王都ー43
王都の冒険者ギルドの登録窓口で担当の受付嬢が、ギルドマスターと会えないかと確認に行っている間、マスタは王都で冒険者をやっていたメルトに話を聞くことにした。
「メルトは現状では、どういう扱いになっているんだ?休職中の冒険者?」
「元冒険者や引退者の括りだと思います。過去の記録は残っているとは思いますが、ランクタグは使えなくなっているかと」
「そのランクタグが身分証明の代わりになったりするのか?他の事にも何か使えたりは?」
「はい、ギルドにお金を預けられ、出掛けた先でも引き出せます。その時にタグを使います、後は…」
「お待たせ致しました、隣の扉を開けてお入り下さい」
カチリと錠の空く音が聞こえ、メルトが取手を押すと扉が開きそのままメルトに先行してもらい、皆んなで後に続いた。
受付の後ろを通る通路らしく、ビュートが通路の先に見える出入り口の所から出て来て先行して案内してくれた。
通路の突き当たりの階段を上り2階の1番奥の扉をノックする。
中から女の声で返事が聞こえて、ビュートが開けてくれた。
室内にはふわりと新緑のような香りが漂い、奥の壁際の大きく堅牢という感じの机に女性が座っていた。
机に比べ椅子の方は、見える背もたれは柔らかそうな紫色の生地で高級品と分かる造りだった。
「初めまして、マスタと言います、よろしく」
「冒険者ギルド、グランドマスターのリンダ・クリートッドよ」
「今日は俺の登録とそれに伴う話をしておきたくて、伺わせてもらった」
「そうですか、お掛けになって下さい。ビュートお茶お願い」
マスタだけソファに座り対面にリンダが座った。
見た目は40歳にもいかないくらいに見えメルトに負けずスタイルも良く、薄い緑の髪を長く下ろした目力のあるキャリアウーマンといった感じだ。
「メルトは…暫くぶりね…どうかしら?城勤めは」
「お久しぶりですリンダ様。いえ、今はマスタ様の従者をしています」
「私も従者をしています。ダイアナと申します」
「…ダイアナ嬢はイワノフ侯爵のお孫さんじゃなかったかしら?」
「2人共自称ですよ。従者と決めた『『従者です』』わけじゃ…」
「…それは…2人の肌と髪の艶に関係あるのかしらね?」
「………後でお話しします」
「そう。じゃあサッサと話を終わらせましょう」
(ブルー○スお前もか!って使い所違うか…)
執務室でマスタの立場について一通り説明をした…
「そうか…。それでその2人の見た目とどう関係するのかな?」
リンダの意識が、いやビュートもだったがあからさまに、メルトとダイアナに向いていた。
「いや、その事はその後獲得した俺の能力で…」
「じゃあちょっと私にもその能力を使ってみてくれ」
しれっとそんな事を言ってくるリンダ。
「え〜と、能力で造る物の効果で簡単にはお譲りできない物でして…」
「いくらだ?適正な金額に色を付けて支払おう」
(だんだんと話し方の優雅さが無くなって来てるな。これ以上は良く無い気がする…)
「え〜……今日の夜、王城で会議をしてから試験的に配布する予定です。王妃様主導ですので、俺から聞いたと言って一緒に参加して下さい」
「そうか、分かった。ビュート、直ぐに書くから書簡を王城へ届けてくれ」
「分かりました。参加は2名でお願いします」
「2人共…そんな事は後回しでいいから、登録をお願いしますね」
「「そんな事?」」
つい、言ってしまった一言に部屋の温度が下がった気がした。
「……分かったので。早く書いてしまって下さい」
少し反省するマスタだった。




