王都−53
「それじゃあ、もう一つ汚れた水を処理する魔法を…こう…球に纏めて…よっと。排水溝まで転がすとか?」
「それも練習します!」
「私もやってみます」
(一応他に良い方法がないか聞いたんだけど、ま、いっか)
目の前でマスタがやって見せているせいか、今の時代の水魔法を習得している者ではかなりの時間と技術を必要とする筈の事なのだが、2人はどんどんものにしていく。
「あ、これはすぐに出来ました」
「そう…で…すね、出来ました」
2人も出来たので、全員で浴室に道具などを戻して、マスタは浴室でメルトとダイアナは衝立のスペースで着替えた。
着替え終わった3人は街へ向かう為に、王城の馬車置き場に向かった。
馬車置き場には昨日の夜の会議で最後に残った要人達と他にも何人かの身なりの良い者が何台もの馬車と護衛隊と共に待っていた。
「本日は私共も同行致します、どうぞよろしくお願いします」
待っていた者の中から、サロンドが前に進み出て挨拶をして頭を下げた。
後ろに控えた護衛隊も続けて頭を下げた。
「こんにちは皆さん。だけど、どうしてサロンドさんが代表して挨拶を?見たところ他の方で立場の高い人も居るようですけれど」
「それは出来るだけ失礼の無いようにですね、マスタ様と会話した事のない人や顔を合わせた事のない人、立場的に王都の街で先頭に立って仕切る事は遠慮しておいた方がいい人等もいますので」
「理解した、それじゃあ先ずは向かいますか」
マスタは頷き、軽く頭を下げるサロンドに後をついてきてくれと伝え、自分達の馬車に乗り込んだ。
馬車の列も何台もになれば縦に大きく距離が伸びるので、1番後ろの馬車が門の所でどんどん遅れていかないか気になったが、事前に話がしてあったらしくすんなり通過できた。
ダイアナはアビィ達が心配なようで、外を見ながら呟いていた
「アビィ達危ない事してないかな…」
「無理はしないでしょう。危ない場所はあの子達の方が知ってる筈ですし。他の子達や大人との話し合いが上手くいったかは分かりませんが」
メルトも考えていたらしく、呟きが聴こえて直ぐに自分の意見を言っていた。
「あの子達を信じて、色々準備したものを持って行ってあげよう」
「はい!」
「そうですね」
馬車列は貴族街との境にある門も抜けて混雑している街の中へ。
何台もの馬車に避けてくれる人達が多く、いつもより進みは速い。
といっても、マスタにとっては4度目の事でしかないのだが。
召喚でこの世界に来てから未だ5日しか過ぎておらず、とても濃い日々を過ごしているものだと今更ながらに思った。
気力も毎日充実し、朝起きる時の気怠さも無く、この世界に来てからずっと感じている行動したいという意欲に溢れていた。
ダイアナとマスタのはやる気持ちが通じたのか、スラムの入り口近くまで馬車列は辿り着いた。
「ここからは歩きになるから、各馬車を端に寄せて御者と護衛の何人かを残して進もう」
「そうですね、後続にも伝えてきます」
馬車に止まってもらい、端に寄せる前に降りた。
メルトは後続に伝えに、マスタとダイアナは邪魔にならない位置に移動して一応周囲の確認をした。
後続の馬車に乗っていた人達も全員集まり、全ての馬車も寄せ終わると御者と護衛を数人残して、スラムの中へと歩き出す。
「ウプッ」
誰かが臭いのキツさに、えずく声が聞こえた。
何人もが鼻に布を当てて、顔を顰め辺りを見回している。
中間と最後尾にいる護衛は緊張し、周囲を警戒して何かあっても直ぐに対処出来るように、片手を剣の柄に添えている。
「ここも王都の一部で住んでいる人もいるんですよね。来た事のある人は?実際歩いた事のある人は?」
「「…………」」
誰もが返答出来なかった。
知ってはいる聞いた事はある、けれどそれは自分とは直接関係の無い場所の話で、危険もある場所にわざわざ来ることも無いのだから。




