王都−35
「頼みたい仕事は幾つかあるんだが、先ずはこのスラムの道で君達が通っても大丈夫な少しは安全な道だけ教えて欲しい。どうだ?難しく無いだろう?その後でこっちの道は危ないとか、ここは怖い人が居るとか君達が言えるとこだけ教えて欲しい。これで2つ」
「そんな事でいいのかよ」
「いいよ。でも怖い人の居るところ教えたら危ない時は言わなくていい」
「それで幾ら貰えるんだ?」
「ここまでで、君達の願いを2つ叶える」
「そんな事!」
「信じられないか?まあ、アビィには先に仕事1つお願いしたからな。この食い物も一緒に選んで買ったし。ちゃんと金貨も渡したよな?」
「金貨!!」
「これ〜」
「本物?」
「もちろん。だけど人に見られると狙われるだろ?気を付けろ?」
「そうよ!」
「隠しとけよ」
「わかった」
アビィが金貨をしまったところで話を進める。
「で、スラムは複雑で直ぐに仕事終わらないだろ?それに子供4人だけ羽振りが良いと狙われる。そこで、君達が信用できる大人がいたら紹介してくれ。紹介も仕事だから報酬も出す。それから、別の子供の集まりも紹介してくれたらまた報酬を出す。人が増えると力合わせて助け合えるしな。仕事も早く進むし」
「ん〜そんなんで仕事になるのか」
「初めの君達は紹介でも仕事になるけど、後からだともう居るからこれ以上要らないって事もあるし、俺達が自分達で見つけに行くとその分報酬も減るよ?ただな、よく知らない俺達がウロウロあっちこっち歩くのも色々大変なんだよな、変なとこ入って行くかもだし」
「ああ。そう言うことか」
「それから全部終われば願いは4つ。ここにいる君達1人に1つ願いが叶えられるよ」
「何でも良いのか?」
「なににしよう?」
「出来るだけ叶えるけど、試しに何か言ってみな?」
「じゃ、じゃあ自分の家」
「いいよ」
「金貨100枚!」
「いいよ、でも狙われないようにね」
「100回食べ放題」
「いいよ」
「ん〜と、ん〜と」
「毎日寝る前に考えとくと良いよ。それで頼んでも良いのかな?」
「「「「やる!」」」」
夢に悩む純粋な子供達の様子にギュッと抱き締めてあげたい衝動を抑える3人。
「明後日にまた来るからできるだけ準備しておいて。あと、絶対危険な事はしない様に。願いを叶えるんだから元気でいないとね」
食べた物を片付けて、買っておいた残りの木箱や板、大きい布を取り出した。
木箱と板で屋根、壁、床を作り内側に布を貼り隙間風を抑え、30分もしないうちに6畳程の簡易小屋が出来上がった。
残った木箱は端に寄せ置いて行く事にした。
「魔法の袋すげえな、どんだけ出てくるんだ。家できちゃったよ」
「まだあるからな、パンに果物に干し肉。これは紹介する人達と話をする時に分けてやってくれ」
「わかったよ」
「あっあと、寝る時掛ける用の布もあった。‥ほれ」
「わっぷ…ありがとう」
「おお、今日は一旦帰ってまた来るな」
「アビィまたね〜」
「慎重にね。気を付けるのよ」
「またね〜」
見えなくなるまで笑顔で手を振りながら歩き、振り返りをやめたダイアナが呻くように言った。
「分かっていて、理解しているつもりで、実際は心のどこかで遠い所の話だと思っていました。誰かが何かしてあげているだろうと。ここに来てよかったです」
「そっか。なかなか他人に手を差し伸べるってできない事だからな。毎日の生活に追われて余裕の無い人はそこまで気が回らないし、余裕のある人はもっと余裕がないと自分がキツくなると思ってしまう。あるいはもっと余裕のある人がやれば良いと思ったりね。娯楽なんかには贅沢になれるのにね、不思議だけど」
「周りを見れば、優位でありたい優越感を持っていたい人が溢れていますからね。それこそ家族や親兄弟、近くの人や友達と見比べて張り合おうとしていますし、自分でも心当たりはあります」
「私はお祖父様が薦めてくる結婚相手や、自分が考える相手の条件や基準が、張り合う相手を想定しているかと言われてみればその通りだと思ってしまいました。恋愛するための基準が張り合う相手探しって考えるとなんか後ろめたいです」
「はは、そう感じる人はどこかで良くない事だと分かってるんだよ。暗示の様に自分に言い聞かせ、周りに同調してもらい後ろめたさを抑えてるのかもね。世界中に聞かれても良いかって言われて悩む時点で、聞かれて困る相手のいるって事。口に出して言えるだけ正直なんだよ」
そんな雑談をしつつ3人は次の場所へ。




