知るは二人、語るは一人
(いよいよ実戦に向けての準備ですか……レイン、いえ、ソロモン……君の眼に、何が視えているんだい?)
「ハリス~! ちょっと来てくれるかい!」
「分かりました、行きますから大声を出さないでください? レイン?」
あの後。
機体への感覚を取り戻すためと慣らしのため、各自、それぞれの機体に搭乗し、訓練を行う事になった。
その休憩中に、ハリスの愛機、トロイメライ・エヴァンゲリウム=ゲパアートの格納庫にレインがエッダを連れて現れた。
こういう突拍子もなくレインがアクションを起こすことはよくあるので、ハリスはすっかり慣れているが。
——それでも、思わずにはいられない。かのソロモン王の血を引きしレイン・エンジェルことソロモン・ジェバが何を語るのか……?
だからこそ、ハリスは彼に詳細を道すがらでは尋ねないし、彼も答えない。
通されたのは、いつも通りレイン専用の研究室長専用ルーム。
そこで、レインはゆっくりとソファに沈むように座る。
瞳だけ、天井を見つめながら。
「ハリス」
「はい」
「私が最初に視たビジョンは、もっと曖昧だった」
「……知っているよ。僕と君との付き合いの長さを考えてほしいところだ、レイン……いやソロモン?」
「久しぶりに真名で呼ばれると照れ臭いね!」
「プライマリースクールの頃からの付き合いだと言うのに、まだそれ言うかな?」
「仕方ないじゃあないか! あの当時は、視るたびに高熱を出していたから君みたいな友は全くいなかったんだから!」
「僕だって、最初は懐疑的だったよ……まさか、病弱とだけ思っていた子が普通の人間と違う千里眼を持っているなんて」
「おやおや! あんなに楽しそうに聞いてくれていたのにね!」
「そういう風にとぼける所も、相変わらずだな……君は。それで?僕だけを呼び出したのはどういうわけかな?」
「おっと! そうだった! 君に伝えたい事があってね……大災害は、加速しているのは知っているよね?」
「えぇ、勿論」
「世界各地で起こっている災害、いや、大災害の数々は、一旦落ち着く」
「……それは……大災害の悪魔とどう関係が?」
「奴は、力を備える。今度こそ、この星そのものを消すために」
「いよいよ、君が視たこの世でもっとも最悪なビジョンが現実になるというわけだねソロモン?」
「あぁ、そうだよハリス。私が工学部に進むと告げたあの時伝えた通りさ」
「あの時ほど、君の千里眼を畏れた事はなかったよ……もう六年近く前だ」
「ハリスは、それで軍人家系を嫌っていたのに軍人になってくれた。本当に感謝しているし、申し訳ないとも思っているよ。私のワガママで災厄を退ける未来を得るための戦いに、備えさせてしまった」
「ハクルート家は兄さん達が反発して軍人家系としては傾きかけていたからね……ある意味、家の名誉に貢献したという事にしておくよ」
「だけれども、そのせいで家督を継ぐのもハリスになってしまったのだろう?」
「まぁ……兄さん達には兄さん達の人生があるわけだし? それに、僕はもう覚悟を決めている。ソロモン、君からこの世界……いや、この星が滅ぶと聞いた時からね?」
「ハリス……」
「それでソロモン? いつ、その時が来るんだい?」
ハリスに問われたレインことソロモンは、静かに目を閉じ告げた。
「……四か月後。欧州の大豪雨被害が一区切りになる」




