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このおっぱいで勇者は無理でしょ  作者: りむ


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25/27

#25 胸の使い方②

ギルドの重厚な扉を押し開けると、そこは戦場のような騒がしさだった。

魔物急増の噂は本当らしく、掲示板の前には冒険者が群がり、怒号のようなやり取りが飛び交っている。


私はその少し後ろから、そっと掲示板を覗き込んだ。


(……うわ、物騒)


討伐。討伐。討伐。

魔物の名前と、危険度と、血なまぐさい注意書き。


(これは無理。完全に無理)


でも、掲示板に貼られた依頼は、討伐だけじゃなかった。


商隊護衛。旅人の同行。


(……護衛、多くない?)


文字を追っていくうちに、自然と理解する。

この街の外は、安全じゃない。


城壁の内側は平和でも、一歩外へ出れば魔物が徘徊している。

街から街へ移動するだけでも、護衛か戦闘力がなければ命が保証されない世界。


そして、目に入る報酬額が、どれも高い。


(……報酬が高いってことは)


依頼主が支払っている費用も、それだけ高額だということだ。

護衛を雇うにも、魔物を討伐してもらうにも、命の値段がそのまま金額になる。


(なるほど……だから)


王都で私専用の防具を特注するなんて、現実的じゃないんだ。

こんな世界で“安全を金で買う”のは、想像以上にコストが重い。


(私が勇者するためには……時間、距離だけじゃなくて、費用もかかるんだ)


魔物を倒す者と、魔物から守る者。

この街は、その両方で成り立っている。


……でも、これ全部、もし“勇者”が魔王を討伐したら、解決する問題なんだ。

魔物は減って、護衛はいらなくなって、街道は安全になる。

報酬も、依頼費用も、今みたいな異常な高騰は収まる。


そうなったら、王都で私専用の防具を特注することだって、きっと現実的になる。

でも、その時には、もう防具いらないじゃん。


……私には世界を変えることはできそうにない。


自然と戦闘系の依頼を視界の端に追いやり、比較的地味な依頼だけを拾っていく。

その中で、ひとつだけ、妙に目を引く紙があった。


《材料運搬依頼》

 フレイン郊外農場→教会

 取扱注意

 報酬:金貨○○枚


(……ん?)


運搬。戦闘なし。

しかも距離は街の外れから教会まで。


一見すると、完全に初心者向けだ。

それなのに、報酬額が明らかにおかしい。


(……討伐依頼と同じくらいの金額、ない?)


思わず、紙に顔を近づける。

小さな文字で書かれた注意書きが目に入った。


《※内容物は軽い衝撃で破損・爆発の恐れあり》


……あ、なるほど。


(誰もやりたがらないやつだ)


簡単そうに見えて、失敗したら即アウト。

戦闘力はいらないけど、神経を使う。

しかも護衛をつける余裕もない。


(だから残ってるし、報酬も高い、と)


私は依頼書から視線を上げ、受付のほうを見た。


……いた。

よりにもよって。

私の視界に、最悪の、あるいは運命的な人物が飛び込んできた。


(……コリン!)


受付の列の先にいたのは、私の勇者除名の通知に立ち会っていたギルド職員、コリンだった。あの時、勇者登録却下の現場にいた、余計な一言製造機。

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