99.黄色のドラゴン
〜前回のあらすじ〜
黄色のコンパスが指す先にあるダンジョンは海の中だった。まだ海水が入っているダンジョンの中を強行突破して、ボス部屋の前にたどり着きました!
「シン、任せた!私とアミが扉を開く、不意打ちはシンがなんとかして!」
「わかった」
アミは元気よく返事をする。
「僕への無茶振りやめない?」
シンは文句を言っている。
やめるわけがない。一番ふっかけやすいのはシンなのだから。しかも、そう言いながらもきちんとこなしてくれるからだ。
「アミ、行くよ!」
私は海の中のダンジョンを走りながら、浮いているタコやイカなども拾っておいた。そんなことをしながら、扉へ向かう。
またこれも、大きい扉だ。木製だが、もろくはなさそうだ。私とアミ、ふたり同時に手をかける。
「「せーの!」」
扉は開いた。
私たちはすぐにそこから退いて、端に寄る。
私たちが扉の前から居なくなった今、そこにいるのはシンだ。彼に向かって敵からの不意打ちが放たれる。殺傷能力を持った、風の刃だった。
「ったく…危ないね」
そんなことを言いながらちゃんと、危なげなく弾いてくれた。さすがシン。
「よし、行こうか」
私たち3人は、ボス部屋へと足を踏み入れた。
部屋は、前のダンジョンと同じような白くてとても広い。円形になっていて、奥の方に魔法陣がある。発動済みということは、あれが転移陣だろう。あれを踏まずに、敵を倒さなければならない。
私たちは部屋に入って、風魔法を解除した。
「この中は水がこないね」
そう、この部屋では水が風の結界であろうそれによって防がれていた。ありがたい。
契約の更新も必要なくなった。いずれ風魔法も使えなくなるだろう。
そんなことよりも。目の前にいるドラゴン。それの倒し方のほうが大切だ。あれはおそらく、前のダンジョンと同じくらい強い。黄色のドラゴンだから、素早いのだろうか。
シンは剣を取り、アミは魔法を用意する。
「とりあえず、こいつを倒そう。リゼ、どれだけ時間をかけてもいい。解析して、毒を作ってくれ」
それは危険だ。その間に2人に攻撃を任せることになる。……でも、やるしかない。
「わかった。じゃあ、任せたよ」
私はすぐに、目の前のドラゴンの解析を始める。
これは、強い。でも、前回のと似ているだけやりようがある。魔王は、解析が無理だったもん。
まず…風属性だね。あとは…うん。動きを阻害するタイプの毒が良さそう、それだと効果が高いらしい。首元を狙え、これはドラゴンは全部一緒か。…私の予想だけど、一番強い毒、それに動きの阻害を組み合わせればきっと倒せる。
そんなふうに私は攻撃から逃げながら、ひたすらにスキルを使って解析する。
「アミ、避けて!」
シンの叫び声が聞こえて、アミが飛んでいくところが見えた。視界の端に入っている。
それを追うようにシンも飛ばされている。
「2人とも!」
私は思わず叫ぶが、直後に解析を再開する。
どうせまた回復魔法は使えないのだろう。契約するだけ無駄だろう。
とりあえず、私に攻撃が向かないように式神をあるだけ使う。これで時間は稼げるだろう。
今は、冷静に解析する。薄情だろうが、そうするしかない。そうするよう、師匠から教えられてきた。
「あーあ、魔力足りないや」
こんな状況を一発で覆すための毒を作るには、明らかに魔力不足だ。私の魔力の2倍は必要だろう。
契約して手に入れてもいい。でも、対価は何がある?
かなりの対価が必要だ。
いや、やるしかない。絶対、成功させてやる。
対価を、ひねりだそう。
そんなとき、ふと横切ったのは契約によって寿命を手に入れたアレイスの姿だ。
「これくらいしかないかな」
私が思いつくのは。
決めた。契約をしよう。
私の片腕を持っていっていい。だから、私に、私の魔力の2倍の量をください。
そう心の中で言ったのだが“理”からは断られた。
なになに、条件は……2日の魔力回復なしと、1回魔力上限を上げる代わりに2日魔力上限が減る…半分に。
それでいい。それを受け入れるしかないならば。
そう心の中で言い切った瞬間、私の片腕が目に見えぬ斬撃で吹き飛んだ。
「リゼっ!!」
アミの、こちらを見る声が聞こえる。回復していたのか。タウだろうな。
でも、かまっている暇はない。
できるだけ早く、私が作れる一番強い毒を作る。そして、そこに動きを阻害する毒をくっつける。
そして、魔法陣を展開してドラゴンに焦点を定める。
「くらえっ…」
半分、苦笑いするような気持ちで。
半分は、成功にすがるような気持ちで。
長年の私の技術と、契約と。
すべてを使った毒は、ドラゴンを葬ったはずだ。
「ぐがぁぁ…」
ドラゴンの倒れる声がした。
それと同時に私の視界は一瞬青くなり、直後に白くなった。そして私はもう今、何も見えない。
魔力不足でもある。倒れるしかない。
片腕の切断による失血もひどい。
原因は何かわからないが、もう、無理だ。
「リゼ、大丈夫…?」
近寄ってきたのであろう、アミが呼ぶ。
反応もできない。
「タウっ…タウ!助けられないの!?」
しばらくしてから、絶望するようなアミの雰囲気を感じる。
その後、ころんっと、魔石が落ちるような音がする。ドラゴンの魔石だった。
倒せたんだ…よかった。
「大丈夫!?」
焦ったような、シンの声がする。回復をしたのか、何をしたのかわからないが、帰ってきた。
「助けられないって…タウが…」
「くそっ…僕でも、回復魔法はここでは使えない…どうしよう…」
ものすごい悲惨そうな空気が流れた。
そんなものを気にしている余裕もなく、私は意識を手放した。




