王都−52
マスタは2人を直視しないと決め、メルトと入れ替わり浴槽で自分も横になってみる。
「お〜いい感じ。あれ、頭置き柔らかい?嬉しい誤算。あ〜早くも入りたくなってきた」
気持ちを振り払う様に立ち上がり、壁に手をつけシャワーヘッドと蛇口のセットを取り出すと壁の魔道具と重ね合わせて一体感させていく。
「マスタ様、これは何でしょうか?湯の魔道具が隠れてしまったのですが」
「これは蛇口とシャワーだ、お湯の通り道を調節して使いやすくした道具だよ。気を付けないとずぶ濡れになるからね」
コックを蛇口に合わせ捻ると蛇口からお湯が出る。
「ジャバジャバ……」
「この絵に合わせて切り換えるのですね、ではこちらにすればシャワーが出ると…」
マスタはこの後の展開がなんとなく予想でき、コックに先んじて手を伸ばした。
筈だった。
「マスタ様、ここでは…」
マスタの左手はメルトの服の隙間に入っていた…胸の。
「うおっと、ゴメン。勝手に切り替えたら上からシャワーの湯が出るからと思って」
屈み込んでいたメルトが丁度コックの前に出たので、タイミングが合ってしまった。
「マスタ様…」
じっと2人のやりとりを見ていたダイアナが少し胸を張って近寄って来たので、緊急回避するマスタ。
(服の下着てないんだった!やわこい感触が手に残って気になる!)
「じゃあ先ずは1人がシャワーヘッド持って。もう1人がコックを捻る。シャワーは出る向きに気を付けて」
「キュキュ…シャー…」
「このシャワーというのいいですね、頭からザブンと湯をかけるよりずっと良さそう」
「浴室内の掃除にも使い易そうですね」
今にもこれから風呂に入る話になりそうな雰囲気に慌てて声をかける。
「じゃあ、次は2人にやってみてもらいたい魔法だ。メルトは風、水でダイアナは水、土の適性があったよな。そこで2人には水を細く強く狙った位置に続けて出す魔法をやってみてもらいたい」
「う〜んと、やってみますね」
ダイアナが浴槽に向けて水魔法を発動させるも、大きい球状か小さい球状しかできないようで苦戦していた。
「マスタ様も適性がありますので、手本を見せていただければ助かります」
メルトがもっともな事を言ったのでマスタもダイアナも確かにと頷いた。
「じゃあ、やってみるか……それ」
「シュバッビビビビビ…」
マスタの手から飛び出した水は細い螺旋を絡ませるように真っ直ぐに伸びていき浴槽に当たり流れ落ちた。
それをじっと見ていた2人のうちダイアナが先ずはと声をあげた。
「分かりました!やってみます!」
「バシャジャバババビビビビ…出来ました!」
「そうそう、そんな感じ。メルトもやってみて」
「シュバッバシャ。シュバッバシャ。シュババババビビビビ…どうでしょうか?」
「うん、良いね」
「そしたら、これから俺が出す魔法を通り抜けるようにしてみて」
マスタの両掌の上に細い炎が螺旋に渦巻く魔法が横向きに出現し、正面からは輪のように見える。
2人の間に立ち2人の正面に手のひらを持っていき、互いにそれぞれを狙い水魔法を通す。
「シュビビビビ」
的が大きい事もあり2人共余裕で成功させる。
「マスタ様、通った水から湯気が出てます」
「もう良いよ、ありがとう。通った水がお湯になるのも成功だね」
「そういう事でしたか、これを使う場所があるんですか?」
「今日行くアビィ達の住んでる周辺をな、これを使うと汚れもよく落ちそうだから」
「あ、それは良いですね〜なるほど〜」
2人も俄然やる気が満ちて来たように見えたので、更にもう一つ試してみようと思うマスタだった。




