王都ー65
メルトとダイアナが入り口で待機している人達に差し入れを持って向かってから。
マスタはライモンと商業ギルドの職員に話しかけられていた。
「え、サブマスターなんですか?ストッジさんは」
ライモンに紹介されて名前を聞いたマスタは、急な依頼に立場の高い人が来ている事に驚いた。
「申し遅れまして失礼致しました。商業ギルドサブマスターのストッジと申します」
「肩書きの高い人物が多いので、事前に話し合って聞かれた際に答えるか、機を見てという事になっていました。あまり大人数を列挙されてもどうかと思いまして」
「気を遣ってくれてありがとう。よろしく頼むよ」
(つい敬語で喋りそうになるな。鷹揚に喋るって疲れるな)
立場的に敬語は良くないと、メルトとダイアナに注意されていたので、毎回気にしながら話しているマスタだった。
「いえいえ、とんでもございません。英雄様の御技と知恵でこれからの発展が楽しみ過ぎる程です」
熱の籠ったストッジの言葉にライモンも強く頷いていた。
「後の人は職人なのかな?」
「石工の代表と木工の代表ですよ」
「それから、運送手配の担当者と土地の調査担当と…」
「あの…私は紙の製造をしていますジュストンと申します」
「ああ、紙の製造の。家造りなんて手伝わせて悪かったね」
ジュストンは何も言わずに家造りをしていたので、てっきり建築関係の職人なのかと思っていた。
「いえ。良い経験をさせていただけました。不満などありませんよ」
30代前半のサッパリとした見た目の青年は笑顔でそう言った。
「この場所が終わったら出番だから、よろしく頼むよ」
「はい。楽しみにしております」
ジュストンと話した後にはライモンとストッジに後は何が必要になるのか等話し合った。
話をすればする程まだまだ足りないものが多いと分かったが、それは徐々に今後何年もかけて少しずつ熟していけば良い事であるという結論になった。
マスタがやり過ぎると今後の仕事が無くなってしまうし、一気に建て過ぎても資材などの価格が上昇する可能性を指摘され、任せる事にした。
通りの入り口から今いる場所までを片付ける事が出来れば、荷車が通れる様になりその後の作業が捗るので、とりあえず今日はそれを終わらせてしまう事にした。
メルトとダイアナが戻って来るのが見え、話も区切りがついたのでマスタは2人に向かって歩き出したのだが、向かってくるダイアナが頭にタオルを乗せていたので、タオルに手を伸ばしながらダイアナに聞こうとしたのだが。
「え。マスタ様、そんな…こんな所で」
「今夜の夜伽でしたら私が」
「‥‥」
(なんでそんな話になるんだ?何を言ってるんだか)
「そうじゃなくて、ほらコレを乗せてるから‥!?」
「む〜む〜」
「あれ!生きてる?なんだコレ!」
マスタがタオルだと思い掴み上げたものは、鳴き声を上げ手からするりと抜け出すと腕を伝いマスタの頭の上に登るとそこで落ち着いた。
「え?私の頭に乗っていたんですか?…モコモコで…可愛い〜」
「見たこと無い生き物ですね?羊の子供みたいな見た目ですけど」
マスタが頭の上にいる生き物にそっと指を持っていき突いてみると、フワフワで指が殆ど埋まってしまった。
「ふかふかだなぁ〜。こしょこしょ…」
「む〜う〜」
フワフワの奥にある暖かい肌を指でくすぐってみると、気持ちよさそうな声をあげ右に左にとモゾモゾと動いた。
「はわ〜〜マスタ様!私にも触らせてください!」
「良いけど気を付けろ。どんな生き物か分からないんだからな」
頭の上にあるモコモコをそっと下ろし、両手を広げたダイアナにそっと渡すとダイアナはフニャリとした表情になった。




