開戦④
いよいよアバロンに『万歳突撃』が起きます。
少し悲哀を表現してみましたが、上手く書けていますでしょうか?
戦争が始まった・・・。
早期に諦めさせるためにピンポイントで拠点破壊と後方支援を断った。
しかし、依然として第二陣の進撃は続いていた。
「先陣の状況を知らないんでしょうか?」
「いや、そうじゃない。 報告によると、進撃はしている・・・が、速度は遅くなっている。 そして、航空隊が近づくと、隠れるようになったとの事だ。」
「・・・。 こちら側の対策ですか?」
「多分な。 部隊も少しずつ分派していて、大部隊での行動を避けている・・・。」
「第二陣は違うと?」
「たぶん、こちらが思うより難しい戦になるやも・・・。 感応式地雷や赤外線暗視装置、手投げ弾は少ないから手製爆弾対策で、鉄条網を張り巡らすか・・・。」
「打てる対策は出来る限り打ちましょう。」
「ああ、そうしよう。」
不気味な対策を取り始めた第二陣に対する対応が取られた。
そこで活躍したのがケッテンクラート。
さらにそこに貨車を取り付けて輸送力を上げた。
「弾薬を運んできました!」
「おう!お疲れ!訓練兵なのにすまんな。」
「いえ!これも訓練ですから!」
「まあ良い。 茶ぐらい飲んでいけ!バチは当たらんさ。」
「「はい!頂きます!」」
このケッテンクラートは訓練生がペアになり、運んだ。
二人で軽トラックの4分の1くらいは運べるので、操縦講習を習得した訓練生を後方から引き抜いて車輛に乗せた。 操縦手と息の合う同期や後輩を警戒要員として載せて、前線や司令部の物資輸送に従事させる事で、空気だけでも感じられる緊張感を持たせた。 時には伝令も兼ねるが、バイクよりも輸送力がある上にバイク並みに取り回しが良いこの車両は、終戦まで物資輸送から怪我人搬送までと、バイクと同様に文字通りの馬車馬の様に各戦線・司令部等へと、走り回った。
「対策もそうですが、航空攻撃を行いますか?」
「効果はでそうか?」
「・・・文字通りの絨毯爆撃になります。 ばら撒きが必要なので、陸用爆弾を大量搭載になります。 まあ、航空機もコストの為に中型機が主力になります。」
「そうか・・・。 手は打っておこう。 出撃を依頼してくれ。」
「はっ!」
こうして第二陣の部隊に向け、航空攻撃を行われる作戦が立てられた。
当然、集結していた所を中心に面で叩いた。 中型陸攻を中心にした100機余りの動員で、ガリガリと削っていく。 敵戦力は思っていたほど被害が出ていなかった。
<獣王国・第二陣部隊>
第二陣部隊の司令部での会議は、暗い空気が立ち込める中で司令官が重い口を開けた。
「先鋒軍はほぼ全滅したらしい。 我らは先陣群を突破できなかった敵の陣地を突破するのが任務。」
「先鋒がやれなかった事を我らだけで?」
「今回は公国兵も加わる。 まだ未定だが、航空隊も参加するらしい。 そこはまだ確定じゃない。」
「公国兵はいかほど?」
「捕虜兵の100人だ。 航空兵は多くて10機ほどだ。」
「戦力の小出しではないのですか?」
「公国側の出せる航空戦力がそれしか燃料がないそうだ・・・。」
「そうですか・・・。」
「固まると危険なので、分散進軍をする。 出来るだけ集まらないように気を付けよ。」
「「「「「「はっ!」」」」」」
こうして、少しずつ分散し、進軍を続けることになったのだった。
その間に公国部隊が合流する手はずになった。
<アバロンサイド>
文字通りの航空爆撃はある程度の成果は出た。
しかし、作戦継続していくうちに中型機もコストの問題で出撃出来ず。 最後は偵察機に数発の軽量爆弾を搭載しての攻撃になった。 それも偵察の際に発見した所で、攻撃をするような散発的な物に。
「閣下。 やはり攻撃が散発的な攻撃では効果が出なくなってきました・・・。」
「仕方がないか・・・。 戦果がコストを下回った・・・。 今回はこれも中止か・・・。」
「爆弾搭載は止めますが、発見時は機銃攻撃にシフトします。」
「・・・仕方があるまい。 しかし、こちらも少数の部隊を出してゲリラ戦を仕掛けよう。」
「畏まりました。」
作戦が変更され、部族兵と特殊偵察兵の部隊が投入された。
これは功を奏したが、態勢を変えるほどの効果はひとまず得られなかった。
しかし、それでも偵察爆撃よりは効果があるので、継続された。
<公国軍・元輸送護衛隊サイド>
彼らは今回の先陣惨敗で投入された部隊だった。
本来は他の本国部隊が来るようだが、本国部隊が被害を恐れて理由を付けて来なかった。 その穴埋めに彼らは動員された。 ほぼ全員が。
「隊長、また貴方と戦えることを誇りに思います。」
「・・・。 お前ら馬鹿だろう?死にに行くものだ。 まして男に言われても嬉しくないわ!」
「でしたら、私が言いましょうか?」
「・・・フロイライン。 君はなぜ来たのかね?君は獣人。 我らにいるより自分の部隊にいる方が、戦果は記録されるぞ? この様なネームレスにいる必要はないよ。」
「あら?ここまで来させて、追い出すの?そっけないわね。」
「・・・。 君の部隊も10人も付いて来ているじゃないか。 彼女らも良いのか?」
「彼女は貴方の部下に情を交わした者が、いるの。 だからよ。」
「そうなのか?」
「気が付かないのは貴方だけよ。」
「皆、すまない。」
「・・・いえ・・・。(照れ)」「申し訳ありません(苦笑)」
彼女は狐獣人のエレシア。 剣士隊の分隊長で、訓練をしたりしていたことで交流があった。
当然、郷国を離れていた自分の心の支えでもあった。 情も夜も共にした女性だ。
他にも彼女の隊が、女性しかいないこともあり、隊員の中でも同じように男女の関係になった隊員もいたようでよく見れば、彼女の隊以外にもいくつかの分隊が、参加していた。
「彼女らも戦士よ。 好いた相手が死出の出撃をするのなら共に逝くわ。 それが死出もよ。 私も貴方が帰ってくるか分からない戦を待つくらいなら共に逝くわ。 いまさら追い出そうとすれば、私は自決を選ぶわ。 良いの?」
「それはならん!生きていれさいすれば、咲く華もある!」
「・・・それはないわ。」
「この国はアバロンに喧嘩を売った瞬間に終わった。 だけど、国を捨てる事は出来ない。 でも、未来もないわ。 ならせめて女として、好きな男の側にいたい・・・。 それが死であっても・・・。」
「エレシア・・・。 すまない。 君と会ってどれだけ助けられたか、分からない・・・。 感謝もしたいが、渡す物もない・・・。 許してほしい・・・。」
「それは仕方がないわ。 だからせめてあなたの側に・・・あなたの側にいる我儘を・・・認めて欲しいのよ・・・。 それだけは・・それだけは認めて・・・。」
「・・・生き残れる可能性は低いぞ?」
「覚悟の上よ。」
「分かった。 残りたい者は残れ。 離脱も認める。 最後まで付き合う必要はない。」
彼の声に数名の男女と隊員が、会釈をして去った。
それも仕方がないとも思った。 我らは捨て駒だ。 生きて帰る事が出来ない死兵の群れ。
将来を託せる者を、自分らが生きていた事を伝える人々がいる事にありがたさを感じたいと思った。
小一時間ほどの休息後、彼はそばにいた部下に声を掛けた。
「何人残った?」
「獣人とのカップルが3組、隊員が5名の14名です。」
「それだけか?半分はいなくなると、思っていたが。」
「馬鹿なんですよ。 皆。」
「俺もか?」
「勿論です。」
「言いやがる・・・。 行こうか!馬鹿ども!公国兵も生き様!見せてやろうぜ!」
「「「「「「「「「おおおおおおおおっっっーーーーーーーー!!!!!!!」」」」」」」」」」」
隊員が車両や抱えた兵器を点検しだす。
本当の意味での死を覚悟した突撃を、一丸となった命の炎をぶつけるために。
眼下に広がるアバロン軍の陣地に攻撃を加えるために。
情を交わし合った者は互いにキスをして、互いの無事を祈り合う。
居ない者は戦友同士で互いの戦功を祈り合った。
ここから一歩でも出れば、死が隣り合う戦場を前に互いの存在で、恐怖を拭い去る。
死出の特攻に向かう死兵となり、命の血戦に挑む・・・。
後から来る味方の攻撃の為に捨て駒となる事を選んだ者達が、立ち上がる・・・!!
「公国混成軍!突撃隊!突っ込めぇぇぇぇ!」
「「「「「わぁぁぁぁぁぁ!」」」」」」
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