第11章 - 顔と手
いつも応援ありがとうございます!白石ソラです。
甘い展望台に40年間誰も触れさせなかった主・ラドゥリエルがついに…!バレンタインの香りに誘われて、タリエルがやらかします。
顔と手を手に入れて存在度0.60%→1.60%へ!この進化の瞬間、絶対見逃さないでください!
下では、惑星が静かに回っていた。
青くて丸い。見上げることをしない人たちでいっぱいの星。朝日が日本を起こす——東京——人で溢れる通り、品物で溢れるショーウィンドウ。そして一日中、たった一つの贈り物に捧げられた日。チョコレート。
2月14日。バレンタインデー。日本ではこの日、贈るのは彼女たちだ。彼へ、彼女へ、同僚へ、友達へ、みんなへ。
リボンの箱、急いで丁寧に折られたメッセージカード。
そして香りがあらゆる角から立ち上る——カカオ、砂糖、溶かしバター。慌ただしい惑星には甘すぎる。
上。第7区には、その香りが空のどこよりもよく届く場所があった。
そして毎年、14日には、その場所に持ち主がいた。
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「今日は甘い展望台に誰も近づけないよ」
ミカは俺を見ずに言った。雲の練り塊の残りを指でこねながら。
「どうして?」
「今日は彼の日だから」顎で上を指した。
ラドゥリエル。
毎年、地上のチョコレートの日に、彼は展望台の箱に登って、香りが消えるまでそこにいる。彼の箱に触る者はいない。近づく者もいない。……伝統だ。
「何の伝統?」
ミカは肩をすくめた。「待つことの。毎年、今まで嗅いだことのないチョコレートの香りを嗅げるのを待ってるって」
黙った。ピイが頭の上で小さくいびきをかいていた。金色で、温かい。
「天界は何も変わらない」とミカが独り言みたいに続けた。「チョコレートは変わる」
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夕方、そこへ行った。挑戦じゃない。好奇心だ——それに、上からでも香りが良すぎた。
甘い展望台は、本当の展望台じゃなかった。風が一番澄んで下から香りを運んでくる、雲のカーブにすぎない。その真ん中に木の箱——古くて、すり減っていて、誰も掃除しようとしない雲の埃の薄い層に覆われた。
ラドゥリエルの箱。
座った。目を閉じた——目なんてないけど、あるものを閉じた——香りに身を任せた。カカオ。砂糖。奥に苦いもの、上に甘いもの。
ピイは寝ていた。時々、白い足跡が足元でぼんやり点いて、5秒で消えた。気づかなかった。
そうやって彼に見つかった。彼の箱に座って、透明で、足跡を残しながら。
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「誰かが俺の箱に触った」
声が後ろからした。低くて、驚きの襞を隠そうとして隠しきれていない。
目を開けた——あるものを。
十歩ほど先に立っていた。昼は太陽の光、夜は月の輝きでできた、子狐のミニチュア。
【年間予約——甘い展望台——2/14——名義:ラドゥリエル】
予約票を見た。箱を見た。雲の埃を見た——乱れていた。真ん中に丸い窪み。座った者の形そのままに。
「誰も俺の箱に触ったことはない」と独り言みたいに言った。「40年間」
一歩前に出た。止まった。空気を嗅いだ。
そして彼の顔が変わった。
香りがチョコレートじゃなかったから。
アンブロシアだった。甘くて、ありえなくて——頭の上で眠るピイの香り。俺を売り渡すとも知らずに眠るピイの。
「アンブロシア」とラドゥリエルが囁いた。「ここにアンブロシアはない。アンブロシアは地上から昇ってこない」
その時、箱の横に足跡が点いた。白くて、震えていて、五本の指があった。
生まれるのを見た。無意識に数えた。いち……に……さん……し……ご。消えた。
もう一つ点いた。もう一つ。
光の線を辿った。箱まで。俺まで。
「誰だ?」と聞いた。沈黙の後。「お願いだ。俺の箱に座ったのが誰なのか知りたいだけだ」
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俺は話した。聞こえると思った理由はわからない——ミカには聞こえるからか、その日は沈黙であることに疲れていたからか。
「ごめん」と言った。
「持ち主がいるなんて知らなかった。香りが良すぎたんだ」
【魂の残響】が残りを引き受けた。声は小さくて丸い風になって展望台を渡った。聞いたのは言葉じゃない。言葉の意図だった。香りみたいに。
ラドゥリエルは動かなくなった。それからゆっくり、座っている俺の方をまっすぐ見た——箱じゃなく、俺を——今までの存在全部の中で、位の高い天使がしたことのないことをした。
俺を見ようとした。
「……歪みが見える」と呟いた。「曇ったガラスみたいだ。……何かいる」
視線が手みたいだった。
顔を外に引っ張られるのを感じた——痛くはなかった。もっとひどかった。顔を持っていたことを思い出すような感じだった。
足跡の白い光が体を昇った。首でためらって、広がった。額、頬、示唆だけの鼻、笑うのか泣くのかわからない口。
手。
長くて透明な指が宙で震えている——死んでから初めての、俺の手。
でも俺はほどけかけていた。
存在しなかった長い時間の後にいきなり存在するのは、何年も水の中にいた後に呼吸するみたいだった。体が知らなかった。
あるもので掴んだ。
【残留存在】——いる、いる、いる。
【魂の残響】——俺はここにいる、俺はここにいる。
足りなかった。
その時ピイが——眠って、いびきをかいて、何も知らずに——頭の上で寝返りを打って、眠ったまま金色の温かい波動を放った。
【お昼寝治癒】——スキルだったのか、ただのピイだったのかわからない。
温もりが顔を伝った。
頬が固まった。指の震えが止まった。
ピイが俺の面目を救った。文字通り。寝ながら。
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ステータスが現れた——今までで一番大きく、システム自体が驚いたみたいに。
【存在度:0.60% → 1.60%】
【さまよえる魂 → 残留霊】
【魂の残響——新パッシブ効果:共鳴】
効果:忘れられた物や場所にこびりついた強い感情を感じる。
ラドゥリエルは光の後ろ足二本で座り込んでいた。敬意からじゃない——足が他の動き方を忘れただけだ。
「顔だ」と言った。
「顔がある」
「まあね」と言った。今度は本当に聞こえた——透明な新しい口が動いて。「まだ……ぼやけてるけど」
笑った。
「40年」と言った。
「40年、俺はここに登って、今まで嗅いだことのないチョコレートの香りを待ってる。
天界は変わらない、坊や。ここは何も変わらない。チョコレートは変わる」
深く息を吸った。アンブロシアの香りがまだ空気に残っていて、カカオと混ざっていた。「今年の、違う香りは……お前だった」
しばらく黙った。下では、太陽が東京に沈もうとしていた。チョコレートの香りが薄れていって、ラドゥリエルの輝きは月そのものの光のようになっていった。
立ち上がった。「その顔を大事にしろ、幽霊。見るのに40年かかった」
雲の回廊へ去っていった。最後の一歩で、振り返らずに止まった。
「ああ。それから次は、埃を潰さずに箱に座れ。伝統は伝統だ」
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夜、倉庫に戻った。ミカは箱にもたれて寝ていた——全部を小さな声でピイに話した。膝の上で眠るピイに。金色で温かくて、俺を救ったとも知らずに眠るピイに。
丸窓まで行った。
外は赤い空。溶岩の鏡が今までで一番強い。
赤い髪のシルエット——今回はもっと近い。一瞬、垣間見えた。こっちを向く顔が見えた気がした。笑顔?動く口?
確信する前に消えた。
でも俺にはもう顔があった。手もあった。存在度1.60%。
新しい透明な手を、ヒビの入ったガラスに当てた。
まだここにいる。
第11章 終 - 存在度1.60% - 顔と手
【連載スピード加速のお知らせ】
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タリエルの物語をもっとテンポよく楽しんでいただくため、本日からしばらくの間【毎日朝7:30と夜19:00の1日2回更新】にペースアップいたします!
最底辺のバグから世界を揺るがす存在へと昇り詰める彼の軌跡を、ぜひ一気にお楽しみください。
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