17.放課後
『タウ、読みたい本ある?』
『そうですね…。まずはお嬢様がお読みになりたい本をお読みになってはいかがでしょうか』
うん。リクエストなしっと。
今は読む気分ではないのだろうか。
図書館に行きたいって言ってたのに、いいのだろうか。
すると、私の思考を読んだかのようにタウは答えてくれた。
『私が読みたい本は、少し時間を必要としますので』
なるほどね。
たしかに、タウが読む本は長そうなイメージがあった。なんでだろう。まあいいや。
「じゃあ、これとか読んでみよっかな…」
目の前にあった棚から取り出したのは、藍色の表紙に金色で文字が書かれている本だ。
「なにこれ…読めない…」
私の知っている言語だ。いつも通りの。
そのはずなのに。読めない。
『これは古語ですね。座学で学ばれるまではお待ちになっては?』
なるほど。じゃあ他のにしよう。
「ならこれとか…」
題名が読めた本をとってみた。
というか、私の好きな本があった。
深紅の表紙に金色の文字で書かれている。
『魔王の軌跡…。例の本ですか』
タウは呆れたように言っているが、私にとって安心できるようなものなのだ。
ここにあるとはねぇ…。反王政派だし、ないかと思ってた。
私はペラペラとページをめくってみる。
さっと読んでいる間に、違和感を覚えた。
「これ、私が知ってるのよりも長い…?」
そう。私が孤児院で読んでいたものよりも長い。私が知っているのは、これの半分ほどまでだ。ちょうど、ページの色が少し変わるところ。
『魔法学院での生活編、ですか…。となると、書いたのはおそらくアレイス様あたり…』
それも気になるけど…。
くっ。ちょっと待って。やばい。
タウが他の人に様ってつけて呼ぶの初めて聞いた…。
思わず笑ってしまう。レアすぎて。
『お嬢様。私は、真剣に取り組んでいるのですが…?』
タウは少しいつもより声のトーンを落として答えてきた。
これはやばい。キレかけてる。気をつけよ。
それはさておき、とりあえず中身が気になるので、続きを読んでみることにした。
しかし、すぐに違和感に気がつく。
「もー!これも古語じゃん!」
読めないのだ。つまり、古語を覚えないと何も進まないのだ。
『タウ、古語教えて!』
『仰せのままに』
よし、どうしようもないし、頑張って覚えよう。
とりあえず今は他のことをしよう。
「アミー、お待たせ。帰ろう」
覚悟を決めたところで、レイが帰ってきた。
ちょうどよかった。帰ろう。
「そうだね」
そう思い、私は同意の言葉をつぶやいた。
私たちは、廊下を歩いていく。
部屋のある階が教室と違わないから楽でいい。
レイによると座学は10講座らしいから、その間は楽に移動できるだろう。
ちなみに、属性系の授業は2講座ずつ、戦闘は5講座らしい。
「アミ、聞いてた?」
レイがこっちを見て言う。
思わず考え込んでいた。つまり、聞いていなかった。やらかした。
「ごめん、何だった?」
「……部活の話。この学院には部活があるんだよね」
ほぉ。部活。なんかワクワクする響きだ。
「どんなのがあるの?」
「文化系と運動系があるんだ。チラシ持ってた気がするから、ちょっと待ってて。」
ちょうど部屋の前に着いたため、レイは407号室に入っていき、私は廊下で待っていた。
そして、しばらくするとレイは帰ってきた。
「これ。よかったらもらっていきな」
レイが渡してくれたのは、半分に折られた1枚のプリント。
開いて見てみると、表のようなものがある。
部活名、内容、場所、時間というように書かれている。
「ありがとう。考えてみる」
「ちなみに、全生徒加入必須だから。僕はね、ここにいるよ」
そう言ってレイが指差したのは、戦闘美学部。
……いや、意味わかんないんだけど。何それ。
「実はここ、タウも入ってたって噂なんだよね」
えっ、今タウって…。
「まあ、ここ厳しいからおすすめしないけど」
レイは何もなかったかのように言い、去っていった。
私は、疑問符を頭に浮かべながら帰ることになった。
408号室の扉を開ける。
部屋に入り、リビングまで歩いていく。
時計を見ると、今は13時。
昼食の時間を逃していたのか。
道理でお腹が空いているわけだ。
「お弁当、食べるかぁ」
クウが作ってくれた弁当を食べる。
部屋には誰もいなかった。




