第18章 - 噂 ― 人間の匂いがする魔王
いつも応援ありがとうございます!白石ソラです。
中央中庭の騒動から3日、タリエルは恒久的な話題に…見られるだけで存在度27.50%→28.10%へ!
第3区では魔界に新しいロードが現れたって噂が。本物のスラング、チワワサイズのケルベロス、そして現世の匂い…赤い鏡の影と繋がる予感がします。Xもやってます→ @Sora_no_TENKAI
中央庭での騒動から三日経って、俺は恒久的な話題になっていた。
予想していたような悪い意味だけじゃなかった、少なくとも悪い意味だけじゃなかった。もちろんひそひそ話もあったし、横目で見られることも、わざわざ反対側の廊下を通って俺とすれ違わないようにする天使もいた。でも、それだけじゃなかった。好奇心で近づいてくる者、わざと立ち止まる者、遠慮なく「近くで見てもいい?」と聞いてくる者もいた。まるで俺が第7区の真ん中に展示された新しい彫刻みたいに。
【存在度:27.50% → 28.10%】
ただ見られるだけで、それを得た。ラドゥリエルは正しかった。まだ好きかどうか決めかねているやり方でだけど――見られることは、たとえ嫌悪でも、たとえ哀れみでも、存在の証明として数えられる。システムは見る側の意図なんて聞かない。ただ、本当に誰かが見たかどうかだけを聞く。
「これ、ちょっと気持ち悪いな」
いつもの箱に座って、まだ変な感じのする、でも思っていたより気に入っている重さの翼を背中に畳みながら呟いた。
「何が?」
ミカが、噛んでいた雲のかけらから目も上げずに聞いた。
「みんなが俺を見て変だと思うから存在度が上がるってことが」
「それが有名になるってことだよ」
口いっぱいに頬張りながら言った。「全部ちょっと気持ち悪いもんさ。そういう仕組みなんだよ」
ラドゥリエルは倉庫の隅で、尻尾を怠け者の扇みたいに広げて寝そべっていたが、片目を開けた。
「あんたたち二人とも、昨日の自分の新しいネタより、噂のほうに注目すべきだよ」
「何の噂?」
彼女は体を起こし、尻尾が急に興味を持ったように整列し直した。
「第3区が持ちきりなんだよ。新しいロードが魔界で高い地位についたって。それだけなら別にニュースじゃない――ロードなんて下では上がったり下がったりするのが基本の娯楽みたいなもんだから。変なのは話し方」
「話し方がどう変なんだ?」
「スラング。本物のスラングだよ、悪魔が絶対使わないタイプの。だって悪魔には参考にするものがない――あいつらは地獄のシステムの中で生まれて死ぬだけで、路上言葉を拾うほどの本物の現世の人生を生きたことがない。なのに、その新しいロードはまさにそんな話し方をするんだって。しかもペットまで飼ってる」
「ペット?」
「ケルベロス。三つの頭、チワワくらいの大きさ」
ミカは噛んでいた雲のかけらを吹き出しそうになった。
「チワワサイズのケルベロス?」
「そう言われてる。しかも、見たところ、火も吐かないし威嚇もしない――誕生日の花火みたいな、可愛い火花を出すだけらしい。三つの頭はしょっちゅう喧嘩してて、一つは寝てる、一つは法律用語で吠える、もう一つは何でも嬉しがる」
その描写の何かが、俺の背筋に震えを走らせた。いつもの震えじゃない。共鳴が何か忘れられた物に引っ張られるときの震えじゃない。もっと別の、もっと深くて、もっと古いもので、名前をつけられない感覚だった。ただ、前にも感じたことがあると分かるだけで、確信するには曖昧すぎた。
「人間の匂いっていうのは?」
ゆっくり聞いた。
「それ」
ラドゥリエルが、尻尾の先で俺を指しながら言った。まるで俺がちょうど正しい質問をしたみたいに。「それが本当に変な部分なんだよ。悪魔には人間の匂いなんてない。硫黄の匂い、溶岩の匂い、温め直した書類仕事の匂い、それぞれのカテゴリーなりの匂いがある。でもその新しいロードは、近くまで寄れた者によると……現世の匂いがするらしい。システムに処理されて作り直された命じゃなくて、本当に生きられた命の匂い」
しばらく黙っていた。ポケットに入れた羽根をゆっくり握りしめながら、それもこの会話に反応したみたいに、少し熱が増すのを感じていた。
「タリエル」
ミカが急に注意深く俺を見て言った。「大丈夫か?」
「大丈夫。ただ……考えてる」
「何を考えてるんだ?」
溶岩の鏡のことを考えていた。いつもこっちを見返してくる赤い髪の影のことを。俺の翼が生まれたのとちょうど同じ瞬間に手を上げた、まるで遠くからでも俺の存在の形が変わる瞬間を感じ取っているみたいだったことを。禁書庫の巻物のことを。二つの魂、一つの死の瞬間、指定された分離に抵抗した運命のことを。
「何でもない」
結局そう言った。まだそれを言葉にして、他の二人に――まして自分自身に――納得いく形にする方法が分からなかったから。
ラドゥリエルは長い間、俺を見つめた。もう恐れるようになっていた類の注意深さで。だいたいそれは、彼女が俺自身よりも先に何かに気づいたときの目だった。
「あんた、彼だと思ってるんでしょ」
質問じゃなく、断定だった。
すぐには答えなかった。
「彼って誰?」
ミカが二人を交互に見ながら、明らかに置いていかれて聞いた。
「鏡だよ」
ついに言った。声が思っていたより低く出た。「最初から、ちゃんとした顔を持つよりずっと前から、倉庫の奥に溶岩の鏡がある。奈落の向こう側を映す鏡。そしてそこにはいつも、赤い髪の影がいて、こっちを見返してる」
「それ、一度も言ってなかったな」
ミカが、予想外に傷ついた響きを声に滲ませて言った。
「それが何なのか分からなかったんだ。今でも分からない。ただ分かるのは、俺に何か大きなことが起きるたびに、あいつも何かを感じ取ってるらしいってことだけだ。そして今、魔界にスラングを話して、ケルベロスをペットにして、現世の匂いがする新しいロードがいる」
「それは……やけに具体的な偶然だな」
ミカがゆっくり認めた。
「あたしはやけに具体的な偶然なんて信じない」
ラドゥリエルが言った。「まだ名前のついてないパターンを信じるだけ」
倉庫の床を見つめた。自分の翼の重さを背中に感じながら、ポケットの羽根の重さを、図書館の巻物から育ち続けて、今まで正面から向き合うのを避けてきた問いの重さを感じながら。
「もし彼だったら」
ゆっくり言った。初めてその文を声に出して試してみながら。「もしあの記録のもう半分だったら――俺と同じ場所に行くはずだったのに、正反対に行ったもう一つの魂だったら……あいつは、俺がまだ渡ったことのない奈落のすぐ向こうにいることになる」
「それで?」
ラドゥリエルが聞いた。金色の古い目が、遅ればせながら俺が期待だと認識した輝きで光っていた。
すぐには答えなかった。でも、あの俺を受け入れたくない天界で目覚めて以来初めて、一つの問いが、ゆっくりと、決意に変わっていくのを感じた。
第18章 終 - 存在度28.10% - 人間の匂いがする魔王の噂
お読みいただきありがとうございました!
天界のシステム、そしてタリエルに宿る「バグ」の謎が少しずつ見え隠れしてきました。
彼は果たして、この理不尽な世界の天井をどこまで突き破れるのか……。
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