107.ショッピング
〜前回のあらすじ〜
黄色のコンパスの指す先にあったダンジョンの攻略が終わりましたが、その犠牲としてリゼの片腕と右目がなくなりました。それはさておき、ショッピングに行こう!……さておき?
「わぁ!楽しみすぎる!」
今までなかなかショッピングなど行けなかったであろうアミが、一番はしゃいでいる。
「ねぇ、前の報酬でいろいろ買っていい!?」
「もちろん。まだ時間はたくさんある」
今は朝の9時。
ダンジョンの中で、夜を過ごしたっぽい。
ギルド前は活気に満ち満ちている。
「でもまずはさ、リゼの目をなんとかしないと」
シンに釘を刺されていた。
「当ては?」
私が聞くと、
「ギルドに」
そう言って、後ろのギルドを見た。
「ぴったりじゃん。アミ、すごいよ」
素直に感心だよ。こんなところまで考えていたとは……とからかってみた。
「いや、違うから!たまたまだから!」
弁解しているが、うん。
からかいたい。
「そっかそっかぁ」
「違うから!」
「うーん、元気だね。どうせならプレゼントくらいしようと思ってたんだけど…」
「「すみませんでした」」
シンは偉大だった。
ギルドの扉を開く。
そして、シンについていくと、回復所についた。
「ここは…ショップ?」
アミがつぶやく。
「うーん、ちょっと違う。回復が必要な人が集う場所。ここならあるかなと思って」
たしかに。ここなら、かなり良いのがあるかも。
「すみませーん、誰か、治癒士はいますか?」
シンが大きな声で言う。
「はい!……ってリゼさん!大丈夫ですか!?」
今、私は片目を閉じている状況だ。
片腕もない。よほど重症に見えることだろう。
腕は諦めている。でも、右目だけなら。
「なんとか。君は、回復魔法を使える?」
「……怪我の状態によります。見せてもらってもいいですか?」
とのことなので。
「ごめん。ちょっと時間かかる」
「「いいよー」」
「じゃあ…立ちっぱなしでいいですか?」
「いいよ。お願い」
そう言って私は、右目を開ける。
「うわぁ……何があったんですか…」
「風魔法かな?やられた」
「そうなんですね。でもこれは…かなりの魔力で傷つけられてますね。この傷をつけた魔物か人か知りませんけど、それって、まだ生きてます?」
タウのことだろう。
「生きてるけど、なんで?」
「そうなると……遠くまで行ってもらわないと、薬はないですね。ずっと南に行ったところの、薬屋。そこのポーションなら…」
どこ?
「場所わかんないから、この地図で教えて」
シンが、そう言って地図を出した。
「あっ、地図あるんですね。えーと、ここ」
治癒士のお姉さんが指したのは、南のダンジョンのある森のすぐ北だった。
「ちょうどいい。よし、明日にでも行こう」
シンが勝手に段取りを決めていく。
「そうだね。アミもいい?」
「……っ!うん、いいよ」
話聞いてたか?聞いてなさそうだな。
「ありがとう。お代は私が……」
私がお金を取り出そうとすると、
「こんだけあればいいでしょ。帰るよ」
私を制止したシンは、銀貨を1枚出していった。
「ちょっと、私が出すって」
「いいよ。僕の責任でもある」
シンの責任?
タウのしたことはシンの責任だとでも思っているのだろうか。
優しいけど、後で痛い目見そうなタイプだ。
「わかった。ありがとう」
こういうのは、素直に受け取っておこう。
ギルドを出た私たちは、次の計画を立てる。
「とりあえず、眼帯でも買いに行こっか」
「いいじゃん!小物売ってるところってどこだろう」
アミは…行ったことないか。
「前行った服屋の隣。行こ」
ギルドから、街の中心まで歩いていく。
「いらっしゃいませ…お客様!?どうなさってる方で!?」
小物店に入った途端にこれだった。
ちなみに、ここに来るまでに2桁の人には振り返られただろう。よほど目立つのか。
「眼帯って売ってます?」
「あー、それだと、こちらに…」
メガネと一緒に並んでいた。
「私選んでるから、シンとアミは他の見てていいよ」
「わかった!」
アミはるんるんで歩いていった。
それに、シンもついていく。
「まあ、見るだけだけど…」
知ってる。シンは買わないだろう。
置いてある眼帯は、シンプルなのが多い。
横に飾りが置いてあるから、つけたい人はどうぞーみたいな感じだろう。
「おそらく短期間だし、これでいっかな」
手に取ったのは、包帯だ。
うん。普通の眼帯でもなんでもなく、包帯。
1日しかないんだし、いいでしょ。
「よし、決まり。あとは、アミだね」
アミの向かった方向に歩いていく。
アミが見ているのは、ブレスレットやネックレスが置いてあるところだ。
「アミ、決まった?」
振り向いてくれた。
「うーん、どうしようかなって。やっぱ、戦闘の邪魔になると嫌だし、やめとこっかなって」
そんな理由で諦める必要はない。
多分、知らなかったのだろう。魔術具、と呼ばれる、魔導具の下位互換が存在することを。
「じゃあさ、こういうのにしようよ」
私は、魔術具のコーナーに行き、指輪を取ってくる。
「指輪なら慣れてなくても戦闘の邪魔にならないし、魔術具なら役に立つよ?」
「たしかに!種類ってどれくらい?」
そう言われて見てみると、結構ある。
「うーん、かなりあるね。用途は?」
私が聞くと、シンが答えた。
「アミは防御があんまり得意じゃないし、防御にしよう。結界張ってくれるやつ」
シンが手に取ったのは、緑の魔石の付いた、銀の指輪。
「アミの瞳の色にぴったりだ」
そう言って、シンが笑った。
「ならさ、シンは攻撃のじゃない?ほら、これとか」
なんかアミを取られた気がして釈然としないため、私はシンのために選んだ。
青い魔石の付いた、銀の指輪だ。
「いいね。氷魔法か…」
シンも決めたみたいだ。
「せっかくなら、リゼも!」
そう言ってアミが選んでくれたのは、黄色の魔石が付いた銀の指輪。
なんか、お揃いって感じ。
「ありがとう。じゃあ、お会計…」
そう言って会計に向かう。
「合計、銀貨8枚です」
おぉ、思ったより高い。
「どうぞ」
隣から、シンが銀貨を出した。
「別にいいのに」
「僕は嫌だから」
そういうところが、優しいんだよなぁ。




