↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このおっぱいで勇者は無理でしょ  作者: りむ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/51

#43 バストアップ!?④

「……シャリーさん、見ててください」


そう言ってから、私はふと思い立ち、肩にかかる髪を指でまとめ始めた。いつもはそのまま下ろしているけれど、本腰をいれて踊るなら邪魔になる。

せっかくだから、少しくらい雰囲気を変えてみてもいいかもしれない。

この世界には鏡がないので、後ろ髪をまとめるのは完全に手探りだ。指先で髪の量を確かめながら、襟足のあたりで一つに束ね、何度かやり直してから、毛先をくるくると巻き込んでいく。たぶん、ゆるいシニヨンになっている……はず。

最後に髪紐で留め、恐る恐る頭を動かしてみる。落ちてこない。どうやら成功したらしい。


「……どうですか?」

振り返って尋ねると、シャリーさんは答えず、私の姿をじっと見つめていた。


「シャリーさん?」

やがて彼女は、ふっと目を細める。


「……その姿勢よ、ルリ」

「え?」

そう言われて、自分の身体を意識する。


髪をまとめるために両腕を上げたり、後ろへ手を回したりしているうちに、いつもの猫背がすっかり消えていた。肩が自然に開き、背筋が伸びている。

しかも、いつもなら顔の横や肩にかかっている髪がなくなったことで、胸を隠してくれていたものが何もなくなっていた。


「あ……」

思わず両腕を下ろしかける。


「待って」

シャリーさんが静かに制した。露わになった白いうなじから鎖骨、そしてノーブラのドレスを凶悪なまでに押し広げる双丘へ、彼女の琥珀色の視線が吸い付けられている。


「今のままでいいわ」

「で、でも……髪で隠せないと、目立ちすぎるような……」

「ええ。目立つわね。でも、もう隠すことを意識する必要もなくなるわ」


「さあ、ルリ。もう一度よ」

シャリーさんに促され、私はゆっくりとステップを踏み始めた。

髪をまとめたことで顔まわりがすっきりしたからだろうか、さっきよりも動きに違和感がない気がする。


「……そう、その調子よ」

シャリーさんがリードしながら頷く。

それでも、後ろでまとめた髪がどんな形になっているのか、やっぱり気になる。


(……あれ?)


いつの間にか私は、胸を隠すことではなく、髪型のことばかりを考えていた。

やっぱり私は、胸がなくても結局は他のことばっかり気にしちゃっている。

そう思うと、少しだけ可笑しくなった。


私は一度、深く息を吸った。今考えるべきなのは、髪型ではなく身体の動かし方だ。

運動不足なのはどうしようもない。胸が重いのも今さらどうしようもない。


(動けないなら、動かなくてもいいんじゃない?)


私は、さっきシャリーさんに教えてもらったことを思い出す。

身体を隠さない。重心を意識する。相手の視線を逃がさない。


そして――自分から、主導権を握る。


「……シャリーさん、見ててください」


シャリーの指先が触れていた腰のラインを意識し、わざとゆっくりと、彼女の身体に自分の質量を預けるように密着させる。そのまま、シャリーさんの肩に腕を回し、耳元で熱い吐息を漏らした。


(……これだ。私にしかできないことをしないと!)


薄いドレス越しに、私の双丘の柔らかい肉がグニニュッと生々しく形を変えて、シャリーさんの胸の膨らみをこれでもかと覆い隠す。シルクの薄い布地を挟んでいるのがもどかしいほど、お互いの肌の熱がダイレクトに伝わってくる。

今までなら、ここで慌てて離れていた。恥ずかしくて、胸を隠して、顔を伏せていた。


シャリーさんの瞳が、驚きにわずかに見開かれる。

「あなた、思っていたよりずっと」


そこでシャリーさんの言葉が途切れた。私は首を傾げる。


「……なんでもないわ」

シャリーさんはそう言ったものの、視線を逸らさなかった。

むしろ、さっきよりも私の顔をじっと見つめている。


興が乗り、さらに一歩踏み込もうとした瞬間。

「……っ、う、あ……」


右脚に力が入らない。次の瞬間、電源が切れたかのように、膝がガクンと折れた。


「えっ、ちょ、ルリ!?」

「……ひくっ、うう……はぁ、はぁ……」


身体が前へ傾く。私は慌てて踏ん張ろうとしたものの、限界を迎えた脚はまるで言うことを聞かない。格好良く決めるはずだった脚の筋肉が、ついに「もう一歩も支えられません」とストライキを起こしたのだ。


「む、無理……」

「ルリ? 冗談はやめて。今、いいところだったでしょう?」

「……すみません、今日は、もう……。脚が、一ミリも、動かなくて……っ」


シャリーさんの肩を借りて、私はズルズルと床に膝をついた。

さっきまでの魔性の女きどりのオーラは霧散し、そこにはただ酸欠で真っ赤になった“運動不足の肉の塊”が転がっているだけだった。


「……また別の日に、お願いしますっ。今は、湿布が、欲しいです……」

「あはははは! 本当に、あなたという子は!」


教会の小部屋に、シャリーさんの今日一番の爆笑が響き渡った。

誘惑の作法は完璧。けれど、エンジンが原付レベル。


汗だくになり、息も絶え絶えに私が頭を下げると、シャリーさんは意外にもあっさりと頷いた。


「いいわ。基礎体力がなさすぎるもの。まずは背筋のトレーニングからね」

「ヒェッ……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。