王都ー56
「戻りました、マスタ様」
「メルトありがとう」
「連れて来ました、マスタ様」
「お?おお、ありがとうノート。みんな先に食ってるからノートも一緒に食って、それから話にするか」
「は、はい」
ビシッと背筋を伸ばして返事をすると、他の子達のところに走って行くノート。
(ノートの言動が大分おかしな事になってるな)
呼びに行く往復で何かあったのだろうと、メルトを見ると苦笑いしながら頷いていた。
「先ずはこちらの紹介を。今回ノートが声をかけた元冒険者のネッカとシャーリです」
「使者様、どうぞよろしくお願いします。ネッカと申します」
「妻のシャーリです。よろしくお願い致します」
元冒険者だと言う獣人の夫婦は、身体は鍛え続けているのだろうというのが分かるくらいに引き締まり筋肉質に見えるが、ネッカは足を引き摺りシャーリは左腕をだらりと下げているところを見ると、2人共冒険者時代に怪我を負ってしまったのだろう。
「マスタ様。2人は怪我で冒険者を引退して小さな店を営んでいたそうなんですが、話を聞いたところどうもデッツの被害者のようです。ここまでは情報も届いていなかったでしょうし」
「そうか。デッツのその後は聞いたかい?」
「はい。使者様が捕らえて悪事を暴かれ、投獄されていると」
「借金が帳消しになっているだろうと言う事も聞きました」
「そこまで話してあるなら、急ぎ伝える事も無いから後で少し話そう。今は今後の仕事の話だ、座って一緒に聞いてくれ」
「「はい」」
2人に座ってもらったのを確認すると、マスタは反対に1人立ち上がり子供達を見回し声をかけた。
「みんな食べながらで良いから聞いてくれ。これからみんなにやってもらう仕事の話をする」
そう言って子供達を見回したところノートが肉串にかぶりつきながら言った。
「先に兄ちゃんの事教えてくれよ。少しは聞いたけどちゃんと知りたいんだ」
「…そっか、じゃあ先にそれを話そうか。……遠い遠い昔にこの世界を創ったみんなが神様と呼ぶ存在がいる。大地を作り空を作り海を作った。…そこに生きる物達を作り長い長い間見守って様々な事があって、魔法を使える世界にした。だけどそのうち魔法を悪い事に使って他人を騙したり操って襲わせたりする者が増えてきた。そして怨みや憎しみ嫉み苦しみ痛みと魔力が溶け合って魔物がたくさん生まれた。すると人々は追い詰められ困り果て神に願った、どうかこの困難を乗り越える力を貸して下さいと。だけど神様の力はとても大きく強過ぎて世界ごと壊してしまう。そこで違う世界から強い魂を持っている人を呼んできて、少しの力を与えてこの世界に送る事にした。そうして何度か活躍したのが英雄と呼ばれている人達だ。今回はちょっと事情は違うけど俺が頼まれて来たってことさ」
子供達もマスタの立場を知らされずに来た大人達も驚き固まっていた。
「じゃあ、やっぱり兄ちゃんがお伽話の英雄様なのか?」
「まあ、そうなんだけどバレたらすごく騒ぎになるから内緒でな?」
「「「うん、わかった」」」
ちびっ子3人は素直に頷いて目をキラキラさせて頷いた。
「でも…神様がいるなら何で俺たちを助けてくれないんだよ…」
ブロンが呟いて、他の子も俯いてしまった。
「ん〜ブロン、ちょっとこれ持って」
マスタがブロンが差し出した掌に一粒の豆を置いた。
「さあ、ブロンが神様だったらその手の中の世界をどうやって助ける?」




