12.反王政派
「私と今の王…スイウはあんまりいい仲じゃなくてね。1回、私が間違えて王城に向けて魔法を撃ってしまって…」
おぉぅ、なかなかやばい話が来そうだ。
「だってさ、せっかくのお手本を見せる機会だったんだよ。かっこよくやりたいじゃん?……言い訳だけど。まあ、その後からスイウのことをいろいろ知ってくんだけど…。あの人さ、魔王激推しなのよ」
えっ…そうだったのか。話が合いそうだ。
「昔のここの院長が間接的に魔王を育てたようなものなんだからさ、もうほんとによくないと思うんだけど。私はあれのことが嫌いなんだ。あんな人殺しのどこがいいと言うのか」
『ふーん、へぇー。言っちゃうかぁ、それ』
あっ、やばい。タウさんがだいぶ怒っていらっしゃる。
そんなことはつゆ知らず、話は続く。
「てなわけで、私は反王政派と言えるわけだ。ここからが本題」
私は、一度姿勢を正す。何が来るのだろう。
「君たちは、スキル持ちだ。噂で聞いたところだと、今は王のほうから依頼をもらっている。あってる?」
リゼのほうをちらっと見ると、頷いていた。
「うん。じゃあ、君たちは今王政派となるわけだ。私が筆頭にいるのだから、魔法学院はどっちかと言うと反王政派だ。ギルドの依頼を受けるのも禁止だし。これが何を意味するか、わかる?」
政治的なゴタゴタがあるということかな。
「多分わかってそう。じゃあ続けよう。私的には、君たちに入ってもらいたい。これから伸びるよ、君たちは。依頼を受けたからって、王政派と言い切れないし。君たちが、この話を聞いてどう思ったか。それが大事なんだ。どうする?」
「少し、時間をください」
リゼが答えた。
「えっ、私はいいと思うんだけど」
私は思わず、リゼを見る。
「まあ、悪くないけど…ギルドと繋がれないのが厳しいかな」
「でも、少しの期間だし、大丈夫じゃない?」
金銭面の話だろうか。だとしたら別に…。
「…うーん、そうだね………大丈夫な気がしてきた。よし、わかりました。私たちも大丈夫です」
すると、アレイスは微笑んで、指を鳴らした。
「お呼びですか」
現れたのは、レンさん。実は暇だったのか?この人。
「寮を案内してあげて。部屋はあそこで。授業の説明も。あと、足らないと思うことはいろいろ言っておいて」
「かしこまりました」
レンさんは頭を垂れた。
「じゃあ、行こうか。君たち。名前は…」
「そういえば聞いてなかったね」
アレイスも、そういえばというように思い出す。
たしかに聞かれてなかった。
よく入学を決めたよね。この人。
「私はリゼ。こっちは…」
「アミです。よろしくお願いします」
すんなり挨拶できた。よかった。
「僕は、レン。よろしく」
レンさんは、扉を開けた。
「案内するよ」
レンさんの後ろについて、私たちは校舎内を歩く。
怖いほどに人がいない。
「人、いないんですね〜」
リゼも同じことを言っている。
「そうだね、今は授業中だし。最初のテストで受かってる人は、もうほぼいないからね」
なるほど。
「最初のテストってなんですか?」
私は思わず聞いた。
すると、レンさんはにこやかに答えた。
「ここの授業は、テストの結果で決まるんだ。1日の中で、授業、練習、テストという感じで時間割がある。ただ、最初の授業は例外で、テストを1回受けるんだ。まぁ、授業は基本繰り返し行われているから、テストに受からなかったらもう1回チャレンジ。まあ、その時以外も先生に頼めばできなくはないけど」
理解。でも、私にできるかな…?それ。
「着いたよ。ここが寮がある棟」
レンさんが立ち止まったのは、大きな白色の扉のある、廊下の突き当たり。
「ここからが別棟になっててね、ほら、渡り廊下」
扉の先にあったのは、落ち着いた赤色のカーペットの敷かれた廊下。白の壁で、窓がたくさんついている。外を見てみると、きれいな庭があって、そこで風魔法を使っている生徒が数人いた。
しばらく歩くと窓はなくなり、廊下は突き当たりとなった。しかし、そこには魔法陣があった。
「4階の部屋をご所望だから…4階の魔石を入れる」
近くにあった石板のようなものに、持っていた魔石をはめた。すると、魔法陣は淡く光り出した。
「はい、ここに乗って」
怪しいことは怪しいが、まあ大丈夫だろう。
魔法陣に乗ると、目の前が白くなった。
「大丈夫?着いたから、歩くよ」
次に目を開くと、あまり変わらぬ景色があった。
『転移したな。おそらく4階に来たのだろう』
なるほど。階段代わりと言ったところか。
「この先の…どこだっけなぁ…あっ、そうそう。ここ」
かなり歩いたと思うところで、レンさんは立ち止まる。
「408号室ね。4人部屋だけど、よかった?」
408と書かれた木のプレートがかかった部屋だ。
というか、他の人もいるということが重要すぎる。
「問題ないですけど…」
どんな人だろう。
見た感じ、女子も男子も同じ棟だ。
男子と同部屋…気まずくなりそうで嫌だ。
「うん、それじゃあ、入るよ」
扉を開くと、玄関がある。
靴箱と、左右ひとつずつに扉。正面にも扉がある。
廊下は木でできていた。
「ここで靴脱いで。欲しかったらスリッパも使っていいよ」
私はとりあえずスリッパを履いた。
いらなくなってから考えよう。
「左側がお風呂とお手洗い、右側が収納だよ」
扉をそれぞれ開きながら言った。思ったより広い。
「そして、正面が部屋」
開けられた部屋は、広かった。
床は藍色の絨毯、二段ベットが2つ、机が4つ、その奥にはリビングのような、長机とソファーのある空間がある。そして、更に奥にキッチンがある。
「まあ、困ったらいろいろ買い足してね。そろそろ授業が終わるから、2人も帰ってくるはず…」
そう言ったところで、声が聞こえてくる。
「ただいまー」
「あれ?靴あるよ、クウ」
「たしかに。3人分…?」
ルームメイトが、帰ってきたようだ。




