100.リゼの走馬灯
〜前回のあらすじ〜
リゼはダンジョンで死にかけています。走馬灯が流れます。
「ねえ、リゼ、君は剣術が上手」
懐かしい、師匠の声だ。
懐かしい?いや、私は師匠と毎日会っているはず。
私は道場にいて、毎日師匠に鍛えてもらっていて……。違和感?いや、違和感はない。
だんだんと、薄くなっていった。
「急にどうしたの?」
私は何も違和感を覚えず、イッシュに問いかけた。
イッシュがこんなことを言うのはかなり珍しい。
「いやぁ、ね?いつも頑張ってるからさ、たまにはどっか行くかなぁって思って…」
そうやって首をかしげ、白い髪を揺らした。
かわいいが、そういうことは関係ない。
「いいの、私は。イッシュがいけば?よくどっか行ってるじゃん?どこ行ってるの?」
するとイッシュは困ったように言った。
「うーん、まあ言っていいか。幼なじみのところだよ。タウとシンって言うんだけどね…」
このとき、まだイッシュは12歳だった。
タウやシンは、11歳だ。
ん?これは、どこから得た情報……。
そんな違和感は、一瞬で消えた。
「イッシュ、今度会いたい」
私はまだ7歳だった。好奇心だけで突き進んでいた。
「うん、じゃあ今度来たときに呼ぶからね」
それが後の悲劇にもつながると知らずに。
そして時は経った。約1か月後だった。
私はまた今日も道場で訓練をしていた。
自主練中に、イッシュがやってきた。
「リゼ、タウとシンが押しかけてきたんだけど、来る?前会いたいって言ってたよね」
そうだ、言った。
「行く!ちょっと待ってて!」
わくわくを胸に、私はイッシュについていった。
道場から魔法陣で帰り、ギルドの奥。
部屋の中に、白い髪をしたふたりが立っていた。
ちなみに、ギルドを作ったのはイッシュだ。
すごいよね。
「タウ、シン。どうしたの?」
白髪のふたりに、イッシュが話しかける。
「俺と勝負しろ」
赤い目をした人のほうが、話した。
「……シン、説明」
イッシュも、困惑顔だ。
もちろん私はもっと意味をわかっていない。
「えーっと……君なら戦えるよね?それで、イッシュのさ、スキルでさ、契約ってあるでしょ?それがほしい、闇魔法で使えるようにしてほしいの!」
青い目の人が答える。こっちがシンか。
ちょっと焦って言い訳するように見えるのはなぜだろう。何かあるのだろうか。
「ほんとに?建前じゃなく?」
イッシュもそう思ったのか、タウと呼ばれる彼に向かって聞いた。
「別にそうだが?」
タウはなんてこともなさそうに話した。
「うーん、めったに嘘を言わないタウなら、信頼できる。…よし、いいよ」
イッシュは許可した。
まあ、イッシュが負けるわけがないけど。
「じゃあ、一緒に奥に行こう」
そう言って、ギルドの奥へと歩いていった。
「よし、勝負」
奥にある闘技場に来た。
「リゼ、ここから離れてて。シン、リゼを守りつつ、ジャッジを」
「私も戦いたい!」
「……リゼ、行こう?イッシュの言う事なら聞けるんでしょ?」
シンの言葉に、チラッとイッシュを見ると、行きなさいとでも言うように視線を送ってきた。
私たちは離れた場所に行った。遠すぎて、見えにくいレベルだ。なぜここまで離れないといけなかったのか、それを私は知らなかった。
「合図を」
イッシュは、タウと向かい合う。
「よーい、スタート!」
シンが合図する。
タウが、剣…いや、刀でイッシュに斬りかかる。
「…やるな」
イッシュが自分の剣でタウの刀を止めてから聞こえてきたタウのそんなつぶやきを、イッシュは軽く受け流した。
だが、押され気味だ。
「そんなこと言ったってさ…すぐに距離を詰めるほうが浅はかなんじゃない?」
そう言ってイッシュは、魔法を発動した。
これは……炎魔法だ。
すぐに、辺りの地面が炎に包まれる。
「タウ!」
シンは心配そうだ。自ら戦いに来たというのに。
しばらくして。炎と煙は引いていく。
「勝ったかな」
「いいや、まだだね」
タウは、炎をモロに受けたっぽい。
だが、回復でなんとかなっている。
驚異的すぎる、回復力だ。
「くっ…これは…」
次に放たれたタウの刀は、一味違った。私でもわかる。今までと、込められてる魔力量が違う。
「ゴリ押しってやつだ、くらえぇ!」
「やばい…」
イッシュは、力の向きを適当に変換して、逃げたようだ。闘技場に、思いっきり穴が空いた。
「そっちも対応済みさ」
爆炎が上がる。どおりで私たちは遠くから見ているわけだ。本当に、狂いもなく、そう言われた瞬間に、爆炎が上がったのだ。技術は計り知れない。
「くっ…」
イッシュは、倒れた。
「…そこまで!」
言われなくともわかる。
タウの勝利だ。
「浅はかじゃねぇ。考える必要すらないだけだ」
そう言い残していった。自らに言い聞かせるように。まだ、慣れていないかのように。
その後、私は道場に帰った。
あの3人は、条件について話し合っているらしい。
そんなことよりも、私の感情はぐちゃぐちゃだった。
「イッシュが、負けた…」
悔しい?そんなわけない?
違う。もっといろいろ混ざってる。
私にできることは、一心不乱に剣を振ること。それだけだ。いずれ訪れるかもしれない、タウたちが、イッシュに楯突く日が。今日の訪問もよく分からなかったのだから、警戒は必要だろう。
だから私は強くなる。それだけが、イッシュに恩を返す道だと信じて。
「おーい、リゼ、終わったよ」
だいぶ時間が経ってから、イッシュが帰ってきた。
「そっか。この後さ、外に行ってみたいんだけど…」
唐突すぎるかもしれない。
でも、これが技術を伸ばすには最良の道だ。
「おぉ!何がしたいの?」
「魔物の討伐」




