう。魔法解除ですぐにでもわかってくれるはずだ。
「終わりましたよ。ただ、俺が殺してしまった男に騙されているのでその誤解を解かなければいけないですけど…まぁ大丈夫だと思います。魔法が解けているので。プシペィ申し訳ない。出しゃばりすぎだな」
「もういいわよ。あんたの魔法士としての力が私よりも上だってことだけ。今の見ただけでもバケモノじみているもの。そこはしょうがないってあきらめるわ。ただ、魔法士指揮官はやめないわよ」
「あぁ、プシペィさんが適任だろう。悔しい思いをさせていまったな。こちらも申し訳ない」
スピカルも頭を下げた。
「もう二人して頭下げないで!そんなのみじめになるじゃない。あたしはもう大丈夫だから。さぁ、スピカル様、説得よろしくお願いします。あたしはちょっとアヤトと話があります」
「はなし!?」
「ふふふ。それでは若い二人だけで、だな。わしはどうにか説得してみるよ」
スピカルはにやにやしながら説得に戻って行った。
「さて、アヤト。言いたいことはわかる?」
「俺は君と付き合うことはできない」
「そうじゃない!あんたの魔法についてよ!」
「あぁ、わかってたけどなんとなくな」
俺はすこし茶化した。
「もう!真剣に話したかったのに。あなたの魔法についてなんだけど魔法の解除ってアナタあの伝説の魔法使いに何されたの?!」
「あぁ、やっぱりそういう話だったのか。魔法の解除っていうのは難しいことなんだな」
「当たり前よ。しかも術者が死んでいるのに魔法が消えないっていうのは相当強い精神魔法のはずよ」
「なるほど。そうだったのか…。実はね、俺は何度も殺されていてね。これは前も話したと思うんだけど…」
「まさか…本当に殺されたの!?冗談だったんじゃないの!?」
「本当に殺されました。火、水、土、空気、時間、精神の6回殺されてそのおかげで治癒魔法も使えるようになった感じですね」
「そんなに…つらかったでしょう…それは知らなかったわよ…魔法っていうは死ねば強くなるっていうのは本当だったのね…」
「そうだと思う。パップは死ねば魔法が使えるようになるって言ってたけど…」
「そんなわけないじゃない!魔法に少しでもかけられたことがあったら使えるようになるの。わたしのように大規模に使えるのはある程度死に目にあっているから使えるけど…基本的にはその魔法にかけられた度合いによって使える魔法の規模とか強さとかが比例して強くなっていくものなの」
「パップめ…騙しやがって!」
少しパップに騙されて苛立ちを覚えたと同時に殺されて強くなったという事実は変えられないもので複雑な感情だ…
「本当に殺すなんてそのパップという伝説の魔法使いは凄いことするわね…」
「俺もそう思う…そうか…魔法をかけられる度合いに比例して魔法の力が強くなるということか…」
「そういうことね。まぁあたしの聞きたいことはわかったわ。これからどうなるのかしらね…」
「あぁ…カイエン帝国とガラム王国か?ん~騙されてしまっていても戦争を吹っ掛けてきた国だからな…王様次第じゃないのか?」
「そう…ね…」
「そういえば俺王様に会ったことないなぁ」
「あたしも無いわよ?ただ、今この立場に居るから会うことにはなるんじゃないかしら?」
プシペィの言葉はその通りになった。攻めてきたカイエン帝国の誤解をどうにか解いたスピカルは戦争が終わったとの報告をガラム国王に伝えに行くということで指揮官である俺とプシペィを連れ王様のいる玉座の間というところに案内した。
「元帥スピカル入ります」
スピカルはいつもより緊張した面持ちで部屋に入っていた。
「魔法士指揮官プシペィ入ります」
「兵士指揮官アヤト入ります」
スピカルが緊張しているとどうにもその緊張が感染してしまう。部屋に入ると今まで見たことのないような豪華絢爛な場所だった。玉座の間という名だとそれだけあるのかと思ってたが、相当な広さだった。
「これ、アヤト殿…キョロキョロするな」
小声でスピカルに注意された。
スピカルが真ん中で左右に俺とプシペィが並び玉座の前に立っていた。
「それでは報告を聞くとしよう」
声がする方を見てみると玉座からだった。玉座には人が座っていて、たぶん王様だろう。逆光なのか顔がよく見えない。
「はい。昨日の作戦でわが軍はほぼ戦わずして勝利し、敵軍全員を拘束しました。現在、敵軍全員を捕虜として扱っております。」
とスピカルが現状を報告していた。
「ふむ。なぜそのような措置をしたのか説明を」
「はい。兵士たちはアヤト殿によって打ち取られた敵軍指揮官に騙されていた指揮官に従い戦っていただけでした。しかし、このまま国に帰しても野盗になってしまうか、空腹と疲労で死んでしまう可能性もあります。なので、捕虜として扱うというよりも保護の意味合いのほうが強いです。」
「なるほど。それでは今回のカイエン帝国との交渉はどのようにしたらよいだろうか?」
「はい。それなんですが、私としてはもうカイエン帝国との無駄な戦いはしたくないというのが本音でございます。なので帝国側と停戦協定を結ぶのがよいかと」
「停戦協定か…なるほど。それではプシペィはどう思う?」
王はプシペィに聞く。
「はい。停戦協定でよいかと思います。わたし個人の意見としても争いごとはしたくありません」
「ふむ。それではアヤトはどうだろう?」
「はい。停戦協定もよいかもしれませんが…同盟国にするというのはどうでしょうか?同盟国にし、輸入、輸出をよりしやすく、人の往来をしやすくすることによってよりガラム王国にも資金が流れ込んでくると思います」
俺は思い付きでこんなことを言ってみた。そう、本当に思い付きだった。
「お!それは面白い!それじゃ同盟組んでみよう!向こうの国もこっちの国も民たちが往来したら今よりも活気づくかもしれんしな!いいぞ!アヤトとやら、お主にその役目をしてもらうぞ!」
おいおいマジか…そんな大役…
「おい!アヤト殿!返事をしないか!!」
スピカルにせっつかれる。
「はい!わかりました!」
完全に勢いで言ってしまった…スピカルの言葉にヤラれてしまった…
「おぉ!そうか!そうじゃ!スピカルとプシペィにも一緒に同行してもらおう」
王は上機嫌にそう言った。
「ちょっと待ってください王様!私とスピカル、プシペィが行くとなると軍はどうしたらいいでしょうか?」
「うむ。それならこの前の戦いで名を上げた者がおったではないか?確かレータゲードとか言ったか?その者を一時的に指揮官にしたらよいだろう。それじゃ、3人でいってこい」
王はそういうと玉座から降り玉座の間から出て行ってしまった。最後まで顔が見えなかった。
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次章は平和な話にしたいと思っております…
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