第6章 - 定着しない光輪 - ピイが光輪になった日
第6章 - 定着しない光輪 - ピイが光輪になった日
光輪配布の日。
天界の中央広場に天使たちが集まる。年に一度の光輪配布。新しい光輪、修理された光輪、グレードアップした光輪。天使にとって光輪は身分証明書であり、名刺であり、履歴書だ。
光輪がなければ、天界のシステムに認識されない。扉が開かない。給料が出ない。存在が記録されない。
俺には光輪がなかった。幽霊だから。
配布所の天使がリストを見て、俺を見て、もう一度リストを見た。
「タリエル……幽霊、Lv0、存在度0.16%。光輪希望?」
「はい」
「却下」
即答だった。考える素振りもない。
「なんで?」
「あー、規格上、光輪の定着には最低1%必要。君0.16%でしょ。無理。はい、却下」
「普通の天使は生まれつき定着してるけどね。君みたいな不定形は別規格で、1%ないとダメなの」
横でミカが自分の光輪を磨いていた。曲がった光輪。でも定着している。
「ミカはいいの?」
「彼は天使だから。生まれつき。君は……なんなの?幽霊?バグ?どっちにしろ規格外」
屈辱だった。存在度が上がる屈辱。
【存在度:0.16%】屈辱で上がった
倉庫に戻る。ピイが待っていた。今日は少し大きくなっている。存在度が上がるとピイも育つ。0.05%の幽霊が、俺の0.16%にくっついて生きている。
その夜、倉庫で。
ピイが起きた。俺の頭の上。いつもは寝ているのに、今日は起きている。じっと俺を見ている。いや、俺の頭の上を見ている。
俺の頭の上に乗った。ふわりと。そして、光った。
眩しい。倉庫の暗闇が白く染まる。ピイの体が光の輪になる。完璧な円じゃない。少し歪んでいて、端がぷるぷる震えている。でも光輪だ。確かに光輪だ。
ピイが、光輪になった。
俺の頭の上で、ピイが丸くなって、光の輪になった。温かい。頭が温かい。生まれて初めて、頭が温かい。
慌ててステータスを見る。
【光輪定着条件:存在度1.00%以上】(現在:0.16%)
【エラー:光輪を頭に乗せられません】【原因:存在度不足】【解決策:存在しろ】
でもピイはそこにいる。頭の上で、光輪として。鼓動みたいにゆっくり明滅している。生きている光輪。
翌朝、配布所に行った。ピイを頭に乗せて。
「これ、光輪ですか?」
「……生きてるね」
「規格外だね。でも定着してる。なんで?」
「分かりません」
「物は存在度で選ぶ。生き物は気持ちで選ぶ。だよ」
配布所の天使は首を傾げた。それから笑った。
「まあ、定着してるならいいか。記録しとく。幽霊タリエル、光輪あり。特記事項:生きてる」
その時、ステータスが光った。
【存在度+0.09%】
【進化:光輪獲得 - 生きた光輪】【ピイが光輪になった】【タイプ:共生光輪 Lv1】
【効果:睡眠中に存在度が0.01%回復】【条件:ピイと一緒に寝ること】
【存在度:0.25%】
【新規スキル獲得:共生光輪 Lv1 - 生きた光輪。効果:睡眠中に存在度が0.01%回復。条件:ピイと一緒に寝ること】
0.25%。まだ1%には遠い。でも、0だった俺が、光輪を持っている。生きている光輪を。
ピイが頭の上でくるっと回った。嬉しそうに。
「ありがとう、ピイ」
「ピイ」
倉庫に戻る。今日は少しだけ胸を張って。透明な胸を。
夜、丸窓から赤い空を見る。彼がこっちを見ている。手を振る。ピイも光って振る。向こうも振り返した気がした。
まだここにいる。光輪と一緒に。生きた光輪と一緒に。
第6章 終 - 存在度0.25% - 次は穴塞ぎ、研修天使ミカと二人で
第6話をお読みいただき、ありがとうございました。
本来なら存在度が1%に満たなければ定着すらしないはずの天界のアイデンティティ、光輪。
規格外のバグ幽霊であるタリエルを救ったのは、システムではなく「気持ち」で彼を選んだピイの温もりでした。
天界史上初となる【生きた光輪】を頭に乗せ、タリエルはついに存在度0.25%へと進化を遂げます。
タリエルとピイの奇跡の絆、そして少しずつ強くなっていく彼らの存在をこれからも応援していただける方は、ぜひ下の【ブックマークに追加】や、ポイント評価の【★】、応援ハートなどで二人にパワーを分けていただけると非常に嬉しいです!
明日の第7話「落ちこぼれ天使 - 二人の居場所」も19時に更新いたします。よろしくお願いいたします。




