王都−39
落ち込んでいたマスタだったが、これからの事も考えると過ぎた事だと開き直ることに決めた。
「ちょっと馬車を寄せて止めてもらえるかな?メルト」
「畏まりました」
メルトが御者に合図を出すと、馬車は直ぐに端に寄り停車した。
「魔力の扱いが未熟な所為だと思うんだけど、これ以上何処か行くたびに警戒されるのも困るから、対策を試してみるよ」
「何か良い魔道具でもあるのか?」
ドイルがメルト達に聞いていたが、2人が黙って見守る様子を見て同じ様にマスタの行動を見守る事にした。
3人の見守る中マスタは目を閉じ身体を巡る魔力に集中していく。
圧縮する様に小さくしていってもある程度までくると反発して元に戻ってしまう。
今度は細く絞るようにしてみるも、速く強く巡るようになるだけ。
考えた末に魔力を認識しにくくすれば良いと思い、色々想像していた時だった。
魔力隠蔽 を獲得していた。
「ああ〜、そっちじゃ無くて」
マスタがそう呟いた瞬間に、感じていた魔力が消え去った様に感じた3人は、驚きながら凝視しマスタの次の言葉を待った。
「魔力を目立たなくしようと、あれこれやってたら魔力の隠蔽を覚えちゃったみたいだ」
「…な、何なんだよ!それ」
「さすが、マスタ様ですね〜」
「闇属性の魔石を使った魔道具で短時間ですが、魔力の隠蔽が可能な物があります。それと同じ効果かも知れませんね」
「魔道具買わなくて良くなった分得したと思えば良いか。特に負担もないし…じゃあリフィさんの店に向かおう」
ドイルのツッコミは無視されたまま、動き出す馬車。
「向こうに着いたら話そう」
の、言葉で説明する手間を一度で済まそうとするマスタに、何度目かの追及を諦め、馬車の外に目を向ける事にしたドイル。
最近の自分が、もう冒険者としてのある程度の強さと経験をして、これからは何か惰性の様に過ぎて行く気がしていてやりがいが無くなってきていたのだと今更ながらに気が付いて、それがマスタという存在に会って変わりそうだと、期待の気持ちが湧き上がり冒険者になりたての頃を思い出すのだった。
リフィの店に着き馬車を降りた4人は店の表にある扉を開けて中に入った。
扉にはプレートの看板が掛けてあり 緑の庭園 と書かれていた。
店内もそれに合わせたのか、所々に花が咲いている植物や緑色の大きな葉が綺麗な木が植えられていた。
奥のカウンターには蔦が模様の様に綺麗に絡み、小さな花が蔦が本物だと主張していた。
店員さんを棚の裏側で見つけて、リフィさんを呼んでもらう事に。
直ぐにリフィさんが奥から顔を出し
「いらっしゃいませ。皆さんこちらにどうぞ」
と促されて、みんなでついて行く。
廊下に入り直ぐの扉を開けて部屋の中に入ると、応接間として使っているのだろうその部屋も、緑に溢れ草の香りのする落ち着いた空間になっていた。
「ソファにどうぞ。今お茶をご用意しますので」
ダイアナが準備を手伝いマスタはソファに腰掛けたが、何故かメルトもドイルも後ろに立ったままなので、視線を向けたが首を横に振られてしまった。
お茶を持ってきたリフィとダイアナは人数分をテーブルに置いて、リフィだけが対面に座りダイアナは後ろに下がった。
「前回は名乗らなかったので改めて。マスタという。よろしく」
「リフィと申します。この間はありがとうございました」
「うん。先ずはこの間の報告と思ったんだが、この店にも調査とか来たりして聞いたかな?」
「はい。お借りしてお支払いした仕入れの代金も正当な金額以外は返ってきました。それを返済に充てるつもりだったのですが、返済の必要は無いと迷惑料として受け取る様にと言われました」
「なるほどね。それで良いと思うよ。他にも沢山の被害者がいて苦しめられたんだから。それを決めたのもシランゼ・ダーマス子爵本人だしね」
「そうですか。仕入れ先も脅されたとはいえ、申し訳無かったと謝ってくれたので。取引も今まで通り出来ますし」
そこで後ろにいたドイルが頭を下げた。
「俺も騙されたとはいえ、加担してしまった。すまなかった」
「あなたはあの時の?そうですか…謝罪を受け入れます」
「ありがとう」
ドイルがもう一度頭を下げたのを見て話を進めた。
「因みに2人とは知り合いなんだよな?」
「メルトとダイアナさんですね。ええ」
「じゃあ、みんな座ってくれ。お茶も冷めるしな」
そう言ってカップを取って口元まで運ぶと花のいい香りがした。
「良い香りのお茶だなあ」
「ふふ。ありがとうございます」
「さて、俺の事を少し話すか…」




