15.テスト
「てなわけで、授業は以上。起立」
正直眠くなってきたなぁと思っていたところで、起立の号令が聞こえた。
「礼。着席」
着席した、次の瞬間。
みんなはざっと自分のノートを取り出し、見出す。
『えっ、ノートとか必要なの…?』
私は驚愕する。でも同時に、納得する。
そりゃあ、テストがあるんだ。
メモも必須だろう。
『そうだな。あったほうがいいだろう。今日にでも買いに行くか』
『そうだね…今日のテスト、どうしよう』
先の心配より、今の心配。
できれば今日でこの単元は合格したい。
『俺が分かるところはなんとかしてやる。正直ここの座学はそこまで意味がない』
おぉ…助かるけどこの授業がめっちゃ貶されてる…。
「あと10分でテスト始めるよー」
アレイスが呼びかけをする。
そんな事言われても私にやることはない。
『タウ、任せたよ』
言えるのはこれだけだ。
「よし、テストは渡ったね。始めようか」
前の席からテストが回ってきた。
見た感じ、ひたすら用語を書くというものだ。
「時間は10分。よーい、始め」
まずは、一番上にあった名前から書く。
そして、1番から問題に取り組んでいく。
地図が描かれていて、1から6まで、数字が振ってある。
『えーと、1番は魔法学院だよね…2番は魔王城。3番は……え、海に名前ってあるの?』
『1つしか海がないから、国名でいい。フィシチニ海。以上』
『国名ってフィシチニってこと?』
『そゆこと。てなわけで一番下、フィシチニな』
聞いてなかった…。危ない。
『4番は…どこよ、これ』
魔王城の近くの、謎の空間が指されている。
『立ち入り禁止区域って、説明あっただろ。残りはわかるか?』
『いや、全く』
ほんとに、説明を聞き飛ばしてたせいでほぼわからない。
『じゃあ、今から読み上げるから書き写せ。5番、アンデット地域。6番、スライム地域』
よし、タウのおかげで1番は埋まった。
大問はあと3つ。
合格点がいくつなのかわからないが、順調な気がする。
『次の大問は解けそうか?』
タウに問われるが、答えはわかりきっているだろう。
『いや、全く』
ダンジョンの場所を地図に示せ、とあるけれど、絶対そんなこと話してないよね、と言いたくなる。
『これはなぁ…俺が知ってるときと違う可能性があるんだよなぁ…。ダンジョンというのが、人工のものを示すのか、天然のものを示すのかでだいぶ変わる』
言ってることが理解できていない。
だって、ダンジョンという言葉も聞いたことがなかったのだ。
『とりあえず、俺が知っているところに全て印をつけよう』
今さらだけれど、妙に協力的だ。
今まであっただろうか。
『……おーい、聞いているか?』
タウに話しかけられる。
聞き流してしまっていたようだ。
『ごめん。もう1回お願い』
『はいはい。まず、上の大問で言う3番、5番、6番のところ。そこは天然のものだ。…そうだな。人工のものは…。コンパスって持ってるか?』
いや、場所がわかるやつでしょ?
シンに預けたに決まってるじゃん。
すると呆れたように、
『円を描く道具のほうだ。持ってるだろ?』
と言った。そっちね。
『そっちならあるね。それで、何するの?』
『王城に針を刺して。そこから、ギルドまでの距離を測る…ギルドはそこだ。あぁ、もうちょっと左の…うん。そこ』
理解。王城の真南、距離はまだ少ないほうだ。
『それで円を描け。……できたな。この道路と交わっている、こことそことそこ…。よし、そんな感じでいい』
指示にひたすら従っていたら、完成したようだ。
『じゃあ次は……用語集か。さっさと終わらせるぞ。1番、等高線。2番、図書館。3番、海に近いから。4番、暖かくなる。5番、異世界』
おぉ、いきなりたくさん。
言葉に合わせて書くだけで精一杯だ。
『最後の大問。外国についてだな。よし、いっきにいくぞ。1番、ウェツギ。2番、カコイム。3番、アーヴェキニスア。4番、ギカワデジア。以上』
完成した。
制限時間は、まだ2分ほどある。
少し会話でもするか。暇だし。
『なんでタウはこんなに知ってるの?』
『昔とカリキュラムはあまり変わっていないからな。俺のときも頑張って覚えた。国名とかは、お前が小さいころから情報収集をしていた』
なるほどぉ…。それは初耳だ。
『なんでこんなに教えてくれるの?』
なんてね。こんなことを聞いたら、もう教えてくれないだろうか。
『あぁ、今日の夜にでも言おうと思っていたんだ。交換条件だ。俺はお前が点数をとるサポートをする。代わりに、図書館に言って本を読んでくれないか。俺が指定する』
タウの指定する条件は、いつも特殊なことが多い。
だから、それくらいならいっか。
タウのサポートなしでは、合格に何ヶ月かかるかわからない。今日のテストの感じからして、なかなか難しいものが多そうだ。
私が合意しようとすると、タウが面白いことを言い出した。
『せっかくなら遊ぶか。…そうだな。あれでいくか。アミ、俺を従者として扱え。テストを全て終えるまで。代わりに、テストが終わって、図書館のターンになったらお前が俺の従者となる』
プライドの高いタウがそれをするとは、思ってなかった。でも同時に、二度とないであろうチャンスだと思った。
『今後、これを再度することは?』
もしあるのなら、期待できる、ということだ。
この条件はかなり面白そう。
『可能性あり』
『よし、乗った!』
なぜこんなに軽く決まるのか。
実は、たまにやっているのだ。昔から。
時には警察と犯人、時には相棒。
今回で何回目だろうか。
すべては、演技力を伸ばすためらしい。
そんなの、どこで使うんだか。
『それじゃあ、これからよろしくね、タウ』
『仰せのままに。ご主人様』
おぉ。かっこいい。
こういうのも、たまにはいいね。




