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玄関を開けたら異世界でした  作者: 鈴木寛大
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第2章 10話 穴掘り

負けることのできない戦いがそこにはあった。

確実に勝つ、そして敵の被害を最小限にするという提案をしたアヤト!!!

アヤトはどうするのか!?

「さて、それじゃ何からしよっか?」

 プシペィが俺に聞いてきた。

 俺とプシペィはその日のうちに作業を始めるために指定の場所、王都の近くの森の少し開けた場所に来ていた。

「うん。じゃあ手っ取り早く俺が穴開けちゃって…んでプシペィがそれを補強とかどうだろう?」

「そんな簡単に言うけど出来るのかしら?」

 プシペィには俺の魔法がどの程度か未だに疑問があるのだろう。

「ちょっとやってみるね」

 俺は目の前の地面に穴が開くイメージをした。土の魔法…地面に穴…巨大な穴…

 念じた瞬間、ズンッという衝撃が俺とプシペィを襲ってきた。地震とも違う感じたことない衝撃で身をかがめた。

「うわっ!!!」

 ほぼ同時に悲鳴のような声を二人で上げた。思わず目をつぶってしまう。

 目を開くと驚いた…自分でイメージしたものがそのまま出来た。ただイメージの規模が大きすぎた…相当な大きさの穴が出来てしまった。

「あんた少しは加減しなさいよ!こんな穴をどうやって隠すのよ!」

「そうだね。ちょっと大きい…ただ敵の軍を全て入れるにはこれくらいの大きさのほうがいいかな?って思ったんだよ」

「まぁ確かに全てを入れるのにはいい大きさなのかもしれないけど…もう一度言うわよ?誰がこの穴を隠すの?」

 プシペィは呆れた顔をしながら問う。

「ん~。プシペィはできないか?」

「そうねぇ…出来ることはやってみるけど…」

 俺の提案に不安そうな顔で答えるプシペィ。そのまま目を閉じる。しっかりと観察してみよう。

 ゴゴゴゴゴゴ…と土が意思を持つように集まってくる。ちょうど穴の真ん中に土の塊が出来ている。中心に渦を巻くようにどんどんと塊は大きくなっていく。

「ハァッ!!!」

 プシペィは土の塊が大きくなっていった瞬間に声を上げた。

 土は蓋をするように塊から平面に形を変えていった。

「あ…ダメだ…」

 プシペィは自分の魔法の限界を察したかのような声を出す。

 俺はプシペィの肩に手を置く。

「やりたいことはわかった。俺も一緒にやる」

「お願い…」

 俺はプシペィの肩から力を流し込むイメージをする。すると塊のままとどまっていた土が広がっていき完全に穴に蓋をした。

「ッハァ…ハァ…ハァ…あんた…とんでもない…注文…してんじゃ…ないわよ…」 

 プシペィは肩で息をしながら俺に文句を言ってきた。

「ん?まぁ最終的に蓋も出来たし大丈夫じゃないか?」

「ハァ…あんた…なんで…ハァ…平気なのよ…」

「ん?それはよくわからん。魔法を使った直後にぶっ倒れたことはあっても疲れることはないんだよね」

「ふぅ~…だいぶ落ち着いた。もう!あんたの流し込んだ魔力であたしの魔力も引っ張られちゃってかなり消耗しちゃったわよ…」

「魔力を人に流し込むとそういうこともあるのか?」

「本当に何も知らないでやってたのね…確かに魔力を人に流し込むと…ん~川をイメージしたらわかりやすいと思うんだけど大きな流れがあると小さな流れは引っ張られるじゃない?そんな感じよ」

「なるほど…それで引っ張られてプシペィの魔力が減ってしまったということだね?」

「そういうこと。あと一つ付け加えるならこんなに消耗するのは魔力の差が大きいと余計になるのよ…引っ張られる魔力も多くなる。同じくらいの魔力の人に流してもらえればこんなに消耗することはないのよ…あんたやっぱりバケモノよ」

 またバケモノ扱いされてしまった…

「ん?」

 土で蓋をした場所に目をやるとボロボロと崩れ始めていた。特に真ん中のほうが下にへこんでいるように見える。

「なぁ、アレって蓋がへこんでるように見えないか?」

 と俺はへこんでるあたりを指さす。

「そうね…へこんでるわね…ちょっと魔法をかけなおしてよ」

「え?俺が?!」

「アナタがやらないとアタシ魔力使い切っちゃうわよ!」

「あぁ…そうだね。やるよ…」

 蓋をするのに、あんなに疲れたプシペィを見ると気が進まないがやってみよう。土の蓋をイメージしてプシペィが魔法をかけたあたりを水平に保つように念じる。

 徐々に崩れていた土の蓋は元に戻った。

 だが、ここからが大変だった。魔法をかけてやめてみると徐々に土が崩れていく。これを何度か繰り返していた。

「ちょっと穴が大きすぎて蓋にしてる土が重いんじゃないかしら?」

「なるほど…そうみたいだな…あ…」

 ついに土の蓋が崩れ落ちてしまった。

「あぁ、また最初の蓋を作るところからやり直しね」

 プシペィがうんざりした顔で言った。

「ただやり直すのはちょっとあたしがつらいから…蓋を強化するのはどうかしら?蓋をした後に強化したら崩れにくいと思うんだけど…」

「ほほぅ…なるほど。じゃあ俺が蓋を作るから出来た瞬間にプシペィが土を強化する感じかな?」

「ハァ…やっぱりそうなるわよね…死なないようにしないと…」

 プシペィは半ば諦めたような顔だった。

「じゃあやってみる」

 と言って俺はそのまま土の蓋をイメージした。プシペィの魔法とは違い俺の魔法だと一気に土が蓋になってしまった。

「はい!プシペィ!」

「わかってるわよ!」

 プシペィは小声で小さく何かつぶやきながら土を固めていく。キシッキシと土と土が密着して固まっていく、そんな音がしていた。


「ハァ…ハァ…ハァ…」

 全身から汗を流しながら膝に手をついたプシペィは死んだような顔をしていた。

「大丈夫?」

 聞いても答えられないでいた。プシペィの息だけがそこに響いていた。

 プシペィの息が整うまでしばらくの時間がかかった。

「自分でもこんな規模の魔法がかけられるなんて思わなかったわよ。死にかけたけど」

 未だに死んだような顔をしながら文句とも自画自賛とも言えないことを言い始めた。

「うん。さっき肩に手を置いたときに俺の治癒魔法の応用で魔力を少しだけ強化してみたんだ。思い付きだったけど上手くいって良かった」

「なんて恐ろしい実験をいきなりしてるんだ!!下手すらあたしが死んでるわよ!」

「でも今生きてるから…。まぁ許して?」

「許せないわよ…あたしがこの国の魔法士指揮官なのよ…魔法で負けちゃ指揮官失格よ…」

 プシペィは悔しそうに絞り出すように口にした。

「でもしょうがないわよね。アナタ、あのDrパップの弟子になっちゃったんだもんね。勝てるはずがないわよ」

 カラ元気、作り笑いなんだってすぐわかった。日本で育った俺は空気が読めない人種ではない。こんな時に何を言えばいいのかわからない。

「ごめんね。ちょっといじわる言っちゃったかな。どうにもやっぱり悔しいもんは悔しいんだ。でも後ろ向いてもしょうがないから。アンタに魔力を分けてもらったしアンタの役に立つよう頑張るわよ。兵士指揮官殿」

「あぁ…」

 こんな時に何を言えばいいのかわからない。なんという言葉を言えばいいのかわからない。俺は完全に天狗になってたんだな…

「もう。困らせてごめんって。アンタはあの魔法使いの弟子なんだからこの世界で最強って言ってもいいんだからね?調子に乗ってなさい」

 明るい声で言うプシペィの言葉で何とか笑顔を作ることが出来た。

「あぁ、そうだな。調子に乗らせてもらう」

「バーカ」

 それから二人で少しの間笑っていた。

「あ、そういえばこの場所に敵を誘導するにはどうしたらいいんだろう?」

 俺はプシペィに聞いてみた。

「あぁ、それなら…結界とか使ってみたらどう?あたしは使えないけどアンタなら使えるんじゃないかしら?」

「あ、結界…もしかしたら使えるかもしれない!まだ時間はあるよな!ちょっと調べものしてくる!」

 それから俺は兵舎の自分のベッドに向かった。パップから貸してもらった本に結界の張り方とか書いてあるだろう。

 本にはお札の書き方や、結界の貼り方などが事細かに書かれていた。パップはどういう性格なんだろうか?本は几帳面に書き実技はどうも適当だった気がする…この本は本当にパップが書いた本なのだろうか…

 本をもって走ってプシペィの元に戻ると驚いていた。

「速ッ!!!何分も待ってないわよ!」

「お!待たせなくてよかった」

 ふと来た道を振り向いてみると土煙が上がっていた。やってしまった…全力で走るのはダメだった。

「あぁ~やってしまった…まぁとりあえずこの本!この本に結界の貼り方が書いてあった!!」

「気を付けないとアンタ…本当に驚かされるわ…この本?」

 と言いながらプシペィは本を手に取って読み始めた。

「これ…あの伝説の魔法使いからもらったの?」

「うん。魔法について書いてあるから読めって貸してもらったんだよね」

「これ、人に見せたらダメよ。この本、どんな人間でも魔法が使えるようになっちゃう。魔法陣やお札、杖、呪文なんか使って補助を使いながらでも強力な魔法を使えるようになってしまう。そういう本よ…」

「いいことじゃないか」

「バカねあんた。これは誰でも使えるって言ったでしょ?悪い考えの人でも使えるようになっちゃうの。世の中グチャグチャになるわよ。それはそうと、この結界の貼り方がわかったらあたしにもこれ読ませてもらってもいいかしら?」

「悪い人間じゃないならいいよ?」

「ふふふ。世界を混沌に陥れてやろう」

「意外とノリがいいよなプシペィって」

「あんたに追いつきたいだけよ。ね?少し読ませてね?」

「あぁ、大丈夫。さて結界を貼ろう!これならプシペィも出来るだろ?」

「これならって…まぁいいわよ。出来るわよ」

 一言多かった…

「よし!じゃあやろう!」

 穴をあけるよりも、穴に蓋をかぶせるよりも時間がかかった。完璧に貼るとなると骨の折れる作業だ。予定日数ギリギリに出来上がったのだが、二人ともへとへとになった。

「ようやく出来たわね。時間がかかったけど…これで完全に穴の上に誘導されてくれるはず!」

 プシペィは達成感なのか笑顔だった。

「あぁ、ぎりぎりだけど出来たな!!ほい」

「これ…いいの?」

「あぁ、悪い人間じゃないだろ?」

「ふふふふ。世界をぐちゃぐちゃにするより先にあんたに追いついてやる」

「心強いな魔法士指揮官殿」


読んでくれてありがとうございます!

いよいよ2章もクライマックスでございます。

よろしくお願いします

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