王都ー63
「残すとしても2割も無いですね」
スラムで長年放置されて来た建物は、どれもかなり傷んでいた。
たまに屋根材が落ちる音が何処からか聞こえてくるくらいには。
「とりあえず風呂屋(銭湯と言っているのに馴染みがないと言われた)の周りから見てくれないか?」
「え〜…駄目、駄目、駄目、駄目駄目、すでに残骸。ってところですか」
「だろうね。」
先程マスタが風呂屋を建てる為に綺麗に整地した場所にあった建物も、壁の一部と柱しか残っておらずあっさりとマスタによって瓦礫に変えられていた。
(だけどまた埃だらけはやだなぁ。無限倉庫に一旦入れて‥‥後で何軒分も取り出すのは面倒か)
風呂上がりでサッパリしてもいる為、また汚れるのに躊躇して悩むマスタ。
その様子を見てライモンが心配そうに声をかけた。
「今日はもうかなりの作業をされていますし、魔力の使い過ぎは大変なんじゃ?明日以降でも…」
「あ、いや、そうじゃ無くて。汚れずに解体出来ないか考えていて、魔力は大して使っていないから全然平気」
「ソ、ソウデスカ。サスガデスネー」
(この人何言ってるんだ?そんなのバケモ…いや。考えない様にしよう不敬なことは)
暫く悩んでいたマスタだったが不意に両手を鳴らして、何か思い付いたとばかりに動き出した。
「よっしゃ。一気に行くか」
言葉と同時に廃屋の一軒を見えない壁で四角く囲い、天面の壁を下げてあっという間に廃屋を潰してしまった。
舞い上がる埃で本来見えない壁も、輪郭が全員に見えていた為崩れていく様がよく見えた。
(あ。勢いでやっちゃったけど、中に人や動物いなかったよな?次は確認してからにしよう、危なかった)
「こ、こんな感じで埃を閉じ込めながら解体するから、先に中に何もいないのを確認してもらえるかな?」
(すご!っていや、その表情は今思い出した感出てますけどもね)
「じゃあ、みんなで手分けして一軒ずつ確認してしまいましょう。それまでは今の魔法は使わないで下さいね!絶対ですよ?」
(フリなのか?なんちゃって)
「大丈夫。流石にそれは無いから」
それから1時間もせずに確認と解体が終わり、更地が8軒分出来上がった。
それからマスタが基礎となる部分を土魔法で作り出し、無限倉庫から取り出した瓦礫から柱や板などを作り出していく。
(あれ〜?あんな魔法あったかな〜?っていうか何魔法なんだろう?)
その工程を見ていた者達は、自分の知る魔法でその様な使い方が出来ただろうかと不思議がりながらも、既に色々見せられていただけに今更質問をする事もなく見守っていた。
「それじゃあ、この柱を基礎の穴に。壁板は柱の溝に差し込んでいってくれるか?詳しくはこの図を参考にしてくれ」
ライモンがマスタの取り出した紙に描かれた図を見ながら声を挙げた。
「これは組み立てが楽ですね!…でも開口部はどうするんですか?」
図には屋根と壁と柱の絵が描かれていて、簡単に組み立てるだけで平家の建物の形が出来上がる様になっていた。が、出入口や窓などが描かれておらず、そのままでは形だけの入れない箱になる様に見える。
(やっばい、完全に忘れてた!入れないって(笑)いやいや、ここは予定通りを演じるんだ!)
「あ〜、それな。組み上げるまで強度が心配だから、屋根上の作業が終わったら魔法で空けようかと思ってたんだ。扉や窓は作ってもらおうか相談しようかと思ってたんだけど、どうかな?」
マスタの早口で一気に言い切る話し方に、若干弾き気味になっていたライモンは頷くと
「お任せ下さい」
と言って足早にその場を離れると、周りの男達と集まって資材を持って運び出し始めた。
コンテナハウスをマスタなりにイメージして考えた建物なのだが、予想以上に早く組み立てが進み15分ほどで開口部以外出来上がってしまった。
(あれ?ピッタリにならないと思ってたんだけど?調整しなくても良かったのかな?俺すごい?)
次の家の床板や屋根板を作りながら、今組み上がった家を見ているとライモン達が各所に水の入った透明な箱を当てたり、袋から木片を取り出して隙間に差し込んでいるのが見えた。
(あれは水平器かな?ああやって調整してくれていたのか。流石本職の人達だな)
そつ無くこなす作業の手際に感心するマスタだった。




