王都ー62
「いやあ、スッキリしますね」
「このさっぱり感は癖になりそうです」
浴槽から上がり脱衣所に戻ってきたマスタ達は、水気を拭き下着のまま椅子に座りぽかぽかした身体を冷ましていた。
みんなの赤くなった顔を見ながら、無限倉庫から樽と氷を取り出して、蓋を取った樽の中に氷を落とす。
木箱の上にはカップを並べて、軽く混ぜて冷えた物を注いでいった。
「汗をかいて喉も乾くから、出た後は水分を取ってくれ」
そう言いながらカップを渡すと、それを見ていた子供達が殺到した。
「っく〜。うっめ〜」
「冷たうまい〜よ〜」
「お、おれも」
「ボクも〜!」
歓喜の声を上げる子供達の前で、我先にと出来ずにそわそわしながら見ていた大人達も、目を瞑りゴクゴクと喉を鳴らして飲んだ後は子供と同じ感想の言葉を発している。
「冷たい果実水だったんですね。体に染みるようです…」
「っか〜!……湯に浸かっても、出て果実水飲んでもおんなじ声が出てしまうな」
「みんな一杯飲み終わったら服着て外に出るぞ〜。女性陣には今回飲み物出してないだろうから、入り口で座って待っていよう。もう一杯飲みたい奴はその時に飲むようにな」
主に子供達に向かって言った言葉なのだが、大人達もせかせかと着替え出したのでマスタも上着を着て銭湯の外に出た。
暫くすると女性達も建物から出て来たのだが、バスタオル問題が再発。
「ほ、ほら。冷たい果実水をとりあえず飲んで。水分摂って落ち着いて」
女の子達は予想通り果実水に夢中になってくれたので、しめたと思ったマスタだったが王妃をはじめとしたご婦人方は一息着くと猛攻が再開してしまい、自分の使った物は持ち帰ってもらって良いという事で宥めた。
本当は仕事が一通り終わってからみんなで風呂に入るという予定をしていたマスタだったが、早々に入ってしまったのでこれからまた肉体労働をする気にもなれず、風呂屋(銭湯)を商売にする際のあれこれを相談する大人達と、気持ち良さそうに寝息を立てている子供達に分かれてマッタリしていた。
「マスタ様。風呂屋と言う商店はあちらでは、どの様な営業の仕方をしているんでしょうか?」
「色々ありすぎて一括りには出来ないけど、風呂のみ、休憩室を設けて飲食を出す店、休憩室での芝居や宿泊施設もあったり、変わり種の蒸気風呂、石風呂やマッサージなんかもあるけど‥‥手を広げるとキリが無いし世間に浸透して何軒も出来て来た時に、あらためて考える程度にしておく方がいいだろうね」
「それはもはや、一大保養娯楽宿泊施設といった所ですね…」
多種多様な営業形態に驚いていた商業ギルドの職員だったが、広がる期待が勝っているのか笑顔のままだった。
「このタオルという拭き布は作れないのですか?」
「はい…これを参考にして私の伝手でお願いしても難しいかと」
「うちの領地の職人でも直ぐには出来ないと思いますね。試作で半年目安にやってみてもらおうと思ってます」
ご婦人方はタオルの製作が出来ないかと、盛り上がっている。
(みんなの髪長いからな。吸水量が段違いだし気持ちはわかるな)
その時マスタの袖がクイクイと引っ張られた。
「お兄ちゃん、お風呂屋のおトイレ使ってもいい?」
「あ、良いよ。後でこっちにも作っておくからそれまでは自由に使いな」
アビィが起き出して来てマスタに話しかけた事で、マッタリしていた空気が少し引き締まり雑談していた者達も、今日優先するべきことを思い出してマスタに視線を向けた。
真顔の視線が集まった事でマスタも気持ちを切り替えた。
「さて、建築に詳しい人は誰だっけな?この周辺でまだ使える家ともう取り壊したほうがいい家の選別を頼むよ」
「私です。建築ギルドの統括をしている ライモン と申します」
「改めてよろしく、それで今見えている辺りで潰した方がいいものはどれだろう?」
「ほぼ全部ですね」
(そうだよねー。知ってた。嘘だけど。何となく予想はしてた)




