第1章 最終話 アヤト堕ちる
スピカルが士気を上げる演説をする。
本当にいよいよ戦いの火ぶたが切って落とされる。
初めての戦争に緊張を隠せないアヤト、プシペィ
陽気で明るいレタゲド。
さぁ彼らの運命は!?
文字通りの敗走。ガラム王国軍の兵士、魔法士たちは逃げるように王国に帰還した。俺たちのボロボロの様子を見て民衆たちも今回の戦いが上手くいかなかったのがわかったのだろう街中が暗い雰囲気に包まれた。
スピカルはすぐに王へ報告に行った。
「何もできなかった…」
誰かに伝えたかったわけではなかったがつぶやいてしまった。
「そうね。本当に…私も…こんなに…動け…なくなるなんて…。」
プシペィは悔し涙を流しながら吐き出した。俺の独り言を聞いていたのだろう。こんなに悔しいことはない。
「すまん。一旦帰るわ」
そういうと俺はその場から逃げるように兵舎には帰らず図面を引いていた部屋に行き、内側から鍵をかけた。一人になりたかった。
「くっそ…俺は何もできないじゃないか…」
吐き捨てるようにつぶやく。自分でもこんなに何もできないものかとイラついた。悔しくて情けなくて涙が止まらなかった。異世界転移者のことなんて頭になかった。今は悔しさと情けなさがじわじわと体の隅々まで広がっていくのが止められずにただただ涙を流していた。
気が付いたら2日が経っていた。悔し涙は流し続けると枯れるというのを初めて知った。悔しさ、情けなさは未だあるものの、ある疑問が出てきた。
カイエン帝国のあいつはどう見ても俺と似たような恰好だった。この世界でパーカーとジーンズを来ている奴なんて見たことなかった。あいつは異世界転移者だろう。俺一人だけじゃなかったのか…。考えてもみなかったことだった。あいつもいきなりこっちに転移した人なんだろうか?
疑問は消えることはなく次々と浮かんできた。
ドンドンドン!と部屋の扉が鳴った。
「いつまで閉じこもっているつもりかね?」
カピルスの声がした。
「いつまで落ち込んでいるつもりかね?部屋に入れてくれるか?」
ドアを開けると優しい顔をしたカピルスがいた。
「カピルスさん、俺…何もできませんでした」
「あぁ、そうさな。何もできなかったな。ただ、君のおかげでわが軍は生き残れたのだ。あの時の投石器への指示が無ければ戦死者も出ただろう。だがなアヤト殿、君おかげで敵を討とうと奮起してくれる者がいるのだ。だが君が指揮をしてくれないと我々はまた弱くなってしまうのだ。わたし個人としても君がいないとつまらん。そしてあの一介の兵士、レータゲードと言ったか、あやつはお前がいないこの2日間ずっと心配しておったぞ」
「ありがとうございます。俺、本当に情けなくて」
優しい言葉を掛けられるとまた涙があふれてきた。
「まぁ、初めての戦争だ、しょうがないだろう。今は泣けばいい。一つここにメモを置いておく。アヤト殿の役に立つと思う。あ、それと出来るだけ早めに帰ってこい。カイエン帝国は投石器のダメージで今はあの場にとどまっておるがいつまた復活するかもわからん。待っておるぞ」
そう言い残しカピルスは部屋を出て行った。相変わらず優しい人だ。メモを見ると地図のようだった。場所は王都リックの西の外れだった。
明日行こう。もう今日は疲れた。部屋から出て兵舎に戻る。道中誰にも会わずに兵舎のベッドへ行けた。ベッドに入りこむと一瞬にして眠りについたようだった。目が覚めるとあたりでは寝息とイビキの大合唱だった。まだ夜か…。
兵舎を抜け出しメモに記してあった場所に行ってみるとそこは小高い丘になっていて丘の頂上にはボロボロの小屋が一棟あるだけだった。誰もいないようだった。
ドアがあったので何の気なしに回してみると当たり前だが鍵がかかっていた。
「なんだいこんな夜更けに。非常識な奴だね」
いきなり声がした。老婆のようなしゃがれた声だった。いったいどこから…
声がした方向に目をやると飛び上がるほど驚いた。ドアの上にある石に顔があったのだ…
「なんだい、お前さんか、ほれ鍵は開けたよ入りな」
俺のことを知ってるのか?ていうかなんで顔が…
「あ…え?入っていいの?」
「入れって言ってるだろ。ほれ早く!」
「あ、はい。お邪魔します…」
顔のある石の迫力に押され小屋に入ることになった。小屋の扉を開けるとまた度肝を抜かれた。外から見ると確かにボロボロの小屋だったはずだが中は豪邸と言っていいほどの広さと内装だった。どうも驚かされてばかりだ…
「あぁ、やっと来たか。遅かったね。スピカルを操作してメモを渡したっていうのに。すぐ来なさいよ全く」
声がする方を見るとまた驚かされた小さな女の子がそこにいた。
最後まで読んでいただきありがとうございます!!
ついに物語は第1章が終わった感じです。
意外と長くかかってしまいました。
読んでくれた人本当にありがとうございます!!
これからも頑張りますのでよろしくお願いします!




