王都−46
ドイルは顔面に力を入れて唸っていた。
「………くう……く………」
そろそろ5分ぐらい経つだろうか、ドイルが諦める姿勢を見せかけた時。
「形は鳥…炎で出来た鳥…熱い炎の鳥…熱く燃え盛る炎を纏って…赤赤と燃え上がる鳥…」
想像を具体的に出来る様に、ゆっくり話すマスタの言葉に合わせて、炎が鳥になっていきドイルの前で翼を広げ始めた。
メルトとダイアナにゴブリンを穴に落としてもらい、完全に炎の鳥となってドイルの前でゆらめく炎の鳥を見ながらドイルに言った。
「出来たね、じゃあゴブリンに向けて頼むよ」
汗まみれの顔で炎の鳥を造り出したドイルが、地面に空けた穴を見つめ手を翳す。
「バサッ、フュー……バフォウ」
一つ羽ばたき滑空した炎の鳥は穴に目掛けて飛び込み、直ぐに火柱が上がった。
「で、出来ちまった、は、ははは…」
座り込んだドイルは子供の様に笑っていた。
炎が消えたのを確認してダイアナの土魔法で埋め戻し、ドイルの回復を待って移動する事に。
みんなで座り、お茶を飲みつつ一息入れていると、ドイルがマスタにお礼を言ってきた。
「正直諦めかけてたんだけどよ、さっきの言葉で炎の鳥が成功出来た。ありがとよ。背中を押してもらって、嬉しく感じる事は初めてだったよ」
「そうか、そりゃ良かった。個人的な拘りで、いつもは上から目線で言うのは得意じゃ無いから。人の上に立つと言う事をしない様にしているから。教える時は同じ高さで先導する様に、背中を押す様にしたいと思っているしな」
「ん〜目上の者が目下の者を教える時は、自分を基準に引っ張り上げてやるもんなんじゃねえのか?」
ドイルはいまいち理解できない様子で唸った。
「同じ所に辿り着くにしても、教える側の姿勢が違うだけと言う事でしょう」
「多分ドイルの言う引っ張り上げるやり方だと、背中を押して貰ってありがとうとは言われなかっただろうな。…ちょっとだけ役作りして言ってみるか?」
「面白そうですね〜マスタ様。私も聞いてみたいです」
何故かダイアナがのってきた。
「じゃあ……おい、そうじゃねえよ。もっと想像力しっかりしろ、分かんねえのか?俺が出来てるんだからお前も出来る。よし、ほら出来たじゃねえか俺の言った通りだっただろ……ってとこかな?」
「何かケツ蹴られる感じじゃ無いか?それ」
「ふふふふふ。まさにそんな感じでしたね」
メルトが我慢しきれずに笑いながら言った。
「下品ですけど、ピッタリの表現ですね…くくく」
ダイアナも同意すると横を向いて笑い出した。
「まあ…それが得意じゃ無いから、背中を押したと感じられて俺も嬉しかったってことさ」
マスタも演じた恥ずかしさを隠す様に笑った。
休憩も終わり、ゴブリンを倒した場所から更に進んで2回ほどまたゴブリンに遭遇するも、いずれも2匹だった為メルトとドイルが順にサクッと倒してしまい、マスタとダイアナは解体練習を頑張った。
ドイルが焼却しダイアナが埋め戻しをしてを繰り返し進むも、それ以降魔物には出会わず、猪に似た動物をマスタが1匹仕留めたのみだった。
これも2人で解体練習し、不要部分を埋めると腹の虫が鳴いたので、少し遅めの昼食にした。
お待ちかねの豪華弁当の包みを開けるとパンの間に葉野菜と薄切り焼き肉が交互に4層に挟まれたサンドイッチだった。
一緒に貰った筒からスープを注ぎ各自に分け渡し「いただきます」の合図で齧り付いた。
ドイルが不思議そうにメルトに聞いていた様だが、まだ温かい昼食が冷めるから先に食べようと言われていた。
キノコスープはコクがあるのにあっさり味で、焼き肉サンドっぽい方は肉汁とパンに塗られたソースの味が絶妙でとても美味かった。
食事休憩も終わり、移動再開しようとしたところで、メルトとドイルが周りを気にし始めた。
マスタとダイアナも息を潜め見守っていると、メルトとドイルが前方で視線を止めたのがわかった。
同じ方を見てみると、大きな灰色の背中がゆっくりと近付いて来ているのが見えるのだった。




