王都−50
王城の一室で会議用として準備された部屋に着いた3人が見た光景は、部屋の中に入れず廊下にまで溢れる人の群れで、その横を通り入り口に行くも、部屋の中もギュウギュウ詰めでなかなか奥まで進めなかった。
なんとか奥まで辿り着き、用意された段の最前列に陣取る王妃をはじめとした要人達に聞いてみたが、部屋はここが1番大きくて後は屋外になってしまうらしい。
マスタは諦めて声が聞こえるように、通路に溢れてしまった人に扉に寄ってもらい、聞こえる位置まで空間操作で長いメガホンを設置してから開始の言葉を発した。
まず初めに向こうの世界での概念と、こちらの世界でも共通するもの、違うものの比較。
人の裸眼では見えないものの説明、菌に関する事などの必要性と危険性。
物を拡大して見ることのできる道具として、幾つかの顕微鏡をセットして回し見てもらう。
その間に衛生管理の重要性と、洗剤の種類、手、顔、頭、服、食器、机等多数ある事。
同時に多数の洗剤を流す事による弊害、環境問題。
食い入るように前のめりで見聞きしていた人達に、こちらの技術では未だここまでのものは作り出せない事。
つまり、継続的には使えない事、1度使うとなかなか程度を落とした物では満足出来なくなる人の欲。
「多数で使い出した結果の弊害等を事前に準備出来るのに、やらない人にまでばら撒く事はしたく無い。この世界にはこの世界のやり方がある筈なので、無闇に川に流したりせず使う場所を決めて、魔道具なども考慮に入れてろ過など出来ないかという案を考えてきた。これを元に出来る出来ないや方向性と改良の検討をして欲しい」
マスタの後ろに貼られた板にはメルトが順に今日話した事を書き出している。
小さいホワイトボードをいくつも繋げ、ガムテープで貼り付けているのだ。
「先ずはこれまで話した事を理解して賛同、協力出来る人は自分の名前を記入して、コレを受け取ってくれ。
これは環境汚染のし難い洗剤として作られた物で、コレを先行して配布する代わりに各自協力を頼みたい」
「「「「「わあああああ〜!!」」」」」
渡す前なのに割れんばかりの大歓喜が部屋を満たした。
一通り配布し終わり、要人のみ居残ってもらい今後要請したい事を話す。
貴族のご婦人達の後ろには、服装髪型を変えた王や貴族達がこっそりと何人か混じっていた。
(なんでコソコソしてるんだ?ここまで減ると目立つんだけど。って言うかバレてるけどみんなに)
「先ずは孤児院について。援助金、寄付金が減り運営がまともに出来なくなっている。これは召喚の為に削られた予算のようなので、今後同じ事が起きないように孤児院で独自に出来る紙の生産を俺が教えようと思っている。なので、販路や買取金額等の商業組合との繋ぎ、今現在紙の製造をしている物達への連絡をして貰いたい。」
「それくらいでしたら直ぐにでも。商業ギルドにも対応致します」
(商業の方もギルドなんだな)
王妃が即答し、周りの人達も王も頷いている。
(さっきの召喚の所為で補助金減らした話の時は、振り向いた婦人達から目線逸らしてたのに)
「次は貧民街、スラムについて。ここはあなた達にも1度は直接足を運んでもらいたい。理由はあると思うけど見聞きするのと、体感するのはまるで違うと実感出来る。そして、手始めに一部の建物の撤去、建て直しと清掃をしようと思う。それに伴う土地の所有権の確認と大工の手配を頼みたい」
「それも大丈夫です、お任せ下さい」
「一部の子供達に犯罪をさせない為に、今現在仕事としてスラムの地図を描く手伝いをしてもらう事を頼んでいる。描かれたこの地図は国で買い上げて欲しい、危険な場所は除外してあるので逆に分かりやすいし有事の際にも役に立つ。その金で急場を凌ぎつつ、その後、街の案内の仕事を薦めるつもりでいる。その際も商業ギルドに店との金額決めをやってもらおうと思っている」
「街の案内…それで商売になりますか?」
「初めて来る人、旅の人に安い宿や食事の美味い宿、店を教えてほんの少しのお金でハズレを引かないで済むと思えば、需要はあると思う。武器防具、雑貨に工房他にも色々案内できる事はある」
「なるほど。そういうものかもしれませんね」
(上流階級は自分で行かないし、決まった所しか行かないからな。世界が狭くなりがちだな)




