表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
105/111

105.事後処理

〜前回のあらすじ〜

タウと戦って死にかけのイッシュ。ちなみにタウはトボトボと帰っていきました。そんな中、イッシュはどう動くのか。

残ったのは、私とイッシュとシンだけだ。


「シン、私の回復ってできる?」


イッシュは血を吐きながら話している。

もう話さないほうがいいんじゃないか。そんな制止は聞かなかったことにされてしまった。


「……ごめん。僕も魔力残ってなくて。ほんと、ごめん」


無力。それが最も表すのにふさわしい言葉だろうか。


「回復薬とか…」


私の辛うじての提案も、意味をなさないことを知っている。


「使い切っちゃった。ギルドに買いに行く間に死ぬと思う」


やっぱり。


「やだよ…まだ一緒にいたいよ…」


私の、心の底からの言葉だった。


「ごめんね…ほんとごめんね…」


贖罪、悲しみ、いろいろ、混ざっているシンの言葉だ。


「大丈夫。選んだのは私だよ?」


イッシュは明るい。明るく見える。

でも、さすがに私でもわかる。

これはから元気だ。


「私に、ひとつ、案が……あるんだ」


一瞬、苦しそうにした。

まだ10代。されど10代。

そんなイッシュに何ができるのか。


「リゼ、私が生きるために巻き込んでもいい?」


急に、呼ばれた。

そりゃあ


「もちろん。師匠が生きられるなら、代わりに死んでもいい」


覚悟はある。


「ははっ……そんなことないよ。でも、契約をしよう」


イッシュが告げたのは、一生の鎖だった。





「スキル情報解析、これを、私たちの間でしか譲渡できないようにする。死んだときに、もう一人に渡るような状態ね。これがマイナス。だって、情報が増えないんだもん。そして、私は今死ぬ。それもマイナス」


ぎりぎりの寿命をさらに短くするらしい。

というか、スキルをずっと持っていられるだけプラスなのでは……?いや、そんなことないな。

私は知っている。スキルは、持っているだけでも魔力を少しずつ吸っている。スキルという後付のモノを体内に取り込んでいるんだ。魔力が必要だ。

ならば、マイナスと見ることもできる……かも?


「私たちは、25歳までしか生きられない契約を結ぶ。そして、ふたり同時に死んだら終わり。これで、マイナスは終わり」


なかなかに、多い。

よほどの契約内容なのだろうか。


「転生、できるようにする。お互いの元に。魂に自分の情報すべてを刻んで、それを転生できるようにするんだ。死んでも、何回でも。こうすれば、また会える」


なるほど。

実質、無限に生きられるのだ。

ただ、一回でも失敗したら終わりなだけだ。


「あ、まだ条件が足りない。……お互いを、お互いで殺すことでしか転生は成り立たない。これでいこう」


イッシュは、とても残酷なことを言った。

私に師匠を殺せというのか。


「そんなのっ…!!」


「リゼ、私と二度と会えないのと、今も未来も、私を殺すこと。どっちがいいの」


そんなこと言われたって…。


「失敗するかも…」


「でも、やらなくても私はすぐに死ぬ。だからさ、殺して」


イッシュは儚い笑顔で言った。


「うっ……」


いやだ。でも、会えないのはもっと嫌だ。

殺すしか…ない。


「いやだよぉ…」


視界が、水…いや、涙に覆われる。

それでも、やらないと。


「……いきます」


私は震える手で剣握る。


「ありがとう。これで」


「ずっと一緒だよ」


切ない、笑顔だった。


ただただ、ひと思いに殺すことしか、私にはできなかった。

イッシュにもらった剣で、イッシュを殺すことしか。


「リゼ……」


シンが、なにか言いたげだ。


「しばらく、家事手伝ってもらってもいい?」


私には、時間が必要だった。

心の傷を、埋めるための時間が。


「そうだね。僕も、ひとりだと狂っちゃいそうだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ