王都−41
渋る3人から本を回収して、リフィの店を後にする。
結局2人は服を買わずに、本から選んだ気に入った物をそれぞれ作ってもらう事に決めた様だ。
リフィの店を出て門を潜るとあの混雑があるので、広場で馬車を降りまた夕方合流予定にしてもらうように御者に頼んだ。
「ちょっと早いから昼飯用の持ち帰り料理作ってもらえるか聞いてみるかな」
「冒険者多いですから。持ち帰る用もありますよ」
「どんな中身か知ってるんですか?教えて下さい。メルトさん」
「聞かずに開けるまでの楽しみにしておくのが良いわよ」
「そうだなぁ。それが良いだろうな」
「え〜、そんなあ」
「……」
持ち帰り用の料理に期待を膨らませ話弾むマスタ達の後ろを、少し離れて無言で歩くドイル。
マスタ達も気が付いているものの、余計な事は言わずに歩いて行く。
大通りを進み広いT字路を曲がって、肉の焼ける香ばしい匂いがしてくれば直ぐそこだ。
今日も大きく開け放たれた入り口からは美味しそうな香りと賑やかな声が聞こえて来る。
「こんちわ〜」
「いらっしゃい!おっまた来たね!じゃあ…ドイル!ア〜ンタねー!なーにやってんだよ!」
「ドイルだってー?!どこだ!おお、…らっしゃい。…ドイル!」
「よ、よう」
まだ昼には時間も早いのに、店に来ていた多くの客が入り口の店主夫婦に注目して、会話を止めて見ていた。
「とりあえず、ここじゃあお客に悪いから奥の席いいか?」
「…ああ。気い使ってもらって悪いな」
「じゃあ、席行っといて。飲むもん持ってくよ」
マスタの気を使った言葉に、2人は気持ちを落ち着かせた。
奥の席に着き、お茶を持って来たトーミと作業を切りの良いところで止めたコングが席に来るのを待って、今回の件の説明を始めた。
久し振りに顔を出そうと王都まで来た際に、何か手土産をと店に行きそこで割りの良い仕事を頼まれ、もう少し良い物を買ってやれるかもと飛び付いたところが、今回の顛末になったらしい。
「気持ちは嬉しいが、冒険者はギルド通さなきゃ駄目だろうが」
「ったく。ま〜たギルドの評価に響くじゃん。何やってんのさ」
「迷惑かけたな、言い訳もねえよ」
「ま、怪我も無くお咎め無しなら良いさ。……んで、どうやってマスタにやられたんだ?」
「…あ〜まあ、何もさせてもらえずに、一方的に一撃で倒されたよ。手加減されてな」
「…」
思い出しながら落ち込むドイル、想像出来ず絶句するコング。
「本当かい!そりゃ凄いんだね、想像も出来ないけど。私らでも受け切れないかね?」
トーミは冒険者時代の血が騒ぐのか興奮気味だ。
「ありゃ無理だな」
「ちょっと、俺はやりませんよ。試しにとか言われても」
断りを入れておくマスタだが、納得しない鉄壁コンビには通用しなかった。
「いいだろ?大丈夫だって」
「俺に得ないし、現役引退した人だし、怪我させたら店困るし、え〜と…二つ名大事にして下さいよ」
「んなもん気にしね〜よ。稽古は毎日欠かしてねえんだ」
「じゃあ、私の奢りで料理を豪華にしてやるよ?」
引く気のない鉄壁コンビと料理に釣られたのかマスタを説得し出したメルトとダイアナ。
そして結局やる事に。
店の裏手にある鍛錬用スペースなら周りからも見えないと言う事で、そこに移動した。
かなり本気のようでトーミはカウンターから例の盾を持ち出して来ていた。
片手で持っているところを見ると、まだ現役でも通用する様に見えた。
盾を地面に突き刺し、準備が出来た鉄壁コンビから声が上がった。
「「よっし、こいやあ!」」




