王都−54
「世間に居られずここに来る人も居るでしょう。間違いを犯し逃げて来る者もいるでしょう。それと、ここでしか生きていく場所が無かった人もいるんです。実際に来て見て体感出来る機会はそう無いですから、自分の住む街として、または自分の国の王都の事として知っておいて欲しい」
マスタがそう話すと嫌悪感を露わにしていた者は、姿勢を正し真面目な顔付きになって、どこか他人事として興味本位な態度だった者は自分の態度を見直し、自分の国の王都の光景なのだと考えながら目の前を見るようになった。
「ここが、ハバルキ王都の光景……ですか」
王妃が呟くのを周りにいた者も聞いていたようで
「そうですね、このままで良い筈はありませんよね」
と答えを返すように言う者もいた。
スラムの通りは奥へ行くに従って、どんどんと荒れ果てゴミは増え臭いは更にキツくなってきた。
しかし口や鼻に布を当てる者も、えずく者もいなくなっていた。
そこへ一昨日聞いた声が聞こえてきた。
「あ〜!ダイアナだ!お〜い!」
チラッと見えてきた一昨日建てた小屋から出て来たアビィがこちらに気が付き手を振って走り寄って来た。
「アビィ!元気だった?みんなは?危険な事してない?」
アビィが来るまでも待てない様子で、ダイアナも走り寄って行きギュッと抱き締めながら話しかけていた。
「おととい会ったばっかりじゃん、元気だよ。みんなもいるよ」
そこに歩きながら追い付いたマスタ達も声をかけた。
「元気そうだな、良かった。甘い菓子も持って来たぞ」
「こんにちは、エリン達も呼んできてくれる?みんなでお話ししましょう」
「うん、わかった〜」
ぴょんぴょんと飛び跳ねながら、ニコニコ顔で小屋に戻って行くアビィを見つめ、驚いた顔から悲痛な顔に変わった大人達、そこから誰とも無く聞こえた言葉
「あんな小さな子が…ここで…?」
その言葉こそ大人達の心の声を代弁していた。
小屋の中からエリン、ノート、ニッケも元気な姿を見せ、続けて5人の子供が出て来た。
「エリンもノートもニッケも元気そうだな」
「危険な事はしなかったですか?怪我は無いようですが」
メルトも心配はしていたので、近くで怪我の有無を確認しながら声をかけた。
「兄ちゃんに言われた通り他の奴らに声かけたぞ」
「おお、ありがとなノート。後ろの子達のリーダーは誰だい?」
「俺だ、アンタがノートの言ってた人なのか?」
「ああそうだ、マスタって言うよろしくな」
「俺はブロンだ。いつもはこの5人で一緒にいる」
「そうか、とりあえず前みたいに食いながら話そうか。みんなで座る所と食べ物置く所準備してくれ、ここに木箱出すから」
マスタは腰に下げた袋に手を出し入れする演技をしながら、次々と木箱を出していく。
アビィ、エリン、ニッケはダイアナやメルトと一緒にせっせと並べていくが、ブロン達はポカンと口を開けたままマスタが木箱を出す動きを見続けていた。
ノートはマスタの側におり、木箱を出し終わるのを待って声をかけてきた。
「兄ちゃんに言われた大人にも声はかけたけど、兄ちゃん来たら呼びに来てくれって言われてるから、今はいないんだ」
「そうなのか。呼びに行くのに危険は無いのか?誰か一緒に行った方が良いだろう?」
「大丈夫だって、あそこならアビィ1人だって余裕だし」
ノート達もここに住んでいるだけに、危険には特に敏感だとは思っているのだが、いざ顔を見て安心した後の所為か余計に心配になっていた。
「私がついて行きましょう。ここで何かあっても話が進まなくなってしまいますから」
木箱を並べ終え、マスタの様子を見ていたメルトが進み出てくれたので、頼む事にした。
「直ぐそこだからいいってのに」
「声をかけたお前が怪我でもすれば、他のみんなも困るんだ。重要な仕事で護衛が付いたと思えばいい」
「俺が護衛付きの重要な仕事とか、なんか偉そうでヤダな。護衛もおっぱい姉ちゃんじゃッッツ〜」
「調子に乗らないの、メルトお姉さんでしょ?さ、行くわよ」
「ってて。は〜い…」
メルトにゲンコツを落とされたノートは頭を押さえながら呼びに向かうのだった。




