開戦⑥
今日は休みなので、投稿を頑張りました。
ただ、野暮用も入れられていたので、忙しかったです。
公国部隊と獣人女性兵団と思われる混成部隊の切り込み突撃は、アバロン前線のみならず、影響をもたらした。
どこが前線になるか分からないことを叩き込んだ。
斬り込まれた塹壕陣地では、精神的なダメージを考慮して、独立歩兵団は第二陣に下がり、他の部隊が陣地に入り、再攻に備えた。
結論からいうと、攻撃はあったが、明らかにタイミングを外した攻撃であった為にいたずらに被害を受けるだけで撤退した。
「彼らの突撃は報告がされていなかったのでしょうか?」
「いや、そんな事はないはずだ。 上が彼らの行動に作戦的な成功もないと、判断したために第二陣がなかったと思われる。」
「やはりそうですか・・・。 不憫ですね・・・。」
「仕方ないと言いたくはないが、そういう扱いになるな・・・。」
「彼らの決死の突撃も初打のみで終わるとは・・・。 どれだけ連携が取れていないのだか・・・。」
「こうも考えられる。 ロケット攻撃と爆撃で後方の基地や集積地を破壊をしている。 その為に前線に持ってこられる物が少ないから攻め手にかける・・・とも。」
「しかし、それでは勝機を脱します。 輸送は作戦成功の要。 軽んじるなど・・・。」
「それはアバロンだからだ。 他国では軍の物資は国ではなく、軍自体が調達をしているらしい。」
「それでは・・・。」
「あちらはそうなのかもしれん・・・。 憶測だがな。 実際に切り込み部隊の兵員は、水筒以外は食料を携帯していなかった。 それよりも弾薬や爆薬、手製爆弾を携帯していた。 たぶん、近くに来た際に最後の食料を食べきってからの突撃をしたと思われる。」
「報告を上げます。」
「任せた。」
自分の憶測程度ではあるが、彼の憶測を裏付ける証拠はいくらでもある。
その為、部下に命じて本部に報告を上げることにした。 しかもそれが獣王国連合が作戦の足が遅くなっている原因だと、アバロン本部は気が付くのに時間がかかった。 本来は最初に考えられる事案であるアバロンには、イレギュラーな事案だったためだ。
<獣王国>
先の公国捕虜と自国の女性剣士支隊の突撃は、本部に届いていたが、第二陣の本部は後続を送ることに腰を上げれなかった。 本国司令部からは作戦の失策を問われる使者が来たが、彼らにも言い分はあった。
理由は物資の決定的な不足。 行軍時の休憩地点の少なさからの兵士の疲労だった。
兵士は獣人だけではない。 普人も参陣しており、彼らは獣人より体力はない。 その為、休憩を取らないと持たないが、設定した移動距離は獣人設定であった為に途中で動けなくなる者が続出し、彼らを馬車や獣人兵が担いで移動する羽目になり、余計に遅れた。 その上、食料共々の物資が不足しているために休憩が出来ても水だけという事態が、続いた。 しかし、参陣した貴族はそうはいかないので、彼らが優先された。 影響で兵士は割を食い、出されなかった。 移動距離も疲労も溜まり、後続部隊の編成命令が来た時には、ほぼ編成不可能で編成したなけなしの部隊も待ち構えたアバロン軍に粉砕された。
「やはり間に合わなかったか・・・。」
「はっ・・・。 やはり彼らの突撃報告から14時間も経ってからの編成と移動では間に合いません。」
「そうだな・・・。 悪戯に被害だしただけだ。 だが、出さないという訳にもいかんしな。」
「はっ・・・。」
第二陣は獣王国歩兵団が2つと公国軽歩兵隊の2個小隊を始め、本国貴族5名とその私兵隊、エルフとドワーフの義勇兵が参加していたが、貴族とその私兵隊は自身で物資を持ってこなかったために移動は警戒だった。 疲労も比較的に少ないという理由から第二撃は彼らに依頼をしたが、捕虜たちの後では・・・とか、美しいものではないとか、汚れるのは嫌だとか言って、出陣しなかった。 その為に疲労している兵士達から出さねばならず、予想通りに大損害を被った。
しかし、彼らは悪びれる事もなく、軍の物資を勝手に徴用し、食料をはじめとする備品を持っていった。
彼らに対する不平不満が、余計に連携を取れなくする要因となった。
「司令官!我らは体が臭くなった!今すぐに貴様の兵士に命じて、湯船を用意しろ!」
「伯爵殿、ここは戦場です。 湯は用意しますので、体を拭うだけで我慢してください。」
「ならん!貴様は男爵の分際で我に逆らうか!貴様らは我らの言う事を聞いていればよい!確かに申し伝えたぞ!すぐにやれ!」
貴族とその取り巻きは、作戦の継続を検討している所に欲のみで言いたい事を言っているだけの彼らに嫌気がさしていた。
司令官のみならず幕僚、司令部要員も怒りが溜まっていた。
「司令官、どうなさいますか?」
「・・・やらねばなるまい。 彼らでも本国では上級貴族。 彼らがあることない事を書いた手紙も本国ではまかり通る・・・。 ただし、女性兵士や士官は向かわせるな。 欲望のはけ口に使われるのはまっぴらだ。」
「畏まりました。 ご心中、お察しします・・・。」
「ありがとう・・・会議を続けよう・・・。」
司令部用の陣幕では、今後を検討する殺伐とした空気が流れていたが、貴族側私兵団用の敷地は多くの貴族の関係者が、蝶よ花よの物見遊山の様な状態で貴族が連れ込んだ女性の声がより不満を高まらせていたのに貴族達は、気が付かなかった。
しかし、彼らはこの時は気が付かなかった。
第二陣自体が消えてしまう事態になる事に。
しかもそれが彼ら以外がいなくなる事になろうとはその時は気が付かなかった。
<アバロンサイド>
第二陣の空気は、偵察部隊の活躍で分かってきていた。
その空気や状況がわかるにつれ、前線指揮官の報告が正しい事が分かってきた。
「まさかそのような事とは・・・。」
「義父殿、過去にもこのような事が?」
「・・・。 悲しい事にな。 辺境を担当しているような貴族はない。 ただ、本国にいる法衣や領地持ちの中には、このような事をする輩は多く居る。 我らも貴殿らが来るまではそこまでではないが、しているのだ。 貴族のメンツの様な物だ。」
「それで最前線にでる兵士達に不満を持たせては駄目と思いますが・・・。」
「勿論、慰撫も行う。 食事の量を増やしたり、酒を振舞ったりをする。」
「彼らはしていないようですが?」
「・・・。 たぶん、国から出ているものだと思っているのだろう。 だから自分らは良いと。」
「確認もしないとは・・・。 終わってるよ・・・。」
偵察部隊からの報告は、アバロン首脳陣も目を疑うものだった。
食事は具の殆どないスープに固焼きパン一個、少しの付け添えがつく程度。
ちなみにアバロンだと、お玉一杯分の主菜と付け添え、スープに補助食品のスティックバーにカップ一杯の飲み物がつく。 勿論なのだが、パンも付く。 スープもパンも御代わりが出来る。
酒は休息日に出る。 コップ一杯だが。
他にも列挙したらありえない程の劣悪な行軍計画で、疲労で倒れるのも仕方がないレベルだった。
偵察部隊から齎される報告書にかつての自国の軍と比べたり、今の自身と比べたりとしていた軍に服していた獣人貴族の方々は、頭を抱えたり、残念そうに首を振ったりしていた。
公爵位でもあったジョアンナの父親でもある義父殿もここまでひどくはないらしい。 戦経験のない中央法衣貴族が、今回の参陣しているのだろうと教えられた。
「しかし、獣王国内の生産力はこの程度ではないはず・・・。 潜在動員力は帝国を大きく凌ぐ国がこんな小出し政策をするとは・・・。 一体、どうしたんだ?」
「実は義父様にも言っていないことがあります。」
「それはあの筒の様な物の事かね?」
「ご名答です。」
「・・・。 聞こう・・・。」
そこでマサルは義父を含めた獣人貴族の方々に伝えた。
ロケット部隊の攻撃力を。
貴族の方々も彼の部隊の攻撃力とあの筒の破壊力を知らされた。
予想を超えた距離の目標を正確に打ち抜く正確さと完膚なきまで破壊し尽くす破壊力を知らされた。 そして、その攻撃をすでに5次まで行っており、後方支援の基地や穀物倉庫は大きなモノは勿論、中規模の倉庫まで破壊されている事を知らされた。
話を聞いた彼らは息をのんだ。
アバロンに来て、補給の重要さを知った彼らしたら、食料がなければ、撤退するしかない。
幾ら動員できる兵員がいても、食料がなければどうにもならない。
「これは・・・勝ち目がないな・・・。」
「いや、小国連合の方から購入するか?・・いや、連合から調達をするにしても輸送中にアバロンに発見されれば・・・同盟国からか?いや、暫定政府では・・・共和国から・・余計に無理か・・・一番簡単な方法は農民からの徴用・・・これも全軍は無理だ・・・。」
「王宮の食料を出せば・・・いや、あれは無理だ。 宰相が首を縦に振るまい・・・。」
在席している貴族の方々は、自身の思考を巡らすが、答えが出なかった。
先立つ物資がない状態では動員が出来ない。 すきっ腹では戦えない、士気も上がらない。
戦う前に終わらされていた事実に自身の選択に間違えがなかった事に心の底から感じた。
そんな面々がいる司令部に伝令が飛び込んできた。
「きっ、緊急事態です!」
「貴様!ここをどこか分かっておるのか!」
「お叱りは受けます!最前線部隊より至急電です!」
「読め。」
「はっ!『発 最前線部隊! 獣王国連合第二陣部隊が降伏したいとの使者が来た』との事です!」
「「「「なにぃぃぃぃぃ!!!!!」」」」
「そんな馬鹿な!彼らとてそれが何を意味しているか分かっているのか?!」
「いや、そんなことより事実確認だ!確かなモノなのか、確かめよ!」
「確認をしました!報告は事実です!書簡を持った伝令兵が、護衛に守られながらこちらに向かっています!!」
「これは・・・事態が動くぞ!」
「ひとまずは戦闘は一時中止。 事情を説明し、警戒体制へ。 書簡次第で再攻撃もあることを伝え、臨戦待機に移行。」
「はっ!」
『第二陣部隊、降伏す』
この情報は多くの部隊に衝撃が走った。
まだ3万はいたはずの部隊がそのまま降伏してくるという事にアバロン側も懐疑的だったが、その後も何度も届く電文と伝令兵の報告と書簡で事実であることが判明した。
「事実のようだな・・・。」
「はっ、我らの後方支援破壊作戦と貴族に対する不平不満が、引き金と思われます。」
「戦場でわがまま放題とは・・・馬鹿か?」
「お陰で無駄な血が流れずに済みました。」
「・・・。 これがもう少し早ければ、彼の部隊も生き残れたかもしれんな・・・。」
「閣下。 我らは前を見ましょう。」
「分かった・・。 準備を。」
部下はマサルに会釈をして退出した。
近くのテーブルには、降伏した部隊の概要が書かれていた。
<降伏兵員>
獣王国軍・18520人
公国兵・88人 軍属2人
共和国義勇兵・エルフ50人、ドワーフ35人
その他・農民兵及び民兵・86人
計 18791人
正直、彼らの真意は分からなかったが、戦闘が早めに終了したことは良い事として、受け止められた。
しかし、歓談の場で降伏の真意が伝えられた。
それには正直、驚いた。
<獣王国サイド・第二陣>
貴族の陣幕では、一般兵の設営で出来た風呂に妾の女性や売春婦と共に入っていた。
当然ながら少ない食料を摘まみながら、さらに少ないワインを飲んでいた。
「やはり汗臭いなんて儂は生きていられん!こうして風呂に入る事は必須だな!」
「そうです。 汗臭い伯爵様はありえないですわ!」
「わっはっはっは!そうだろう!そうだろう!お湯を持て!ぬるいぞ!」
「はっ、ただいま!」
言われて用意に走るのは、一般兵だった。
しかも私兵ではない。 彼らはそういった雑務はしない。 給仕は妾や娼婦がするし、連れて来ているメイドの仕事で、風呂番は正規軍の兵士が担当させられていた。
「最近はつまみの質が下がったなぁ。 もっと良いものを用意するようあの能無し(司令官)に伝え、次はない事も言っとけ!」
「はっ!伝えます!」
貴族の伯爵様我儘は、すぐに司令官に伝えられた。
しかし、物資不足である状態である状態で、湯水のように食いつぶす彼らに幕僚の一人が切れてしまう。
「貴様ぁぁぁ!司令官に何たる口を!」
「まっ、待て!」
「ウラァァァ!」
ドカッ!
「ぐぎゃぁぁぁぁ!」
伝令に来た男は、伯爵の取り巻きの一人で男爵だった。
しかし、幕僚と言っても当主ではないし、平民の身分だったことが事態を悪化させた。
「司令官・・・。 スイマセン。 先走った事を・・・。」
「・・・。」
彼の剣に付いた血が先走りの結果がついていた。
彼も堪忍袋の緒が切れた事で、貴族を切ってしまった。 彼は本国に帰れば、一族全員が処刑されてしまう事が確定した。 司令官や他の幕僚も同罪で、身分はく奪は確実だ。
斬った彼も止めなかった他の者も青い顔をしていた。 一人を除いて。
「司令官殿、私の首を持っていってください・・・。 そうすれば、少しは減刑になるはずです・・。」
「馬鹿!何を言うんだ!お前は出来なかった事をしてくれたんだ!問われるなら同罪だ!死ぬことはないだろうが!」
「頼む!死なせてくれ!そうしなければ!そうしなければ!」
「司令官!奴を止めてください!」
司令官席で腕を組んだままでいた司令官は、自決をしようとしている斬った幕僚とそれを止めようとしている他の幕僚の格闘を座してみていた。
「ここらが潮時か・・・。」
「はっ?何を言って・・・。」
「我らはアバロン軍に降伏する!」
「本気ですか?司令官・・・。」
「ああ。」
彼は彼らに伝えた。
このことが貴族陣幕でくつろいでいる彼に伝われば、全員が粛清の対象になる事が明白である事。
それならば、全員で降伏する方が生き残れる可能性があると、伝えた。
その話を聞いた幕僚たちは、全員が押し黙ったが、彼らも今のままでは捨て石になってしまう事は確定している。 そうなれば、土産(貴族共)をもって降伏をした方が良いという司令官の言葉に従った。
「各部隊に連絡!貴族共に知られる前に彼らを捕らえる!抵抗するなら殺して構わん!急げ!」
「はっ!直ちに!」
それからは早かった。
元々、不満の対象であった貴族達はあっという間に虜囚の身に。 抵抗した私兵は、多勢に無勢。 集団で殺された。 妾の数人も槍の錆になった。
「貴様!これはどういうことだ!今なら許してやる!縄を切れ!」
「「そうだ!早くしろ!!!」」
「伯爵様。 あなたは勝手が過ぎました・・・。 御覚悟願います。」
「なにぃぃぃ!貴様ァァァァ!」
「副官。 アバロン軍に使者を立てよ。 降伏するとな。」
「はっ!直ちに!」
こうして、幕僚の一人と護衛の騎士2名が、アバロン前線部隊に向け、白旗を掲げて陣地前に移動した。
アバロン陣地に前で叫んだ。
「我らは獣王国軍第二陣部隊だ!我らは降伏したい!取次を願おう!」
「貴殿は本気か?!嘘ではあるまいな!」
「嘘ではない!司令官の書簡もある!取り次いでくれ!」
「分かった!そこで待て!」
彼の前に銃で武装した兵士がやってきて、取り囲む様に来た。
そのうちの位が高そうな男性士官に司令官の書簡を渡すと、ひとまず自軍が来るまでその場で休むことにした。
<アバロンサイド>
獣王国から来た書簡には、貴族を引き渡すので命は助けて欲しいというものだった。
終戦が近づくことは期待は出来るので、受ける事になった。
彼らを追撃する部隊はないとは思うが、彼らの後方に鉄条網と警備部隊をおいて、監視することにした。
会見の場は、最前線近くの村の集会場。
互いに向かう形で落ち着いた。
そして、彼らの司令官もマサルと相対する形で向かい合った。
「アバロン軍最高司令官でマサル・アバロンです。」
「第二陣部隊司令官、ガーリー・フォン・ヤカリバルである。 この度は降伏の申し出、受けてくれて感謝する。」
それからは互いのというよりガーリー司令官の方が多くを語った。
貴族側の取り巻きの一人を殺してしまったことで、帰還が出来ない事と帰っても全員が処刑対象になる事を伝えられた。 それならばと、降伏をしたという事だ。
横に座った義父殿に視線を送ると、首肯定をした。
「それは大変でしたね。 降伏に際し、そちらが望むことは?」
「まずは食事を・・・。 出来れば、テントと毛布も分けて欲しい。 物資が足らず、テントを天幕の様に張る事しか出来なかったんだ。 頼めるだろうか?」
「分かりました。 それはただちに。」
「すまない。」
彼らとの交渉は上手くいき、彼らは陣地内ではないが、テントと毛布、食事を貰い、その夜は何日ぶりの熟睡をしたのだった。
こうして、攻め手のほぼすべてを失った連合軍は、大いに焦るまでタイムラグが出た。
周囲警戒で偶然、通った公国航空隊のフォッカーⅮ-XXI戦闘機が発見するまでタイムラグが開いた。
その間にマリアの実弟であり、若き皇帝が率いる帝国軍が獣王国平定作戦を実行されるのであった。
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