王都−45
ハバルキ王都の街壁西門を出て40分程歩いた場所に脇道があった。
そこに来るまでにも、幾つか人の踏み固めた脇道らしき場所があったので、冒険者などが使っているのだろう。
「この辺りから入りましょうか。暫くは街道から近いので何もいないとは思いますが、油断だけはしないように」
王都の冒険者だったメルトの意見を聞いて決める事にしたマスタ達。
「了解」
「は、はい」
「おう。大丈夫だ」
メルトの後にダイアナ、マスタ、ドイルの順で縦列になり、林という感じの木と下草の中を進む。
時々立ち止まって薬に使える草、料理やお茶で使える植物、食べられるキノコ等を教えてもらいながら採取もして行く。
「これ、怪しい魔力だだ漏れのままだったら、何も会えなかったんじゃないか?」
枝に留まっている鳥を見ながらマスタが呟いた。
「はは、間違いない」
ドイルがそれを聞き笑いながら答えた。
その時メルトが足を止めて、後ろに向けて手を挙げた。
全員が息を潜め屈みながら、ゆっくりとメルトの場所まで集まる。
無言のままメルトが指差す先を凝視すると、30メートル位先に動く何かが見えた。
「ゴブリン2匹。誰が?」
潜めた声で短く聞かれ、マスタが自分を指差した。
草に隠れて良く見えてはいないが、右の方に向かっているのが分かった。
マスタはそっと左に前進し、後ろに回り込みながら距離を詰める。
15メートルを切った辺りで見えない壁を発動し、ギリギリ見える位まで屈み込む。
「「ザサササー……ドドン!ドドン!」
草の上を滑る様に進んだ見えない壁は、草で擦られる音に気付き振り向いたゴブリン達の顔面に直撃し…頭部を後ろにあった木にめり込ませた…
((うわあ。緊張していたのかな、加減が。強過ぎた)
「ドサドサッ」
遅れて倒れた頭部の無い2匹の体。
マスタは息を吐き、立ち上がって終わった合図を出した。
「うおっ。加減しないとこうなっちまうのかよ」
「マスタ様、討伐報酬は体内魔石くらいですが、木にめり込ませると後処理が大変ですので何か違う倒し方をされた方が宜しいかもしれませんね」
今更全力じゃ無いとも言えず、倒し方も変えなければと思っていたので、素直に頷く。
「了解。何か考えるよ」
「うう〜体内魔石は何処にあるんですか?」
ダイアナも慣れない事に、顔を顰めていた。
「胸の部分だな、心臓の下辺り」
マスタとダイアナが経験を積む為に解体を担当して魔石を取り出す事に。
「これか」
「透明の小粒なのがありました」
倒したゴブリンは焼却して埋めるのが基本らしいので、ダイアナに土魔法の練習もしてもらう事に。
但し、今後従者に成るのならと、マスタが知り得た魔法の知識で実践してもらう事にした。
「この世界の魔法の使い方なんかは一度忘れたつもりで、想像ははっきりしっかりと、強く。土に魔力を流して土を避けていく様を具体的に…やってみて」
「はい。ん〜〜…………ん〜」
2分ほど待って変化が現れた。
徐々に土が盛り上がり、下からどんどん上がって来る。
そこから更に3分くらいかかり、人が立って入れる穴が空いた。
「……こいつは…どうなってんだ?初めてじゃ無いのか?」
「ふ〜、初めてでも出来ました、ふ〜…」
「魔法と言っているものは、過去からこうなんだと決め付けられたものだけじゃあ無いって事さ。今までそういう刷り込みをされていない人であれば、早く使える様になると思うよ」
「何だよそれ」
「世界を騒がせたい訳じゃ無いし、過去の使い易い魔法を考えた人達を否定したい訳じゃ無いから特に広めはしないけど。…ドイルも火で何か…鳥でも造ってみる?」
「詠唱は?おれは火の玉を飛ばすか、剣に纏わせるしか…」
「そう、それ。その思い込みを一度忘れないと」




