開戦⑤ 公国兵の死闘
公国兵の突撃を表現しました。
アバロン軍の前線では、鉄条網が塹壕陣地前に幾重にも張られた。
そして、感応式地雷や機銃バンカーの追加で火点も増えた。
兵士の中でもこれだけ整えたからそう易々は突破はされないだろうという慢心と、主力と思われる獣王国軍がまだ後方にいる事で安心してしまっていた。
「ふあぁぁぁ、いつまでもいつ来るか分からない敵を見張るのも疲れたぜ。」
「そういうな。 コーヒーを入れてやるから待ってろよ。」
「あいよ。 ありがとよ。」
「ん?」
「どうした?」
「いま、何かが光ったような・・・」
「まさかそんな事はないだろう・・・気のせいだぜ?」
ヒューーーン!ドカン!ボカァァァーーーン!
「突撃ぃぃぃぃぃぃ!!!!」
「敵襲ゅぅぅぅぅーーーー!!!!横の森から敵が出た!」
「マジかよっ!」
「応戦体勢!急げぇ!」
しかし、上手くいかなかった。
配置に着いたが、もたついてしまい、初弾を撃つのにもうまく行かず。
撃ち始めた時には、すでに塹壕陣地数メートルまで踏み込まれていた。 元々、森まで10数メーターしか離れていない場所の陣地を攻撃をされたために混乱が広がる。
突撃してきた敵は公国の装甲車数台を先頭に突撃していて、その後をハーフトラックやジープが続いた。
その横からサイドカーやバイクに乗った兵士が、撃ち捲りながら突撃してくる。
その後を歩兵が乗り込んできていた。
すでに起動戦力でズタズタ引き裂かれた第一陣地は蹂躙されており、第二陣でもハーフトラックから兵が切り込みをされて、火力支援も出来ない状態に。
「こちら第二陣地4番塹壕!公国軍の切り込みに合っております!至急!増援・・ぎゃっ!」
「ちきしょう!味方はどこだ?!死ねや!」
「そんな弾当たるか!お前が死ね!」
「接近戦では銃より剣が強いわよ?死になさい!」
獣人の騎士や兵士がいる公国軍に、アバロン軍はなし崩し的に肉弾戦に持ち込まれた。
訓練は受けているものの、各自の個人装備のみで戦う事になり、スコップやナイフ、ヘルメットや石で戦った。
切り込む側は剣や短槍、短剣やショートソードを装備していた為に優位に進んだ。
しかし、時間の経過と共に近隣の部隊が立て直し、救援に駆けつけだすと一気に劣勢になった。
突破力の主力装甲車が次々に対戦車砲やパンツァーファウストの餌食になると、後続のハーフトラックも横からの機銃掃射で、運転席と助手席をハチの巣にされ、機銃手もスナイパーの狙撃で沈んだ。 二番手は獣人だったが、スナイパーに手傷を負わせた所で横から撃たれて倒れた。
バイク部隊は善戦したが、突然横から現れた兵のスコップで叩き落され、スコップに首を切り離されるという形で絶命した者もいた。
機動兵力が亡くなると、歩兵たちは互いのパートナーと共に突撃を敢行した。
死を覚悟した死兵の突撃に兵士達は戦慄した。
「こっちに来るな!撃て!撃てぇ!撃てぇぇぇ!」
「何で死なないんだよ!何発も当たっているはずなのに!」
「御託はいい!撃て!来るぞぉぉぉぉぉ!」
明らかに長い数分間が終わった頃、機銃弾を撃ち切った事で静かになった。
向こうに立っている者はいない。 吹き抜ける風が硝煙臭い。
だれも動かない。 アバロン軍も動かない。 いや、動けない。 近づいたら起き上がりそうな公国兵達に恐怖で動けなかった・・・。
30分ほどして、後方から来た衛生隊が戦場清掃担う事になり、現場へ。
それを見た隊員はその光景を上官に話した。
報告を受けた上官は、総司令部に報告をした。
<アバロン総司令部>
「前線から報告?」
「戦場清掃を担当している衛生隊よりの直電であります!」
「そうか・・・。 かの者は別々にせずにせよと、伝えよ。 他の者も丁重にとも伝えよ。」
「はっ!」
電報を持ってきた兵は、すぐに返事を撃つために下がっていった。
渡された紙を何度も見ているマサルにマリアが声を掛けた。
「どうしたの?」
「見てみるかい?」
「ええ、見たいわ。」
マサルは電報の紙をマリアに渡す。
その紙をマリアも見た。 その紙を見たマリアも悲しそうな顔をした。
電報の内容は『突撃をしてきた混成部隊のうち、互いに手を取り合ったり、体が触れ合う形で死んでいる兵士がいる。 どうしたらよいか?』と、いうものだった。
明らかに情を交わした者の形だった。
<アバロン軍前線>
「総司令部から返電です!」
「・・・。 やはりそうか。 おい!番は一緒に袋に入れろ!戦死者は敵味方問わずに丁重に対応しろとの命令だ!」
「「「「「了解!!!!」」」」」
総司令部からの返信で彼らは番ごとに袋に入れらた。
そうでない者も乱雑な対応はされず、丁寧に袋に収めらた。
「敵方でも互いに手を取り合って、死出の旅路とは・・・。 あっぱれな事よ。」
「隊長、警戒部隊より敵後続部隊来ません。との事です。」
「ここで突撃してくれば、突破できたやもしれんのに・・・。 惜しい事よ。」
「彼らの死を生かせないのは、悲しいです。 同じ軍人として悔しいと愚考します。」
「同意する。 自身の思い人まで犠牲にしたチャンスを生かせぬ者に勝利はない。」
「せめて彼らが笑っていた事が救いだな・・・。」
「はっ・・・。」
その後、彼らは丁重に清められ、アバロン商工会の好意で番として抱き合っていた者たちは、正装とドレスに着替えられ、一つの棺桶に入れられて火葬された。 ただ名前は知らない為に『番1番』というような通し番号が振られ、埋葬された。 当然、遺品は一つに纏められ、管理・保管された。
敵方で戦死した人たちの埋葬時、敬礼をして彼らの戦闘に敬意を表したのちに埋葬させてもらった。
「勇敢なる公国兵及び獣人兵に敬意を表す!敬礼!」
ザザッ!
彼らが係りの兵によって、埋葬される。
公国軍の車両も撤去され、彼らの攻撃の後は消された。
「かの攻撃の被害は?」
「戦死は40名。 負傷者は300名です。 今戦争では一番の被害です・・・。」
「油断だな・・・。 全体に警戒するように伝えよ。」
「はっ!」
アバロン軍の最大被害が出た。
彼らの名前は終戦後に全員の名が刻まれ、かつての決戦のちに石碑が残されるのであった。
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