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「スキル????」  作者: 古来 冷翠
2.魔法学院編
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16.不穏の始まり

そんなところで、アレイスの声がはっきりと響く。


「はい。テスト終わり。後ろから自分の解答用紙を後ろ向きにして回してきてー」


この指示、わかりにくっ。

後ろ向きにして回すってさ、自分のを上下どっちにしたらいいかわかんないのよ。説明ほしい。

まあ、一番後ろの席だから問題ないけどね。

私が前の人にテストを回して数十秒後、すべての紙が集まったようだ。


「じゃあ、本日の過程は終了。知ってると思うけど、結果は明日にここの教室の入口でもらえるから。はい、解散」


解散の指示のあと、生徒はだんだんと話し出す。友達がいるのだろう。

なんか、寂しい気持ちもある。

でも、私に友達はいないからなぁ。帰ろう。

そう思って席を立ち、歩き出したときだ。


「ねぇ君、新入生?」


すれ違った席の人に話しかけられる。

黒い髪をまとまったショートのようにした、独特な赤い目を持った女の子だ。もちろん、私はこの子を知らない。何の用だろう。


「そうですけど…何か用ですか?」


そう言って返すと、


「いやぁ、用ってほどじゃないんだけどさ。僕、今日がこの教科初めてなんだよ。だからよかったらさ、明日から一緒に授業を受けない?」


え、それってつまり…。

思わず彼女を凝視する。

すると少し照れくさそうに視線を逸らして、


「友達に、なって…?」


と言った。

いや、かわいい。

言ってから恥ずかしがって顔を隠してるところまでかわいい。


「もちろん。よろしくお願いします」


私は思わず微笑んだ。

きっと、まわりから見たらあたりにはお花が飛んでいるだろう、と思うほどに穏やかに。


「…!よろしく。タメでいいよ。僕はレイ。君は?」


レイさんかぁ。

きっと、タメで話せるまでには時間がかかるんだろうなぁ。いつの間にか変わっていくのだろうか。

なんか、口調は少しぶっきらぼうだけど、奥底は優しいっぽい、気がする。


「私はアミ。レイさんは部屋、どこ?」


言ってから気づく。

いくら帰ろうと思ってるから部屋の向きを教えてもらいたいとはいえ、初対面の相手にこれを聞くのはさすがに良くないのではないだろうか。


「407号室。眺めのいい部屋がほしくて」


あ、よかった。気分を害してはいないようだ。

というか、えっ、お隣さんじゃん。


「私、そこの隣。408号室」


そうやって言うと、レイは目を輝かせた。


「おー!ってことはイソクとクウも一緒だ。よかった」


よかった…?

私はよほど不可解な顔をしていたのだろうか。レイは慌てたように、


「いや、近くだとね?一緒に授業に行きやすいというか…ね?」


なるほど。友達として、それは大切だろう。

私は、考えることを放棄した。


「すみませーん。どいてもらっても?」


後ろから人がやってきたようだ。

そういえば、ここは通路だ。


「すみません!すぐ去ります!」


そそくさと私は下に降りた。


「アミ、ちょっと待ってて」


レイは慌てて荷物を片付け、下に駆け足でやってきた。


「おまたせー。待っててくれてありがとう」


「全然いいよ。じゃあ、行きますか」


そう言って私たちは隣になって歩き、教室を出る。

廊下に出てすぐ、レイはとあることを思い出す。


「そうだ。僕、図書館に用があって。どうする?」


図書館かぁ。

タウも行きたいって言ってたし、行ってみたほうがいいかも。


「ついて行くね。いい?」


「よし、じゃあ行こう」


レイによると、図書館はすぐそこらしい。

だって、この教室は廊下の奥に1番近いから。

そして、廊下の奥には大きな扉、それしかない。


レイは扉に手をかけ、私にすぐ中が見えるようにした状態で扉を開け、少しかっこつけたように言った。


「いらっしゃい。ここが図書館。知の楽園だ」


扉が開いて1番に目に入ったのは、大きなシャンデリア。天井にかなり近いところに来ていたらしい。そして、その奥にはとても大きな本棚が置いてある。床には深紅の絨毯が敷いてあった。

私は深呼吸をしてから中に入る。すると、いっきに静けさが感じられた。


辺りを見渡す。


高さからして3階分ほどが使われて図書館になっているのだろう。らせん階段と合体したような形の図書館だ。そして、1番下の部分にはカウンターがある。

そこから1階分上がった、2階の部分には、机がたくさん並んでいる。自由に読書ができるスペースだろう。勉強をしている人もいるっぽいが、主に読書用、という感じだ。


「すごい…」


私は思わずつぶやいていた。

この気持ちはなんというか、感動だ。

ここまで豪華な空間があるとは。


「でしょ。好きな本を見てていいよ」


そう言ってレイは階段を降りて、カウンターのほうへ向かった。

好きな本と言われても、何があるのかわかんないからなぁ。そう思って少し、最上階を歩いていたとき、タウに話しかけられる。


『お嬢様。少しよろしいですか』


……お嬢様……?えっ、何事?

……あ、そっか。従者のやつか。

私は1テンポ遅れてようやく気がつく。今さっき決めたのに。


『なにか?』


私も、少しお嬢様らしく答えてみた。

どう返事してくるかな。考えていた矢先、


『彼女をあまり信用なさらぬよう』


えっ…?よくわからないことを…。

何をいきなり、と思っていたところ、


「なにか本をお探しで?」


と話しかけられた。

私はパッと意識を現実に戻す。

話しかけてきたのは、このとても身長が高い男性だろう。

185cmくらいあるのではないか。

黒い髪に赤い瞳が特徴的な…なんか見たことがある気がする。

服はこの場に似つかわしい、白のカッターシャツに黒のズボン。黒のネクタイがピシッとしている。

なんだろう。違和感が拭えない。


「おや?本をお探しではないのですか?」


いや、それどころじゃない。怪しまれる。


「実は、初めてきたものなのでわからなくて…」


私はおどおどとしながらも答えた。

よし、嘘ではない。

立ち止まっていた理由でもないけど。


「そうですか。では……こちらをご覧ください」


そう言って彼は、1冊の本を取り出した。

染色をしたのであろう白色の革表紙の本だ。

それを丁寧に開き、私に見せてくれた。


「あなたには、文章のどこまでが読めますか?」


?どういう意味だろう。

私の目に写っている文は、20行。

それが聞きたいのだろうか。


「ここまで…」


私が指差すと、少し驚いたように彼は表情を変える。その後、本を静かに閉じた。


「それはそれは。驚きました。あなたのような方がこの学院に入学してくるとは。これは面白いことになりそうですね」


そう言った彼の表情は、なにか陰謀を含むような笑みだった。


「それでは、ごゆっくりどうぞ」


彼は去っていき、私はひとりになった。

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