王都−49
マスタは返してもらったノートとペンを持ち眺めながら
「向こうじゃありふれていて溢れるほどある物だから、これに関してはそんなに高く無いんだけどな。これは内緒だけど、両方で銅貨2枚くらいだしね。生活に根差してる物だから、有り難みを忘れる事はないけど」
「ど、銅貨!…あの、マスタ様。私の今回の報酬でお支払いしますので、私に1つご用意願えませんか?勿論衆目に晒す様な事は致しません」
「まあ、それなら良いか。因みに用途は何に使いたいんだ?それによっても種類が膨大だぞ」
「それ程に…ええと、日々の記録をしたいのですが」
「マ、マスタ様!私もお願いします、これから覚える事も多いので使いたいです」
2人から金貨を1枚ずつ渡されたがマスタは断り、今回は今迄の買い物の残金で買える物にすると決めた。
「この能力で消えた硬貨がどこに行ってしまうのか分からないから、無計画に使うのは少し控えたいと思っていたところなんだ」
掌を見つめ買う物を選びながらも、散々買ってしまった物を思い返し、価値の低い硬貨に変えて使うべきだろうと、言い訳的な妥協案を考えるマスタだった。
「この様な美しい物に書いてしまうのが勿体無いと思ってしまいますね」
「ああ〜っ、可愛すぎる〜凄い凄い」
「メルトに渡した物は、纏めて保存する為の大きい物と持ち運び出来る薄い物で、紙が別になっているから書いた物を保存用に移し替えて後で見返せる」
「本の外側だけなのは、後で入れていく為なのですね。紙に開いている穴はどれを使っても良いようにですか?」
「いや、ここをこうすると…カチン!。ほらこうなるから…どうした?」
メルトとダイアナが少し緊張した顔でマスタの手元を見ていた。
「他人が弄るとその罠が発動するのですね」
「手を挟んだら痛そうですね」
「違うよ?気を付けた方が良いけど痛く無いし。ここに紙の穴を合わせて入れていくんだよ、捲り易くて開いた場所が勝手に閉じないだろ?」
「…本当ですね、鋭くないです。」
「こっちのも痛くないです」
2人はバインダーの金具を指先で突いて確認しながら話し合っていた。
「メルトの方は緑の革表紙で紙には花柄が薄く入っている。ダイアナの方は水色の革表紙で想像上の人魚の姫が描かれている。紙の方は貝や魚が薄く入っている。ペンも2人の物に合わせてそれぞれ花と人魚の柄付きだ」
その後一通り説明をして、興奮する2人を宥めつつも王城に向かう馬車。
王城に着くまで馬車内には、カチカチとペンを押す音が止まらなかった。
王城に着き部屋に直行したマスタは、この後の会議の最後の準備をすべく掌の画面と戦っていた。
前日の夜にも準備はしていたが、疲れて中断したので残りを慌てて買い込んでいき、無限倉庫から机に並べる。
メルトとダイアナは並べた物を確認して、事前に聞いた情報を反復し合いながら覚え、時々貰った手帳に書き込んでいた。
一通り終わり、お茶の準備をお願いしようかとした所で、部屋に会議の準備が出来ていると知らせが来た。
場所を確認して、直ぐに行くと伝えに戻ってもらい、こっそりペットボトルの紅茶を飲み喉を潤して向かう事にした。
それを更にこっそり見ていた2人にも渡す事になったのは言うまでもなく。




