108.農業
〜前回のあらすじ〜
明日は薬屋に行くことが決まった。小物の買い物も終わった。さて、夕食の用意でもするかぁ。
「よし、指輪も買えたし、あと買いたいものは?」
道に出てから、私は2人に問う。
「食料品だけ。僕が買ってくるから……農作業をしておいて」
意味がわからないことを言い出した。
「いやぁ、米がなくなってきててさ。育てといて」
多分面倒なことを押し付けられた。
今までの経験からして、絶対そう。
「……育て方わかんないからさ、ねぇアミ?」
断る口実を作ろうと、口を開く。が、
「大丈夫。タウが教えてくれるって」
くっ…。そういえばあいつがいた。
空気を読んでくれという気持ちと、あいつに教えてもらうというなんとも複雑で嫌な気持ちになるが、仕方がない。
「……じゃあ、アイス買ってきて。高いやつ」
「わかった。じゃあ、お願いね〜」
シンが上機嫌で市場に向かう。
あーあ、これは面倒なことになった。
私は歩きながら包帯を巻いた。
片方だけでいいから、斜めに巻く。
よし、完成だ。案外上手くできた。片手だと厳しいかと思ったが、よかった。
「じゃあアミ、転移魔法頼んでもいい?」
「わかった。行くよ!」
ついたのは、魔王城。
「魔王さん、教えてよ。お米の育て方」
しばらくして。
「うーん、あんま気が乗らないって。口頭で伝えるから頑張れって」
あのやろっ……。
「まあ、いいでしょう。畑はどこ?」
また少しの沈黙があってから。
「……ないから、作れと」
アミも少し呆れたような声で言った。
「おい、魔王。出てこいや。ぶっ飛ばすぞ」
「タウ、召喚」
アミもさすがにキレたようだ。
タウが現れる。
「……農作業は基本、向こうの家でやっていた。だから、ここにはない。ということで、転移する」
魔法が急に発動した。無詠唱もできたのか……そんなことを思いながらも、私は転移先へ注意を向けた。
次に目を開いたら、そこは山奥だった。
街が見下ろせる。おそらく、北西のほうの山だろう。
「ここには何が…」
そう思って周りを見ると、木々の間に家があった。もっと右に、倉庫があった。まさか。
「魔王の、実家?」
私が考えうるのは、それだけだった。
シンは行きたがらなかったし、イッシュも教えてくれなかった。
「そうだ。……こっちだな。よし、案内は終わりだ。あとはアミに任せる。俺は帰る」
そう言って、消えた。ずるい。
なにはともあれ、畑に着いた。
「まず、何するの?」
「えーと、育てるための苗が城に置いてあるから、それを耕した土に植えて、土魔法で育てろ、と……え、帰れってこと?」
アミの言う通りだ。
何のために畑に来たというのか。
「……じゃあ、私は城に戻って苗取ってくるから、土耕しといて」
そう言ってアミは転移していった。
ひとりかぁ。耕すってどうやって?
うーん、とりあえず情報見るか。
どれどれ。……ないね。
私もイッシュも、畑仕事はしたことがない。
よって、情報なし。
ただ…
「道場でやってた走り幅跳びの耕し方でいいかな?」
砂場を整えるときにやった感じだ。
まず、氷で作ったシャベルで掘り返す。
「さすがに広いね……5つ分くらいでいいかな」
かなり畑は広かった。おそらく、愚直に全部耕せば2日かかる。苗が5列埋まりそうなくらいの範囲を、ひたすら掘り返す。
「ただいま〜あ、よかった」
アミが帰ってきた。手には苗を数個持っている。残りは収納魔法だろうか。
「何が?」
「やり方の指示忘れてたから。もしかしたらできてないかなって」
そういうことね。
「あってないかもしれないけど、一応掘り返してた」
あとは、均すだけだ。
というわけで、氷でトンボを作り、土を均す。
「あの…すごく言いにくいんだけど、土魔法でやればすぐらしい」
アミが言ってきた。……今言うか?
「まあ、アミなら許すよ」
私が渋々許したところ、
「あ、タウ情報ね」
と言われた。
「あの野郎。今日こそは許さん」
まぁ、アミ以外だったら許してないからね。
「水をはってから、この苗を植えるんだって。これも土魔法でできるらしい。そして、風魔法で収穫する。それを繰り返すんだって。4人分だから……え、4人?しれっと食べる気じゃん」
あ、そうだ。私は、指輪の存在を思い出した。
「繰り返すんだったら、私の指輪、使いなよ」
私の指輪は、1回魔法を使うと、同じものを一定の魔力でもう一回使えるというものだ。
例えば、1回氷魔法を、魔力50を消費して使ったとしよう。そうすると、次からは全く同じ規模の魔法を、指輪に魔力30を込めるだけで使えるのだ。
正直、大きな魔法を使うと魔力をすごく持ってかれるから、ありがたい。
「でも、1回しか使えないんじゃ…」
そんなことはない。
「私の解析によると、何回でも魔力…30を込めれば使えるって。すごく便利」
「そっか。それならいっか。借りるね」
そう言って指輪をつけたアミは、大きな魔法陣を展開した。同時に、指輪にも登録されている。
ちなみに、範囲は畑全体だ。
私の苦労を返せ。
「そんで次は、水に……風魔法!」
こっちは普通に魔法陣を展開している。指輪への登録はない。もう使いこなしているのか。
辺りに風が吹く。
アミの足元に、お米が落ちている。
白い、つまり加工済みだ。
「あと、3回!」




