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ルーキスの太陽 ~異世界の境界線、その手を離さない~  作者: 如月菫
第一部 終わると知りつつ、恋をした
6/7

第5話 聖剣に選ばれし勇者、人生ハードモード突入

 同じ日……。


 朝食抜きの沙弥とは異なり、賢斗はオーブリーと一緒に朝からしっかり食べていた。


「これ、おいしいッスね」

「口に合うならよかった」

「でも、姉さんにはどうかなぁ。ちょっと、味がこってりしすぎかも」

「姉上とは好みが違うのか?」

「俺は何でもいけるんですけど、姉さんはダメだと食べないんで。心配だなぁ」

「それじゃ、レオンにも気をつけるよう言っておくよ」


 朝食が終わると、オーブリーから勇者教育について説明を受けた。


「まず、聖剣を鞘から抜けるかどうかを試してもらう。この国の騎士は一応全員試したんだが、誰も抜けなかった」

「抜けなかったら帰れます?」


 冗談めかして言った賢斗が、台座に突き刺さった聖剣に手をかける。

 その瞬間……。

 カチリ、という金属音が響き、剣が白銀の光を放った。

 周囲の空気が一瞬、張り詰めた。手に吸い付くような感覚がある。


「……え?」


 重みを感じさせず、剣は滑らかに鞘から滑り出た。


「抜けたな。……ケント、お前が本当に、この国を救う『勇者』なんだ」


 オーブリーの真剣な眼差しに、賢斗は初めて自分が背負わされたものの重さを実感した。


(……これ、冗談じゃ済まないやつだ)


「それで、何をすれば?」

「剣術はできるか?」

「剣道なら少し」

「それはどのようなものだ?」


 説明すると、「多少は役に立つだろうが剣術の訓練は必要だな」と言われた。


「馬には乗れるか?」

「体験乗馬しかしたことないです」

「それじゃ、それも訓練が必要だな。魔の山の麓までは馬で行くから」

「イエッサー!」


 勇者の装備一式も支給された。騎士とほぼ同じだが、マントの色が銀色だ。


「この色、すぐ汚れそうですね」

「洗浄魔法をかけてやるから大丈夫だ」

「魔法? 魔法が使えるんスか?」

「ああ。ケントは使えないのか?」

「まったく。てか、俺の世界には魔法使える人いません。俺、魔獣王に勝てるのかなぁ?」

「騎士が攻撃して弱らせるから、ケントはトドメを刺すだけでいい」

「若様の初陣で手柄を立てさせるために、家臣がお膳立てするような感じですかね?」

「よくわからんが……まあ、そうだな」


 よくわからないのに肯定した。


「攻撃は魔法で?」

「剣と魔法だな」

「ファイアボールとか、サンダーボルトとか?」

「なんだそれ? ……火属性の遠距離攻撃、か?」

「そッス。あとは、アバダケダブラとか、彗星アズールとか?」

「聞いたことないな」


 ……ほとんど通じない。


「それで、トレーニングはどんなことを?」

「基礎的なトレーニングと実践だな。ちょっと服を脱げ」

「えっ!?」


 反射的に胸を隠す。


「筋肉の状態を見るだけだ」

「あ、そッスか。びっくりした」


 賢斗が上半身裸になる。


「引き締まってはいるが細いな。まだ鍛える必要がある」

「俺、帰る頃かなりマッチョになってますかね?」

「よくわからんが、たぶんそうだな」


「マッチョ」は通じていないようだが肯定された。


「オーブリーさんの筋肉も見せてくださいよ」


 賢斗がそう言うと、オーブリーも上半身裸になった。鍛え上げられた身体だった。文句なしにすごい。


「うわ、ガチだ……」


 賢斗がオーブリーの大胸筋の固さを確かめながら言う。


「これが騎士か……」

「長年鍛えているからな。ここまでとは言わないが、ケントもがんばれ」

「了解ッス!」


 騎士団の騎士たちに紹介してもらった後、ランニングや筋トレなどの基礎トレーニングに加え、簡単な剣術の指導を受けて終わった。


「はぁ~疲れた。毎日これって、身体もつかな……」


 夕食を食べながら、賢斗が弱音を吐く。


「大丈夫だろう。ケントはなかなか見どころがあるぞ。素質は十分だ」

「それならいいけど……がんばるしかないか!」

「ああ、期待しているぞ!」


「オーブリーさんは、どんな魔法が使えるんですか?」

「色々だな。洗浄魔法などの生活魔法や、回復魔法とかだ」

「攻撃のときはどうやって?」

「剣に魔力を乗せる。遠隔攻撃も可能になるし、直接攻撃する場合も威力が増す。属性によって強度は異なるが」

「火魔法とか氷魔法とか?」

「そうだ。ケントの世界には魔法がないのに、なぜそんなによく知っている?」


 言われてみればそうだ。


「おとぎ話とかに出てくるんですよ。こんな能力があったらいいなって、誰かが考えたのかな。それか、昔、こっちの世界から転移してきた人がいたとか……」

「そんな話は聞いたことがないが、絶対にないとは言えないな」


「ところで、姉さんの護衛騎士、すっごい美形でしたね」

「あぁ、レオンか。『ルーキスの太陽』なんて呼ばれていてな、ものすごくモテるぞ。だが、そのせいで女嫌いだ……ほとんど例外なく」

「女嫌いに護衛されて、姉さん平気かな? いじめられたりしないですかね?」

「それはないな。任務はきっちりこなす男だ。…………ケントは姉上のことが本当に心配なようだな」

「まぁ、俺のせいで巻き込んじゃったし……。それに……俺、姉さん大好きなんで!」

「そ、そうか。姉弟が仲良いのはいいことだな」


 ……その発言が、後に騎士団中へと広まることになる。

 ……本人の知らぬところで。


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