王都ー64
結局4軒の家を建て終わってみれば、時間にして1時間ほどしか経過していなかった。
最後に建てた家は全員手慣れてきて速度も上がり、マスタが資材を作る側から組み上がっていく程だった。
入り口扉と窓が付いていない家だが、ここまで出来ていれば直ぐにも取り付け出来るとライモンに確認してあるので、後は安心して任せられる。
「一軒はギルドが管理してここでの作業に役立ててくれ。残りの更地に資材を運び込めば作業もし易いだろうし」
「おお。ありがとうございます!そこも朝に来た時は頭を悩ませていたのです」
「作業終わりに一風呂浴びて貰えば良いだろうし」
「それは良いですね!みんな喜びそうです」
(ライモンが毎日来そうな気もするけど)
「後は‥お〜い!子供達とネッカとシャーリ!ちょっと来てくれ!」
離れた所から作業を興味深そうに見ていた、子供達と獣人夫婦に声を掛け近くに呼んだ。
「何でしょうか?お手伝いならいくらでもしますよ」
「なになに〜?」
ネッカは治った足でトントンと軽く地面を踏みアピールしている。
シャーリも子供達も笑顔でやる気満々だったが、マスタの言葉に呆然とした。
「みんなが住める家が出来たから、準備が出来たら引っ越ししても良いぞ。ケンカしないように仲良く話し合って決めるようにな」
「「「「「えええ〜〜!!」」」」」
「いいの〜?私の家どれ〜?」
アビィの質問に指差して答える。
「風呂屋の右隣りだ。毎日入れるだろ?」
「「「やった〜!」」」
「「「…いいな〜」」」
喜ぶアビィ達とは反対に落ち込むブロン達。
「ブロン達は反対側の左隣りだな。家の作りも風呂屋までの距離も一緒だ」
「おっしゃ〜!」
「「わ〜い」」
今回建てた家はどれも風呂屋の周囲なので大差は無いのだが、子供たちにとっては違ったようなのでマスタは急遽位置を変えて反対側をブロン達にと充てがおうと決めた。
「ネッカとシャーリは風呂屋の裏の家を使ってくれ」
「あ、あの…良いんでしょうか?」
「まだ何もしていませんが?」
恐縮しきりの2人に説明するマスタ。
「2人にはやって貰いたい事が結構あるからな。風呂屋の管理、子供達の仕事の手伝いに周辺の掃除なんかも必要になると思う。他からも応援の人員も来るだろうけど、ここに住んで仕事をしてもらう方が後々良いと思うからな」
「あの、スラムの知り合いにも仕事を手伝ってもらっても良いでしょうか?」
「もちろん良いぞ。子供達や自分達と上手くやれそうな人を選んでくれよ?」
「「分かりました」」
「んじゃあ、みんな 自分の家 を確認しておいてくれ‥」
ソワソワしていた子供達は言い終わる前にもう走り出していた。
マスタ達も歩いてついて行き、騒ぐ子供達を横目に各家の水道とトイレを設置して、ネッカとシャーリの家のみ竈門も作り管理を任せた。
「何で〜?いいじゃん」
「兄ちゃん、大丈夫だって」
「火ぐらい簡単だろ」
「俺だって余裕だね」
テンションの上がった子供達が口々に騒ぎ立てるが、マスタの一言で静かになった。
「じゃあ、料理は作れるのか?」
「「「……」」」
「手伝いをして、火の付け方、消し方、料理も覚えてからだな。なにせこれからは仕事して、お金稼いで、それで買い物して、美味いもの料理して自分達の家で食べる事になるんだからな」
「…わかったよ」
「おれも後でもいいや」
子供達は自分の家の方を見ながら、頷いていた。
(今、頭の中ではみんな自分の家で食事でもしてるのかもな)
それから子供達には自分達の家の周りの掃除はきちんとするように言って、早速荷物を運びに走る子供達を任せ、マスタは通りに残る瓦礫ゴミの撤去をしてしまおうと向かった。
マスタに付いて来ているメルトとダイアナに、通りの入口で待機している馬車の御者と護衛に軽食を持って行ってもらい、ついでに通りが片付いたら奥まで入って来れるようになると伝言も頼んだ。
「よし、解体の時の要領で汚れずにいけるし、片付けだけでもサクッと終わらせるか」
マスタが気合を入れ直す陰で何かが直ぐそこまで来ていたのだが、誰も気づいてはいなかった。




