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厭世少女は、白馬の王子様の夢を見るか?  作者: 闇音 ヒビキ


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9/12

役割

「ええと……、その、劇、創作がやりたいです……!」

山崎さんの発言で、その手があったか、と思った。何の劇にするか、という話し合い中。意見は飛び交うが、中々決まらない。どうしたら面白いものになるか、沢山考えて、私なりに意見を出そうとしたが、なにぶん劇については未知だから上手く答えが出ずにいた。今ぼんやり出ているシンデレラ、レ・ミゼラブル、オペラ座の怪人…この三つからの多数決でいいのかな……?そう思った時の山崎さんの発言だった。

「創作……?」

「たしかに!それなら、みんなそれぞれ合った役割ができるね!」

「でも、誰が脚本書くの……?」

教室内で口々に反応がある。

「創作劇ということですね。いいと思います。ただ、時間があまりないので、その場合の脚本はどうしますか?」

「私たちで書きます!」

私の質問に、山崎さんと仲の良いクラスメイト二人が声を上げた。

「私たち、文芸部で、お話を書いたり、脚本を書く練習をすることもあるんです。だから、良かったら私たちにやらせてください!」

「みんなの意見を取り入れつつ、演劇部の先生にも相談して一週間で完成させます!」

その言葉に自然と教室全体で拍手が起こる。かっこいい。何かを作ろうという意志が、燃えている。

「では、このクラスの出し物は創作劇で決定します。いいですか?」

拍手が起き、はーいという声が聞こえてくる。

「では、この劇のリーダーは……」

私が、山崎さんを見る。山崎さんも、その視線に気づいて立ち上がった。

「私、この劇のリーダーやりたいです!」

「では、リーダーは山崎さんで、よろしくお願いします」

私がそう言った時、チャイムが鳴る。

「正座、礼」

ありがとうございました〜と揃った声が響く。私は山崎さんの方へ歩いていく。

「脚本やリーダー引き受けてくれてありがとう。一緒にいい劇にしよう!何でも手伝うからね!」

「蘭さん……。ありがとうございます。絶対に、いい劇にしてみせます!」

山崎さんはいい笑顔だった。私が離れた時、微かに聞こえた会話。

「麗奈さんて、あんなに凄い方なのに、優しいしフレンドリーだよね」

「かっこいいよね、本当に完璧超人ですごいな。私は、文章の中でしかああなれないから……」


それから、3日経ち、脚本は順調に進んでいるようだった。山崎さん達は、書きたいお話があるようで、それをクラスの特色に合わせて書いているらしい。これをみんなで演じれるなんて、幸せだ、と笑っていた。私のクラスには、たった一人演劇部の子がいて、裏方をしているらしく、機材やルールなどはその子の指示を仰いだ。山崎さんはその子と仲良くなったようで、実質四人で、この劇の根幹を作り上げていっている。


「それで、その、この劇の内容と役をプリントアウトしたので、見てください。裏方も書いてあります」

配られたプリントを見る。ストーリーは、攫われた姫と姫を助けに行く騎士の、ラブストーリーだ。騎士は姫のことが好きだけど、鈍感な姫は自分の気持ちに気付いていなくて、攫われて初めて寂しさ、愛しさを知る。そして元から持つ強い力で魔王に対抗する。攫った魔王も姫のことが好きで、自信に感情が向かないと知ってどんどん壊れていく。三人の気持ちの行方を描く物語だ。脚本はまだ完成していないようで、配役が決まってから少しセリフを変えたりするらしい。

「役は姫と、騎士、魔王、王様、出会う村人、敵の15人です。他に、音響、ライトなどの演出、衣装、小物、移動などの役割になります……!」

黒板に書き出される様々な役割。私はそれを眺めながら、そうか、劇って役者以外にも色々あるのか〜と考えていた。

「まずは役者を決めていきたいです!」

姫と騎士が主役……、あ、あと魔王も一応メインか。セリフがいくつかプリントに書いてある。姫のは『私の気持ちを量ろうとしないで。私の情熱は、私の中だけにあるのだから』。騎士は『僕は、姫のためならいくら傷付いたって構わない。覚悟はできている』。魔王は『姫が手に入らない世界なんていらない!壊してしまえ!』。これだけでどんな性格なのかよく分かる。このお姫様は、よくある物語の待つだけのか弱な少女ではないようだ。

「やりたい役がある人、いますか」

山崎さんがそう言うと

「はーい!」

と威勢よく手を挙げた生徒がいた。優美だ。

「出会う村人に踊り子がいたら面白そうだと思います!」

「踊り子……!なるほど。いいですね、今の通常の村人を一人踊り子に変えてみます。ありがとうございます」

山崎さんは脚本ノートに新たに決まったことを書いていく。まず決まったのは、踊り子。得意のダンスを活かした役を提案するなんて優美らしいや。

「はい!敵がやりたいです!すっごい魔法で戦いたいです!」

「はい!村人がやりたいです!インフルエンサーとかいたら面白くない?」

誰も手が上がらなかったらあげようと思っていたのだが、次々手が上がっていき、主役の三つ以外が埋まってしまった。

「えっと……姫と騎士と魔王は……、やりたい人いませんか?」

山崎さんが少し困ったように言った時、

「はい!」

グループの一人である咲菜が手を挙げた。咲菜は自他ともに認める乙女で、少女漫画や恋愛漫画が大好きだ。特にキャラクター同士の関係性が好きらしい。今回、ラブストーリーだし、自ら主役やるんだ、と思って私が感心しかけた時だった。

「姫役は、麗奈さんがいいと思います!」

えっ?え?私は驚いて目を見開く。

「ここに書いてある容姿、麗奈ぴったりだし、何より姫の気品があるし、似合うと思う!」

こちらを見てにこにこ笑う咲菜に、私は驚いた顔をすることしかできない。

「蘭さん、どうですか?」

「えっ、その……」

「麗奈さんのお姫様の姿見たいな〜」

「蘭さんが主役なら絶対いい劇になるよ!」

「麗奈、無理はしないでね!」

咲菜が固まっている私を見てそう言ったけど、あまり聞こえていなかった。私、劇なんて全然やったことないし、主役なんて上手くできる自信ない。でも期待してくれてる。るかも私の演技見たいって言っていたし。やるなら、ちゃんとやらなくちゃ。

「……はい。大丈夫です。私、姫役をします」

私ははっきりとそう言った。大きな拍手が贈られる。

「はい……!」

次に手が上がったのは、バスケ部をしている背の高い少女、早坂さん。早坂さんはボーイッシュで人気がある。

「じゃあ、私、騎士役をします!」

「えー!早坂さんが騎士!?とってもかっこよくなりそう!」

「この組み合わせが合法で見れるとか、神様ありがとう……!」

早坂さんの立候補で、教室中が湧く。

「じゃあ……」

歓声の中、少しだけ大きく澄んだ声が響いた。

「私が、魔王役をします」

そう言ったのは、山崎さんだった。


「るかあ〜〜〜!!」

私は生徒会室の扉を丁寧に開けて、開けた瞬間見つけたるかに走り寄った。るか意外誰もいないことが分かり、その場でしばらくばたばたと足踏みする。

「どうしたんですか?麗奈」

「あのね、あのね、なんか、劇主役になっちゃった」

「えっ」

るかは吃驚した顔をして、私の顔を見る。

「なんかね、まだ内容は言わないけど!お姫様役なんだ」

「お姫様。麗奈にぴったりじゃないですか」

「本当にそう思ってる?」

しばらく間が空いた。

「……思ってますよ。今の麗奈は、誰から見てもお姫様じゃないですか。傲慢さのない、完璧な」

「……そう」

「それはそうと、すごいですね。練習、忙しくなりそうなんですか?」

「そうだね、生徒会のこと、ちょっと任せる日あるかも」

「いいですよ、一年生も、もうだいぶ慣れたみたいですし、任せられますしね」

るかはそう言ってソファに座る。机には資料とコーヒーが置いてある。

「あら、何それ」

「これですか。……まあ、単刀直入に言うと、生徒会にも何か出し物をして欲しい……というような依頼書ですね」

コーヒーを飲みながら、るかが少し唇を尖らせた。

「ただでさえ役員の仕事があるのに、学年での出し物以外になんて、恐ろしいことを言いますね……」

「ま、まあ、一応一年生もいるし……?」

とは言ったものの私も今、劇のことしか頭にないし、ちょっと困るな。そう思いながら、なにかできることがないか考えていると

「麗奈、コーヒー飲みますか」

とるかがポットを指差した。

「え?ええ。シュガーある?」

「ありますよ、麗奈はたっぷり派でしたよね」

るかからコーヒーの入ったカップを受け取る。シュガーをたくさん入れて、口にする。うん、甘い。

「ここのコーヒー好きなんですよ。母がよく飲んでいて」

「へー。たしかに美味しい」

「それはシュガーすごく入ってますけどね……」

私はるかの隣に、当たり前のように座って、コーヒーを飲みながら、さっきまでるかが見ていた紙を見る。

「ん〜、何ができるかなあ。黒板アートとか飾り付けなら、一年生と被っちゃうし」

生徒会のほかのメンバーが入ってくる。

「あ、るかさん、麗奈さん、聞いてよー!私たちも別で出し物出さなきゃらしくて!」

「うん、今その話」

「ですよねー!!何する?」

「考えよ〜」

その日は、話に花が咲いてしまい帰るのが遅くなってしまった。結局、決まったのはスタンプラリーで、手の空いた人(主に1年生)が中心にやることになった。

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