第9章 - 残留存在
いつも応援ありがとうございます!白石ソラです。
前回の更新で無事に「味覚」を獲得し、天界の日常に少しずつ触れ始めた主人公。
第9章では、第7区に「千羽の嵐鳥」が襲来するという大ピンチが発生します。レベル0の透明な幽霊が、ミカと一緒にどのように嵐に立ち向かうのか。新スキルの進化と、存在度が大きく跳ね上がる覚醒の瞬間にご注目ください!
嵐が来た。
第7区。巨大な嵐。
千羽の嵐鳥の群れ、雲を食いに来た。
普通ならレベル50以上の天使が光輪で嵐を追い払う。
でも今日は人が足りない。誰も第7区に行きたがらない。
誰も行きたがらない片隅だ。
ミカが倉庫に駆け込んできた。
「タリエル!やばい!第7区に嵐!千羽だ!誰も行かない!俺が行くしかないけど、一人じゃ無理だ!」
立ち上がった。存在度0.30%。
鳥一羽も追い払えない透明な幽霊。
でも頭の上のピイがピンクに光っていた。
「行こう」と言った。
「二人で行こう」
第7区。暗い空。
千羽の嵐鳥が雲を食い荒らし、百の穴が開いた。
ミカが光輪レベル18を輝かせた。
鳥たちは逃げなかった。ミカを馬鹿にして、食べ続けた。
初めて、叫んだ。
魂の残響が残留存在と共鳴した。忘れられた者は、忘れられた者の声を聞く。
「出てけ!」
【残留存在 Lv1】が発動した。
誰にも聞こえるはずのない声が、千羽の鳥に響いた。
透明な声が嵐に反響する。
すべての鳥が俺を見た。
透明な幽霊。存在度0.30%。
千羽の鳥が一人の幽霊を認識した。
嵐鳥たちも忘れられた者だった。
雲を食う害鳥、誰も真面目に相手にしない。
だから聞こえた。
忘れられた者には、忘れられた者の声が聞こえる。
その時ピイが光った。
金色の生きた光輪。
俺の体から透明な波が出た。
【残留存在 Lv1】が【残留存在 Lv2】に進化した。
気づかれないスキルが、気づかせるスキルになった。
鳥たちが逃げた。
千羽の鳥が一斉に逃げた。
透明な幽霊の叫びに怯えて。
嵐が止んだ。
第7区、晴れた空。
雲の穴はまだ開いたまま。でも鳥たちは消えた。
「タリエル…お前…どうやったんだ?千羽を一人で。お前レベル0なのに…」
座り込んだ。
存在度が低いと、叫ぶだけで疲れる。
透明な体がさらに薄くなった。
でもステータスが光った。
存在度0.50%。
一気に跳ねた。
千羽の鳥が俺を認識した。
認識されることが存在を強くする。
千に認識されれば、千倍強くなる。
上司が来た。
「お、嵐が止んだな。ミカ、お前がやったのか?一人で千羽を追い払ったのか?すげえな、レベル18で…」
ミカが俺を見た。透明で、上司には見えない。
「二人でやった。俺と幽霊で」
上司は笑った。
「また幽霊か?まあ、止んだならいい。今日は特別休暇だ」
ミカが倉庫に戻ってきた。
「ありがとな。おかげで特別休暇もらえた。存在度上がったか?」
頷いた。
0.50%。半分。
1%まであと半分。
でも今日は大きな一歩だ。
初めての戦い。千羽の鳥との戦い。
負けるはずだった。でも勝った。
透明な幽霊が千羽の鳥に勝った。
遠くで、赤い鏡が光った。
倉庫の窓に、赤い空。
赤い髪の誰かがそこにいて、見ていた。
拍手しているみたいだった。
俺の戦いを見て、拍手していた。
まだここにいる。
戦った幽霊は、まだここにいる。
空の片隅に伝説が生まれた。
千羽の嵐鳥を追い払った幽霊の伝説。
叫び一つで嵐を止めたレベル0の幽霊。
それ以来、第7区では天使たちが時々、5秒だけ残る透明な足跡を見つける。
四度目の進化だった。
叫べるようになった幽霊。
存在度0.50%。
少しうるさい幽霊。
第9章をお読みいただき、ありがとうございました!
ついに初めての戦闘、そしてスキルの進化!幽霊の叫びが千羽の鳥に届き、存在度が0.50%まで一気に跳ね上がりました。「認識されることで存在が強くなる」というこの世界の法則が、少しずつ見えてきた章でもあります。
ミカが上司に「俺と幽霊でやった」と言ってくれたシーンも、二人の絆が深まっている感じがして個人的にお気に入りです。
そして窓の向こうの赤い空で拍手をしてくれている「赤い髪の彼」の存在も、これから物語にどう絡んでくるのか……。
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明日の第10章も同じ時刻に更新します。お楽しみに!




