整った戦いへの備えとその頃の彼女達
トロイメライ戦隊員……全員の機体の改良が終わったと通達を受けた彼らは、それぞれの機体のもとへ駆けつけた。
まず——
ハリスの乗る、トロイメライ・エヴァンゲリウム=ゲパアート。
ユーリの乗る、トロイメライ・エルプズュンデ=ゲパアート。
ロディの乗る、トロイメライ・キルヒェンリート=ゲパアート。
そして、その補佐をする事が目的である残りの三機。
アイクの乗る、トロイメライ・トーデス・エンゲルP1。
シャオの乗る、トロイメライ・ヴュルク・エンゲルP2。
デューイとハナが乗る、トロイメライ・シュッツ・エンゲルP3。
パーツの追加に強度見直し、装甲の変更等々……進化した愛機を前にしたトロイメライ戦隊員達に向かって、声をかけたのはレインだった。
「やぁやぁ! みんな揃ったね! どうだい、進化を果たしたM.E.達は!」
「レイン……君がここまでするという事に少々驚きです」
「ヒドイな、ハリス! 君との仲だというのに!」
「そこの関係はどうでもいいのだが、本当にこれで合体する気なのか? レイン博士?」
ロディが鋭い目つきで、レインに視線をやれば彼は大真面目な顔で頷いた。
最初からこの男はそのつもりだったのだと、確信させるほど真剣な眼差しに、ロディが珍しく黙り込む。
そんな彼女に微笑むと、レインは格納庫内に響く声で告げる。
「さぁ! それじゃあ、本腰を入れて備えようじゃないか! 大災害の悪魔との戦いへね!」
****
その頃。
アルプ機関のナディアは、カウンセリングを行っていた。
極東の地、日本の東京都立鈴鳴高校、そこで不運にも巻き込まれてしまった少女……安城美為の担当をナディアが受け持ってから、もう数か月以上経過している。
それだけ時間を共にしているからこそ、ナディアは不安を覚えていた。
それは、美為の様子だ。
日に日に、窓の外をただ眺めている時間が増えている。
これが、時任英春から渡されていたサプリメントから回復の兆しであれば良いのだが——
(どうにも不自然すぎますわね)
ナディアは、美為の意識、いや、自我が薄れているように見えて仕方なかった。
今までの研究から、そのサプリメントの効能……つまるところ信徒化させるための薬物への処置はしてきた。
そのはずだ。
(ですが、それにしては妙ですわね? これは、エッダの言っていた微量の違いが何か関係が?)
「あの、それで先生とはいつ会えるんですか? 私の治療上手くいっているんですよね? 退院の目途が立たないのは悲しいです……」
勿論、今、美為がいるのは病棟などではない。アルプ機関の特別処置室だ。
その上、彼女には何度も時任についても自分が置かれている状況についても、説明している。
だというのに、彼女は日ごとに……まるで記憶が塗り替えられているかのように、発言が妙な事になっている。
時任英春という人間はもうこの世にはいない、その現実を受け入れらないまでならまだ分かる。
しかし、彼女はまるで疑似怪獣、しいてはカタストロイその存在を認識出来ないかのように、それに関連したワードにだけ無反応となり、先ほどのような発言を繰り返すのだ。
(おかしいにもほどがありましてよ? どう対処したらこの子を救えるの?)
非戦闘員のナディアだが、彼女にも想いがあってこそ、アルプ機関に所属している。
——譲れないモノがある。
救えるものは救いたい……大災害の悪魔から。
「ミナレちゃん? 少し気分転換致しましょうか? お話くらいしても良いでしょう?」
だから諦めない。
ナディア・ホワイトもまた、人類を守る側の存在だから……。




