王都−44
「いや、失礼した。手早く済ませる、暫し待ってくれ」
「ビュートさん、今のうちにあなたの代わりに登録等をやってくれる人を、用意しておいて下さいね」
ウキウキ顔の受付嬢にマスタはアドバイスした。
「そうですね、では失礼します」
マスタはお茶を飲み一息つき、メルトとダイアナにも声をかけた。
「この先本当に従者として来るつもりなのか?俺は数年で向こうへ帰る。その時はどうする?その後は?」
「それは…」
「構いません。後世に残すべき事をこの目に焼き付けて記憶にも残し、生涯伝えて行く役目として全うする覚悟です」
「…私も。マスタ様の成した事を無かった事にならぬ様に、伝えて行く生き方を覚悟しました。…アビィ達の様な子が幸せに生きて行けるように」
「……分かった、じゃあ2人も冒険者登録しておいてくれ。今後の為に」
「「はい」」
リンダはもう書き終わったのか、ソファに戻って来て座った。
そこへ丁度ビュートが代わりの人を連れて入って来た。
「こちらが私の代わりに登録作業をしてもらう、アパルトンです」
「よろしくお願いします、アパルトンと申します」
「では先ずビュート、これを頼んだぞ」
「はい。最速で行ってきます」
静かな気合を入れると颯爽と出て行った。
代わりのアパルトンの紹介もそこそこに、一連の行動をする2人をジト目で見つつ話しかけるマスタ。
「それじゃあ、登録を3人と更新を1人頼むよ」
「承りました」
当のアパルトンはリンダとビュートのやり取りも気にした様子も無く、淡々と作業を進める。
登録作業はマスタを残し終わり、ドイルは更新をして貰いながらアパルトンに説教されていた。
それを横に聞きながらリンダが属性魔石を持ちマスタと話していた。
「私も見た事も聞いた事も無いね、しかも全属性とは。これ以外に別の力もあるのだろう?やはりCランクタグで作ろう」
「Cランクはある程度の中堅冒険者じゃないんですか?良いんですかね?」
「いや、新人扱いの方が不味いな、ランク詐欺呼ばわりされる」
「…わかりました、お任せします」
何となくテンプレ、フラグを回避していそうで内心ホッとするマスタ。
「メルトはDランクからになるがすぐに上がるだろうしな。ダイアナ嬢は魔法や魔術にかなりの素質があるようだ」
リンダが頷きながら横を見てドイルに言った。
「これに懲りたらギルド以外の依頼は受けない事だな。強制する為じゃなく保護する為に全員に言ってる事だ。今更だろうが」
「分かったよ、これからは選り好みしないようにするさ」
「まあ、好む依頼がすくないのはなあ…分かるんだがな。それこそ全員が通る道だ、頑張れとしか言えんがな」
ドイルのやりたい事と依頼が一致しないようだが、仕事は他人がやらない、やり難い、時間を割けない事をやる事が多い。
それと自分の出来ることの範囲で選ぶ事になる。
リンダもそれは理解しているのだろうが、出された依頼を割り振るギルドとしても希望する依頼を集めるのは難しいんだろう。
その後無事登録作業が終わりそれぞれのタグを貰い、近くの狩場を聞き冒険者ギルドを出た。
ドイルもついて来ると言うので、一緒に武器屋に向かい必要な物を最低限買う事に。
マスタは解体用ナイフ、ダイアナは小盾とワンド、メルトは採取用袋と討伐用袋、ドイルも袋を幾つか買い西側の外壁門を目指した。
「メルトが今日持ってるソレが昔から使ってる剣か?」
「そうですね、片手用の細剣と後は投擲用ナイフがあるのでそれも使います」
「ああ、ポーチか」
「手の内を見せない意味と身軽に動ける意味でも重宝しています」
そんな話をしているうちに門に着いた。
大きな門の真ん中に衛兵が立ち、その左右を出る人と入る人が並んで順番待ちしていた。
1番後ろに並び眺めてみると、左右で6人の衛兵が対応しているようだ。
それぞれ担当が決まっている様で、会話して身分確認する人、積み荷や手荷物を確認する人、真ん中に背中合わせで立って馬車の下や、反対側から見えない所を確認する役目のようだ。
3台の荷馬車が同じ商隊だった様で一気に進み、マスタ達の番になった。
身分証のタグを見せ、話をして、荷物を確認かと思ったら。
メルトの見せた王家の紋入りのプレートで素通りに近かった。
「次からは向こうの貴族用門でお願いしますね」
と言われる始末。
「今回はこちらを通りたいそうなので」
なんて事をメルトが衛兵に説明していた、衛兵苦笑いだ。
マスタの異世界初検問はこうして終わりを告げた。




