104.戦闘開始
〜前回のあらすじ〜
買い出しに行ったリゼと、師匠のイッシュは幼なじみではある魔王、タウに出会った。するとイッシュはタウに攻撃を仕掛けた。さぁ、戦おう。
それを確認したイッシュは、奇襲かのような勢いで、タウに襲いかかる。
「小柄なのも、使いようだよな」
タウは、それを避けるためにしゃがんで走った。
「身長があったほうが得だと思うけど」
イッシュは氷魔法で氷柱を作り、タウに向かって発射する。蜂の巣となった、いや、炎で全部消されていた。
「どうだ?って顔だけど、優勢なのはこっちだよ」
イッシュが、攻撃を仕掛ける。剣を抜き、タウの喉を突いた。正確な突きだ。流石としか言えない。
タウの喉からは血が噴き出て、一瞬、ふらついた。
「勝った…?」
思わず言葉がこぼれ出た。
だが、世知辛い。
「まだ、だな」
刀を一気に振るった。
イッシュが、斜めに斬られる。
「俺は回復できるけどな、お前はできないだろ」
そう。イッシュの属性に光はない。
私にできることは……スキルの譲渡?
そうだ。このスキルがあれば、式神だって呼べる。
譲渡の仕方は…これか。
自分の魔力の4倍をスキルに込めて、渡す?
よ、4倍って……。
「そうだね…元の属性なら、ね」
はっとしたときには、そう言いながらイッシュは回復していっていた。
「……何をした?」
「契約の使い方の問題だよ…続けよう」
イッシュが剣で、タウが刀で。
斬って斬られての攻防戦だ。
私はその間に、ひたすら回復薬を飲みながら魔力を回復し、契約も駆使しつつスキルの譲渡のための条件を手早く揃えた。
「イッシュ!受け取って!」
私はイッシュにスキルを渡した。
何?という顔でこちらを見たイッシュは、思考を巡らせて状況を確認する。
「なるほどな、通りで」
タウは何が起きたのかを理解したらしく、一度態勢を整えた。
「ここから、行かせてもらおうか」
イッシュは紙をサッと取り出し、式神を呼んだ。
透明だから見えないが、明らかにイッシュの動きが変わった。これは、2対1での戦い方だ。
「くっ……」
イッシュが繰り広げる斬撃に、式神による様々な魔法。光が、闇が。火が、水が。飛び散り、集まる。
「これで、終わらせる」
イッシュは、タウの刀を叩き切った。
折れた刀は、即座に式神によって燃やされた。それにより魔力が尽きたのか、もう魔法を使うことはなくなった。
「どう?降参しておく?」
イッシュはタウの首元に剣を当て、問う。
「まさか。俺は……」
「そっか。残念だね」
イッシュは懐から何かを取り出した。
それを見て、タウは目の色を変えた。
「やらせるか!」
ありったけの魔力を使ったであろう炎の攻撃が、イッシュの目の前で蒸発していく。
式神は、2体いたのか。
「さ、大人しく檻に入ってもらおう。それとも、ここで死ぬ?」
イッシュは、タウに懐から取り出した何か……いや、手枷のようなものをつけた。
「……いやだ」
タウは、魔法を使おうとしたようだ。魔法陣も、描こうとしていた。しかし、できなかった。少し放っていた殺気すらも使えなくなったようだ。
「いやだ、いやだ、俺は……俺は、やり遂げる!」
「〈スキル????〉!!」
タウは、スキルの名を叫んだ。
そしてスキルは、それに応えた。
「それは……」
タウの手には刀があった。手枷は、消えていた。
「こんなことができたのか……」
「使えなかったはずでは?」
イッシュは、剣を構えて距離をとる。
「使えるようになったらしいなぁ!」
タウはイッシュに向かって駆け出す。
刀を力の限り振り上げ、そして飛びながらイッシュに振り下ろす。
「くっ……ならば」
イッシュは氷を地面から生やし、立てないようにした。タウは跳躍し、屋根に逃げた。
「〈スキル????〉」
タウの刀が形状を変える。あれは…弓?
そう思った直後、矢が3本まとめて飛んできた。
イッシュは間一髪で避けた。
避けた先には、炎があった。
「2回目は、引っかからない!」
イッシュはサッと消火し、剣を構える。
「もう、魔力はないだろう?それだけだ」
タウは近くに帰ってきていた。
イッシュに刀を刺し、抜いた。
血が、無惨なほど明るい血が飛び散る。
タウは、ハッとしたように攻撃の手を止める。
「俺は、俺は……?殺されそうになったから、殺した……そうだ。俺が……殺した、のか……あぁ」
タウは、そう言いながらトボトボと歩いていった。
それどころじゃない、イッシュは命の危機だ。
「師匠!イッシュ!」
私には、駆け寄って近くにいることしかできない。
次の瞬間、救世主が現れる。
「タウ…?何してんだよ!」
たしか…
「シンか」
そうだ。シンだ。タウに言われてわかった。
「なあ、そこにいるのはイッシュだろ!何してんだよ!友達、だろ……」
呆れ、落胆、諦め、怒り。
いろんな負の感情が入り混じった、シンの感想だった。
「もう、いやだ。なんで来たんだ」
「買い出しの途中でこんな場面みたら来るだろ!普通」
「いや、買い出しに来る人多いな」
あ、つい突っ込んでしまった。
でも、誰も気にしない。
それよりも、大切な場面だった。
「とりあえず、俺は帰る」
タウは、走って、帰っていった。




