王都−37
馬車で王城まで戻ってきたマスタ達は騎士から宰相の伝言を聞き、執務室まで来て欲しいと告げられる。
メルトに先導されて執務室に着き、ノックして声をかけるが中からの返事は聞こえなかった為、どうしようかと思ったら、たまにある事だと扉を開けて入るよう促す2人。
部屋に入ると目に隈のあるナガールが机から立ち上がり
「どうぞソファにお掛け下さい」
と自分も向かいながらそう言った。
マスタとナガールだけソファに座ると早速話が始まった。
「来て頂いたのはデッツの件です。王都の屋敷を調べさせたところ、他の件も出てきたのでそれも追跡させています。今回の件は周りの証言、記録から、脅して仕入れ値を上げた事にさせ、他の店には在庫が無いと言わせて、さらに冒険者を騙して雇い債務者を拘束すると説明して、その後リフィの店に行き彼女を連れ去ろうとしたようです。借用書も元々意味のない様な物でした」
「そうですか。今後はどうなります?」
「兄であるシランゼ・ダーマス子爵が責任を持って被害者に謝罪、返金等し、弟に関しても自ら処断する事で他の貴族や自領民、被害者に態度を示すと。マスタ様の手を煩わせたくないと言っております」
「分かりました。騙された冒険者は釈放ですか?」
「そうなりますが…」
「それで構いません。騙された被害者でしょう?」
「ありがとうございます。それから王妃様が何やらマスタ様からの要望があると、明日の夜に会議を開き発表されるとか。そんな事を聞きましたが、それについては…」
「あ〜、俺の持つ知識で環境整備と衛生管理などの、説明会と思ってもらえれば。後は文化の促進を少し」
「ふむ、それは後ろの2人の事とも関係ありますかな?」
先程からチラチラと後ろの2人に視線を送っていたナガール。
「まあ、多少は。会議の時は誰に聞いてもらっても良いので」
「畏まりました。ありがとうございます」
心配事が減ってホッとした顔のナガールの執務室を後にして、マスタの部屋に戻る。
「さて、これからちょっと準備する事があるから、2人共手伝って」
そう言ってマスタは2人に口頭で言ったことを書き留めてもらう。
その際に意味の分からない事などを、質問してもらったりして確認しつつ纏めていく。
それが終わった後マスタはトイレに向かい改造を始めた。
(もっといろんな能力獲得してからと思っていたけど、ちょっと限界)
大きなおまるのようなトイレを無限倉庫にしまい、バイオマスの簡易トイレをセットして消臭剤を置いた。
(最低限いじらせてもらって、後は会議で許可貰おう)
リビングに戻ったマスタは2人がいなくなっていたので、風呂場に向かうと声が聞こえてきた。
慌てて足を止めて声をかけた。
「お〜い。もしかして、風呂入ってるのか?」
「「入ってま〜す♪」」
(マジか。今から出かける所も無いし)
そういえば共同浴場だと聞いた事を思い出す。
上着を掛けソファに寝転がり、今後のためにレベル上げの方法を考える事にした。
明日リフィの店に行った後、冒険者の組合に行ってみようかなどと考えていると、ふとアビィ達の事が頭をよぎった。
「今日はゆっくり寝れていると良いな‥」
1人呟き軽く目を閉じた。
「お先にお借りして、すみませんでした」
「ありがとうございました」
石鹸の香りと共に2人が風呂場から出てきた。
マスタは目を開けると起き上がり
「先に食事にしようかな。お願いするよ」
と言ってまた寝転がった。
(バスタオルも買っておこう。それと〜)
掌の小さく映る画面の世界に没頭して、今すぐ救う事のできないもどかしさを誤魔化した。
2人はそんなマスタの様子に何か感じ取ったのか、静かに部屋を出て食事の準備に向かった。
その後夕食を持って戻ってきた2人を見ると、案の定濡れたままの髪だったのでバスタオルを貸してあげ、2人が髪を拭いている間に先に食べ始めた。
髪を拭き終わり席に着くと、ダイアナが料理を見ながら
「そういえば出した煮込み料理が温かかったですよね。あれってお店で持ち帰ったやつじゃあ?」
と思い出したようなのでダイアナにも説明してあげる。
「時間経過がしない事を確認する為に、色々入れていたんだ。つまり作りたてで傷まなければ、買い溜めも出来るし」
「やっぱりアイテムボックスとは違うんですね」
メルトは昼間聞いていたので驚きは無かったが、マスタの能力の特殊さに呆れていた。
マスタの考えまで飛び抜けていると実感するのは、もう少し先の話だが。




